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秋の空と紙飛行機

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秋の空と紙飛行機

1 - 秋の空と紙飛行機

♥

730

2020年04月05日

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先生

進路表はもう少しで
締め切りだ

先生

まだ提出してないやつは
早めに持って来いよ

「はーーい」

学校が終わったあと

私はいつもの河川敷に行く。

おっ、澄くん!

笹野さん
おーっす

もう来てたんだ

うん、今日は学校終わるの
早くてねー

彼の名は澄くん。

学校は違うけれど、習っていた 塾が同じで仲良くなった。

私の学校、もう少しで
進路表締め切りなんだ

進路決まってんの?

んー…

とりあえず進学
しとこうかなって感じ

そっちの学校はどう?

進路表
もう出した?

…まだ

そっか

芝生の上にごろんと寝そべって、 空を見上げた。

んー、涼しい

空、綺麗だね

うん

秋の空って

何であんなに
高く見えるんだろう

どこまでも続いてるって
感じで好きだなあ

…俺は、嫌いだな

どんなに手を伸ばしても

絶対に届かない
気がするから

そう言って空に手を伸ばす君の横顔は

どこか寂しそうに見えた。

ふと、視線を彼から下げると

君の鞄に、くしゃくしゃになった紙が入っているのを見つけた。

何、それ?

ん?どれ?

澄くんが私の視線の先を探し、 ああ、という表情になる。

ああ、これか

進路表だよ

えっ、見せて見せて!

いいけど…

がばっと身を起こし、澄くんから受け取った進路表を見た。

えっと…

小説、家?

すご!なりたい物
もう決まってんだ

澄くん文章書くの
上手いし絶対なれるよ!

ありがと

…でも、それは
消すつもり

えっ、どうして?

親に、止められ
ちゃったんだよね

どれだけ俺が本気だって
伝えても

その気持ちは、
届かなかったから

澄くんはそう言って私から視線を 逸らした。

その悔しげな表情は、

空に手を伸ばした時の彼を 思い起こさせた。

それ、貸して

えっ?

澄くんから強引に進路表を貰い

それを、折りたたんでいく。

何やって…

紙飛行機?

出来た!

進路表で作った紙飛行機を持った手を

大きく振りかぶって

行け!

あ、おいっ!

勢いよく、空へと放つ。

飛べ

進め

もっと高く。

紙飛行機は、風に乗って ふわりと進み出す。

でも、だんだんと不安定になり

地面に降下していった。

澄くんは、半ば諦めた表情でそれを 見つめていた。

飛べ!頑張れ!

その瞬間、一際強い風が吹いた。

落ちてしまいそうだった紙飛行機は、また空へと

前に向かって進み出した。

わあっ!

…!

空はどこまでも高かった。

澄くんの夢を乗せた紙飛行機が

青空に舞っていた。

紙飛行機は遠くへ、遠くへと 飛んでいく。

やがて空に消え、見えなくなった。

やった!

空、届いたよ
澄くん

澄くんは目を見開いて、空を 見つめていた。

そして、しばらくしたあと私に 向き直る。

ばかじゃないの

先生に叱られるじゃん

ご、ごめん

澄くんはふっと笑った。

ううん、ありがとう

もう一回、親とちゃんと
話してみるよ

そう言って、また空を見上げた。

その横顔は、決意した、表情だった。

…うん

頑張れ、澄くん

秋の空と紙飛行機

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