TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

wt人外パロ

一覧ページ

「wt人外パロ」のメインビジュアル

wt人外パロ

16 - たった一人で戦い続けた赤

♥

205

2025年07月05日

シェアするシェアする
報告する

第十六話 たった一人で戦い続けた赤

お茶を淹れてくると言って席を立った

Broooockを除いた四人は

案内された部屋で

Broooockを待っていた

きんとき

おいスマイル

スマイル

はい

きんとき

お前俺から逃げただろ

きんときは忘れてはいない

黒ローブの正体はスマイルだったのだ

スマイル

なんか追っかけてきたから

きんとき

ほーう

きんとき

追われたら逃げるのかお前は

スマイル

逃げるだろ

きりやん

まぁ落ち着けよ

きりやん

まずはどうしてそんな事をしたのか聞こうぜ

きりやん

話してくれるよなぁスマイル

スマイルは小さく頷いた

Broooockは浄化対象ではなかった

もうスマイルも隠す必要がないのだろう

スマイル

きりやんをBroooockから遠ざけたかったから

きりやん

Broooockとお前の関係は?

きりやん

なんでそんなにBroooockにこだわるんだよ?

スマイル

Broooockはこの世界に存在する唯一の生物魔族だ

きりやん

ほう

笑みを浮かべるきりやんとは裏腹に

シャークんときんときは首を傾げた

きりやん

それは興味深い話だな

きんとき

何?その生物魔族って

きんとき

スマイルとは違うの?

スマイル

俺は無生物魔族

スマイル

簡単に言えば生き物じゃない

スマイル

Broooockは生物魔族で、生き物

シャークん

よくわからん

シャークん

生き物じゃないって、生きてるじゃん

きりやん

生き物は食って寝て生きるでしょ?

きりやん

スマイルはそれをする必要がない魔族で

きりやん

Broooockはそれをする必要がある魔族ってこと

きりやん

魔族はみんなスマイルと同じで無生物なんだけど……

きりやん

Broooockは違うのか

きりやん

そうか、それで悪魔の気がするのか、あいつは

シャークん

スマイルって食べる必要なかったの!?

スマイル

一応器を維持するためには必要と言えば必要だけど

スマイル

別に食べなくても俺は消滅しない

シャークん

えぇ~……俺何のために毎日……

シャークんは目に見えて驚いて

小さく俯いて落ち込んだ様子を見せた

スマイルと出会ってからシャークんは

なんとか家に置いてもらうために

慣れない料理をして

スマイルの役に立とうと

四苦八苦したものだ

それがいつからか習慣になって

ずっと料理担当を務めていたのだが

それは家主にとって

意味のないものだったとは知らなかった

スマイル

いや無意味ではないから

スマイル

器の維持には必要だって

シャークん

それはそうだけど別になくても平気だったんだろ……

スマイル

あぁ……いやまぁ……

きりやん

……慰め方へたくそか?

きりやん

シャークん、スマイルはその心遣いが嬉しかったって言いたいんだよ

きりやん

スマイルも食事は必要ないとか言わなかったんでしょ?

きりやん

そんなに落ち込む必要ないって

シャークんは俯き加減のまま

ちらっとスマイルの様子を窺う

スマイルはその視線に気付いて

居心地が悪そうに視線を逸らした

スマイル

別に……好きに解釈していいよ

シャークん

はぁ……まぁ料理スキルアップしてたと思えばいいか~

きんとき

それで?無生物だか生物だかがなんなの?

きりやん

まぁスマイルはこの世界で唯一の生物魔族という種を保存したかったんだろ

きりやん

だから浄化されるわけにはいかなかったと

スマイル

そういうこと

きりやん

……Broooockは俺らが疑問に思ってること全部知ってるって言ってたよね

きりやん

スマイルはそれも知ってたの?

スマイル

いや、知らない

スマイル

俺の知る限りBroooockはお前らと知り合ったことはないはずだ

スマイル

俺がお前らのことを知らなかったようにな

ちりんと音が鳴った

四人が音の鳴った方を見ると

扉の前に黒猫が座っていた

きりやん

……Broooockは俺らが疑問に思ってること全部知ってるって言ってたよね

きりやん

スマイルはそれも知ってたの?

