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コメント
1件
オチを悩みましたよ。これはね。
ワコの妄想のはずだった。
Kも
監禁部屋も
1777の数字も。
すべて自分が作り上げた妄想の世界だと思っていた。
ケイジを愛したから
必死になって──
彼を信じようとした。
ワコが精神病っ患っていたというケイジの言葉。
幸せの一片が崩れ始めた。
ワコは17階77号室の部屋の前にいた。
真実を確かめるべくルームキーを差し込んだ。
ワコ
さすがスイートルームなだけある。
部屋数が思っていた以上に多い。
ワコ
1777号室が監禁部屋に遣われた痕跡はなさそうだった。
何かをここに隠していたら?
バスルーム!
三つある寝室のそれぞれに、バスルームがあった。
三ヶ所とも探すものの、さすがホテルだ。
隠せるような場所はなかった。
ワコ
ワコ
部屋に設えた戸棚の中に貸金庫があった。
ルームキーを差し込むと
使用中のランプがついた。
ワコ
ワコ
ケイジの1229を押す。
赤ランプ
ワコ
ワコ
まさかと思いつつ自分の生年月日を入れる。
0315
青ランプ
ワコ
怖い
開けたら爆発する……
こわごわ扉を開ける。
中に
紙袋が押し込まれていた。
恐る恐る取り出す。
袋の中身
!
小さな護身用の
拳銃──
ワコ
底から走り書きのメモがでてきた。
「Kを殺せ」
何てこと!
いったい誰が書いたの?
ワコはハンドバックの奥底に銃を隠した。
トイレにメモを流してから
部屋を飛び出した。
確かめなければ!
監禁部屋の存在を確かめなければ!!
ロビーを走り抜け
車廻しからタクシーに飛び乗る。
ワコ
ワコ
今日は日曜日。
解体工事は休みだった。
ワコはタクシーを降りると防音壁をくぐった。
一階から地下室がまだ手つかずな状態。
瓦礫をまたぎ
むき出しの鉄骨をくぐり
地下に下りる。
天井からところどころ青空が見えていた。
ケイジがKだという証拠がなければ、それでいい。
ワコは胸焼けのことも忘れ
廃病院の中を歩き回った。
霊安室らしき部屋に入る。
ベットは……
介護用だった。
瓦礫が床にも散乱している。
ここの天井も落ちていた。
あ・・・
ワコは見覚えのあるシミを見つけた。
監禁部屋で繋がれた時に眺めていたシミ。
ワコ
ワコ
涙が溢れる。
確かに自分はここにいた。
ケイジは
K……
ワコは泣き崩れた。
K(ケイジ)
ワコは顔をあげた。
青ざめた顔のケイジ──
いや
Kが立っていた。
ワコ
ワコ
K(ケイジ)
K(ケイジ)
K(ケイジ)
K(ケイジ)
Κはタキシードのポケットから
革ひもを取り出した。
ワコは後ろに下がる。
瓦礫にヒールが当たり、転んでしまった。
弾みまで、ハンドばっくから銃が飛び出した。
慌てて
拾いあげ
銃口をKに向けた。
ワコ
上ずった声で叫ぶ。
ワコ
しかしKは止まらない。
無防備にも手を広げ近づいてくる。
K(ケイジ)
K(ケイジ)
K(ケイジ)
ワコぉ━━━━!
突如、瓦礫の陰から男が飛び出した。
手にサバイバルナイフを持っている。
男はわめきながら、Κめがけてナイフを突き立てた。
パン
パン
パン
パン
カチ
カチ
カチ
男はケイジともつれるようにしながら倒れた。
ワコ
ワコは倒れたケイジにすがりついた。
ワコ
胸にナイフが刺さっている。
ケイジがうめく。
左腕は血だらけだ。
不思議と胸からまだ血は出ていなかった。
K(ケイジ)
ケイジは荒い息をしながら右手で胸に刺さったナイフを抜き投げ捨てた。
ワコ
ワコ
K(ケイジ)
K(ケイジ)
ワコ
ケイジは右手で蝶ネクタイをはずすと口を使って左腕を縛り上げた。
K(ケイジ)
K(ケイジ)
ワコ
ワコ
倒れた男はヨシオ。
ケイジが看護師だ言った男だ。
太った体から大量の血が流れ出ていた。
K(ケイジ)
K(ケイジ)
K(ケイジ)
K(ケイジ)
K(ケイジ)
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
K(ケイジ)
K(ケイジ)
K(ケイジ)
K(ケイジ)
ワコは泣きながら首を横にふる。
K(ケイジ)
K(ケイジ)
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
K(ケイジ)
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
ワコ
ワコが後にわかったのは
ヨシエはケイジの乳母であり母親がわりだった。
実の息子ヨシオの腫瘍の手術をケイジが行い
ケイジの悪行に目をつぶってきた。
ケイジがワコを愛したのと一緒で
ヨシオもまた、密かにワコに思いを寄せていた。
ヨシオは静止する母親を殴り殺し、ケイジに襲いかかった。
二人の死体は焼却しワコとケイジにより海に散骨された。
10年後
本田家の旧病院跡地に新しく脳神経科の病院が誕生した。
アルツハイマーや加齢による認知症の患者で病院は繁盛した。
ワコは10年間で6人も子を出産し
あの大きな食卓が手狭になるほどだった。
そして
世間にKが現れることは二度となかった。
ワコが死を目の前にして見たもの
それは
子供の未来だ。
母として──
妻として。
正義より
愛を選んだ。
完
読んで下さりありがとうございます。
また、こんな雰囲気の作品を書ければと思います。
武藤 径