拓海
優奈
私たちの交際は、静かに終わった。
友達は言った。
「なんでそんなことになったの?」
私はそれに対して、 何も言えなかった。
「なんでだろうね」 振り絞って出した言葉は、 そんな、情けない言葉だった。
もうすぐ受験が迫っていて、 それでなんだか気が焦って すれ違ってるような気がして、 でも、 それを直そうなんてしなかった。
私も 拓海も
だからじゃないかな、って思う。
優奈
夕日に向かって、 1人 そんなことをつぶやいた。
1歩 また 1歩 歩くたびに、 思い出があふれてきた。
初めてのメッセージは 「何してる?」 だったこと。
初めてのデートは 「近所のコンビニ」 だったこと。 そこで私はアイスを買って 拓海は「それ、俺も好きなんだ」って言ったこと。
思い出は歩くごとにあふれてきて、 涙になって流れ出て行った。
神様がここに来て 「出会う前に戻りたい?」 って聞いてきたら、 私はうなずくかもしれない。
だって
こんなに胸が痛くなるのなら いっそ 出会わなければよかった
でも、そんな神様はいないから 私はずっと泣くしかないんだ。
泣いて 泣いて 泣いて もうこれ以上は泣けない って思った時に ふっと 「出会えてよかったんだ」 って急に思った。
胸に傷は残ったけど、 それでもそれはそのうちに愛おしい傷跡に代わる。
だからその日まで 思い出に飲み込まれないように 私は 前を向くしかないんだ。
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