スマイル

いや、知らない

スマイル

俺の知る限りBroooockはお前らと知り合ったことはないはずだ

スマイル

俺がお前らのことを知らなかったようにな

そこから扉をすり抜けるように

Broooockが現れた

その両手には盆を持っていて

ティーセットが並べられていた

Broooock

お待たせ~

Broooock

僕さぁ、やりたい事いっぱいあったんだけどまず初めにお茶の淹れ方を勉強したんだよ

Broooock

みんなが集まった時に僕が淹れてあげられるようにねぇ

Broooock

ねぇ見て見て、うまいでしょ?

Broooockは機嫌よく皆の前に

ティーカップを並べて

どんどんティーポットからカップへ

お茶を注いでいく

そこから紅茶の良い香りが

部屋を漂い始める

きりやんは感心した

きりやん

良い匂い

Broooock

でしょ~!?

Broooock

……あ、やばっ――

Broooockは慌てて ティーポットをテーブルに置くと

その場に蹲ってしまった

その様子に スマイルが慌てて立ち上がって

Broooockの元に駆け寄った

スマイル

どうした?

スマイル

まさかまた――

Broooock

ちがっ、違う違う!

Broooock

違うから心配いらない!

Broooock

心配無用!

Broooock

ほんとに大丈夫、大丈夫大丈夫……

きりやんがちらっと

蹲ったBroooockの様子を窺うと

彼は両目からぽろぽろと

涙を零していた

きりやんはぎょっとした

きりやん

おいどうした?

きりやん

なんで泣いてるんだよ

Broooock

……ちがうんだよぉ~……うぅぅ……

Broooock

こんなはずじゃなかったのに……

四人がテーブルについて

Broooockの淹れるお茶を待っている

それを目の当たりにした瞬間――

もうだめだった

――うれしくてうれしくてたまらない

ずっとずっと夢だった

みんなにこうして自分が

何かをしてあげる事が

まだ泣くには早いと言うのに

もう涙が溢れて止まらない

Broooockはずっと一人で戦っていた

虚弱な身体で生まれ

みんなに助けられて生きてきた

それでもこの身体は

みんなを困らせるほどに弱過ぎた

その身体を治すために

永遠とも言える時間を眠り続けた

深い暗闇の中で

Broooockはずっと孤独だった

そんな眠っている中でも

身体は永遠に傷み続けた

――痛い

しんでしまいたい

Broooock

(……やだ)

しにたくない――

またみんなと会いたい

みんなと、遊びたい

眠りにつく前――

みんなが会いに来てくれた

Broooockを支える大切な思い出だ

Broooock

(僕はずっとここでひとりぼっちだけど――)

Broooock

(みんなの記憶があるから)

Broooock

(だから、耐えられるよ)

Broooock

(僕は絶対に負けない――)

起きて会えたらなんて言おう――?

おはよう

ただいま

おまたせ

ごめんね

ありがとう

たくさんたくさん言いたい言葉がある

たくさんたくさん話したい事がある

待っていて、必ず――

必ず僕が、みんなを集めてみせるから

Broooock

……はぁ!湿っぽいの終了!!

Broooockは勢いよく立ち上がり

ぱっと笑った

きりやん

いや一人で湿っぽくなってただけなんだけど

Broooock

さぁさぁ冷める前にどうぞ召し上がれ

Broooock

みんなおなかすいてない?

Broooock

クッキーもねぇ、あるよ

そう言いながらBroooockは

ぽんぽんと空中からお皿を召喚して

その上にクッキーも召喚して

テーブルに並べる

Broooock

これも僕のお手製

Broooock

どう?ねぇ、すごいでしょ!
スマイル!

スマイル

すげぇ

スマイル

いつの間に練習したの?

Broooock

僕起きてから五年は経ってるんですけど~!

