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友達が日記をつけているらしいから、 自分も今日から日記を書くことにした!
何を書けばいいのかわからないけど、
とりあえず毎日のことを記録するのも 悪くないかもしれない。
弥生十五日
咲蓮
思わず口元が緩む。
咲蓮
咲蓮が俺のためにお守りを作ってくれた。
あいつは、手伝いの合間に作っただけ、 って言ってたけど、ちゃんと丁寧に縫って あった。
なくなさいで、と言われたけど、 なくすわけがない。
こういうとき、素直に嬉しいって 言えないのが情けない。
卯月十二日
実はここに書かれているお守りは、 私一人で作ったものではなく、 霞と一緒に作ったものだ。
とても拙い出来だったけど、兄は確かに、 ありがとう、と言ってくれた。
今も持ち歩いてくれているのだろうか。
今日は咲蓮の誕生日だった。
前から霞と用意していた耳飾りを 渡したら、すごく喜んでくれた。
俺が選んだなら何でも大切にする、 ってあんなに嬉しそうにされたら、
こっちが照れる。
ちゃんと似合っていたし、 選んでよかった。
長月二十六日
確か、木彫りのものだった気がする。
なくすのが嫌だったので、 部屋の机の引き出しにずっとしまって あったのだ。
兄が自分のために選んでくれたんだと 思うと、胸が温かくなった。
今日は咲蓮が初めて料理を作ってくれた。
霞から聞いた話だが、 俺に食べてもらいたかったらしい。
正直、味は…まあ、置いておこう。
でも、一生懸命作ってくれたのは わかるし、何より俺のためということが 嬉しかった。
次は一緒につくろうって言ったら、 それなら頑張る!って笑ってた。
如月十二日
咲蓮
どんどん顔が赤くなっていくのが わかった。
あの日の料理は、確かにちょっと 失敗してしまったけれど、
兄は全部食べてくれた。
今日は友達が引っ越していった。
簡単には言いたくないけれど、 やっぱり寂しい。
でも、俺には霞がいるから大丈夫だ。
それに、咲蓮も。
卯月三十日
咲蓮
こんなところで私の名前が出てくるとは 思わなかった。
兄が私を心のどこかで頼りにして いてくれたなんて。
霞から本のしおりを渡された。
霞がくれるものはいつも特別な感じが する。
大事にしてくれたらそれでいい、 って言って笑ってた。
ずっと大切にしようと思う。
皐月二十一日
この日記にはさんであるしおりは、 ひょっとしたら霞の贈り物なのかも しれない。
柄がとても兄に似合っていて、 さすが霞だ、と思った。
霞は兄のことをどのように 見ていたのだろうか。
数十年に一度の流星群を見た。
あんなに空いっぱいに流れる星を 見たのは初めてだった。
咲蓮が手を組んで祈っているように 見えたので、何を願ったのか聞いたら、
三人でずっと笑っていられますように、 って。
そんなの、俺のほうが願いたいくらいだ。
睦月五日
あの日のことを思い出す。
満天の星、草原の匂い、夜の風の涼しさ。
兄と小萩と三人でどこまでも続く 夜空を眺めた思い出。
胸がきゅっとなる。
咲蓮が笑っていると、 それだけで安心する。
あいつはよく笑うけど、ときどき、 無理してるんじゃないかって 思うことがある。
俺は兄として、ちゃんとあいつを 守れているだろうか。
如月二十一日
視界ががじんわりと潤む。
日記を読み進めるにつれ、 兄がどれほど自分を気にかけているのか、
痛いほど伝わってきた。
霞が亡くなった。
突然のことで、頭が追いつかない。
これからは、俺一人で咲蓮を守る。
弥生六日
咲蓮にまで死んでほしくなくて、 とても冷たい態度を取ってしまった。
あいつを守りたくて言ったことなのに、
泣かせるなんて、
兄失格だ。
ぱたんと日記を閉じる。
気がつくと、涙が頬を伝っていた。
あの日以来兄が冷たくなって しまったのも、昨日の言動も、
もしかしたら―
カラカラ…
咲蓮
小萩
咲蓮
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