スマイル

マジか

スマイル

さすがに気付くの遅すぎだな

ぽかんとしているシャークんときんときに 気付いたBroooockは

二人に微笑みかけた

Broooock

遠慮せずどうぞ

きんとき

……いや俺ら魔法あんま慣れてないんだよ

シャークん

すげぇぽんぽん出してくるじゃん

シャークん

びっくりしたわ

Broooock

あぁ!

Broooock

僕が眠りについた後の話ね~

Broooock

スマイルからちょっと聞いたけど

Broooock

さすがにスマイルやりすぎだよね~って言っておいたから安心して

きんとき

何をどう安心すればいいんだよ

Broooock

良いツッコミ!
好き

きんとき

あ、あぁ……どうも

きりやん

いただきます

きりやん

ん、うまい

シャークんときんときもきりやんに続いて

クッキーに手を出し始める

その光景を眺めていたBroooockは

感極まる想いだった

Broooock

ああああ~胸がはちきれそう

きりやん

え? 何、大丈夫?

Broooock

大丈夫

Broooock

嬉しいだけ

きりやん

あ、うれしいんだ……

対してスマイルの他三人は

Broooockとの距離感が掴めずにいた

好意的なのはものすごく理解できるが

なぜなのかが理解できない

きりやん

とみんなが思っているであろうと思うので――?

きりやん

ん?なんかおかしいか?まぁいいや

きりやん

君は僕らの何を知ってるんだい、Broooock君

Broooock

出会いから別れまでだねぇ

Broooock

でもそれを話すにはまだ一人足りないんだよ

きんとき

えっと、なかむ?

Broooock

そう!

Broooock

よく知ってるね!?

Broooock

もしかしてもう知り合い!?

Broooock

いや、二人は仲良かったもんね

Broooock

知ってて当然か~!

きんときの答えにBroooockが

矢継ぎ早に応えていく

きんとき

いやいや……w

きんとき

知らない知らない

きんとき

仲良かったとか言われても俺もよく知らないんだって

Broooock

え、なんで?

Broooock

記憶を失ったのは僕と出会ってから別れるまででしょ?

Broooock

僕と出会う前から二人は友達だったんだから、知ってるはず――

きりやん

ストップストップ!

きりやん

情報量がまだちょーっと多すぎるかな!?

きりやん

とにかく、そのナカムって奴を探さなきゃいけないって事でOK?

Broooock

OKOK

Broooock

そこできりやんにお願いがあるんだけどぉ……

きりやん

はい、なんですか

Broooock

…………そうだなぁ、うん

Broooock

これは大事

Broooock

君にだけ記憶を返す

しんと部屋の中が静まり返る

きりやんは一つクッキーを手に取ると

口に含んでサクッと嚙み締めた

きりやん

――その記憶って言うのは一体何の事?

Broooock

もちろん、僕ら六人に関する記憶だよ

Broooock

もう気付いてるんでしょ?

Broooock

自分たちが何かを忘れていることに

きりやん

何故それを君が管理しているのかな?

Broooock

僕も確かに当事者だけど

Broooock

君たちとは立場が違った

Broooock

だから僕は審判にかけられてないし

Broooock

当然罰も受けない

きりやん

――!

Broooock

神の審判で賭けられた罰は

Broooock

この記憶を放棄すること

Broooock

審判にかけられてない僕が持っていても何の問題もない

Broooock

僕はみんなに記憶を戻すためにここに存在する

Broooockは嘲笑った

Broooock

神よ――

Broooock

僕らは見事、あなたを欺いた

きりやん

……なるほど

きりやん

俺だけに記憶を戻す理由は

きりやん

神自身である俺がその罰を破っても神罰の対象にならないからか

Broooock

That's right!

Broooock

記憶を戻した上で君に確かめたい――

Broooock

みんなに記憶を戻しても

Broooock

本当にみんなに神罰は下らないかどうか

きりやん

よぉく考えたもんだねぇ?

きりやん

……あぁそうか

きりやん

だから――

きりやん

きんときに神罰が下ったのか

Broooockは目を見開いて

きんときを凝視した

きんときはじっときりやんを見据えていた

きんとき

記憶を放棄する事が罰――か

Broooock

え……

きんとき

――俺、多分あの時思い出しちゃったんだな

きりやん

だろうなぁ

きりやん

だから俺もあの時なんで神罰が発動したのかよくわかんなかったんだ

きりやん

記憶がなかったから

Broooock

え……え?

Broooock

きんとき、神罰受けたの……?

Broooockの質問にきんときは小さく頷いた

きんとき

だから俺には……その、仲良かった奴との記憶もないんだよ

きんとき

一度、死んだから――

Broooock

――――ッ!!

その言葉を聞いたBroooockは

胸が引き裂かれるような想いだった

ずきんずきんと胸が痛む

呼吸が止まりそうになる

Broooock

(――きんときが、一度死んだ?)

Broooock

(記憶を取り戻して?)

Broooock

(それは言い換えれば、僕の、せいで――)

ぎりっと歯を食いしばる

怒りの感情が込み上げてくる

きんときが今精霊であると いう事はわかっていた

人間の身から約束を守るために

精霊へと昇華したのだと

勝手に思い込んでいた

Broooock

(全然違う!!)

Broooock

(きんときは一度死んで精霊になったんだ――!!)

――何を呑気に再び出会えた事を 喜んでいたのだろう

Broooockは自分が無邪気に喜んで泣いたり

お茶やクッキーを用意していた事が

滑稽に見えて恥ずかしくなった

そもそも自分が眠り続けている中――

再会を夢見て待っていてくれている事に

本当はもっと感謝しなければならなかった

Broooockは待つという苦労を 嫌という程知っている

ベッドの中で一歩も動けなかった彼は

毎日待つ日々だった

胃がまともに動いてくれないから

流動食を流し込んで 必要最低限の栄養を補い

それでも足りなければ

治癒の魔法使いから治療を受けながら

生き永らえていた

Broooock

(誰か――会いに来てくれないかな)

誰かに何かを求めてる毎日

与えられてばかりで 無意味な生活

Broooock

(僕――何のために生きてるの?)

Broooockは誰かに愛されている訳ではない

秘匿にされているこの世界で

唯一の生物魔族だから

大切に保存されているだけだ

自分の様子を見に来る 魔法使いでもなんでも良かった

話をしてくれるなら

新しいものを聞かせてくれるなら

ただの暇つぶしになるのなら、なんでも

皆がBroooockを特別扱いする中

同じ魔族――スマイルだけは違った

Broooockの発見から現在まで

スマイルは手厚くBroooockを保護している

それも研究対象や絶滅危惧種に対する

腫れ物扱いのようなものではない

彼はBroooockを

一人の生命体として接してくれていた

普通ではないBroooockに

普通を教えてくれたのはスマイルだ

スマイルは長生きしている分

知識が豊富で話をするのも楽しかった

感情がない魔族のくせに

人間のように相手への配慮や

気遣いを知っている

長年人間の傍で学んできた 対人間のための話術なのだろう

みんな好きだけど

やっぱりその生活はつまらなかった

手で遊べるおもちゃを渡され

幼児のように扱われる

誰かが来てくれる事を待つ日々――

Broooock

(僕はバカだ)

Broooock

(みんなはあの苦しみを五百年も耐え抜いてくれたのに)

ぎゅっと胸を握りしめて

Broooockは苦しそうにきんときを見つめた

Broooock

――ごめん

Broooock

僕は……僕の……

何か言いづらそうに

Broooockは言葉を詰まらせる

きんときはそんなBroooockを見て

いたたまれない気持ちになった

きんとき

謝られても困るって

きんとき

俺なんにも覚えてないんだから

Broooock

……うん、そうだよね

Broooock

もう少しだけ待っててほしい……

Broooock

僕も早く全部話したいんだ、みんなに

きんとき

うん。頼むよ

きんとき

待ってる

Broooockはきんときの言葉を噛み締める

そしてじっとこちらを見つめている

きりやんに視線を移した

きりやん

さぁ、返してもらおうか――?

Broooock

……うん

差し出されたきりやんの右手に

Broooockは自分の右手を重ねて

二人は目を閉じた

Broooockは自分の中に埋め込まれた

黄の記憶を取り出して

それをきりやんに委ねた

この作品はいかがでしたか?

205

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