『ンンンンンンンン…』
白
真後ろの方から…すごく低い音が響いてきた。
けど、その音は凄まじく嫌な気配を感じるものだった…
白
私はとにかく走った…入り組む部屋をただひたすら、音が聞こえた方とは反対の方へ向かって…
ただひたすら、音の正体から逃げるように…
白
そこは他の部屋と違って、真ん中に一本、円の柱があって思わずその目の前で立ち止まる…
白
柱を手でなぞっていく。
すると…
『ポコポコ…』
白
なんだか、さっきとは雰囲気が違っているものの不思議な音を出しながら、柱の表面がシャボンの膜みたいに形を変えて凸凹していく
ポコ⤴ポコ⤵ポコ⤴ポコ⤵
白
さっきの低い音に比べたら怖くは無い…
怖くは無いけどよく分からないことになってるせいで別の意味でこわい!!!汗
そして次の瞬間!
パアン❗🎉
???
私は『THIS MAN!!』
親しい君の友人さぁ☆!!!
白
一目散にその場から逃げ出す!
突然柱が破裂して!?
中からおでこの広いおじさんが出てきて!?
なんかお笑い芸人みたいなノリで話しかけてきた!?
眉毛太い!!!なんか胡散臭い!!!とにかくよくわかんなくて怖い!!!!
色々もう限界!!!
白
???
私は別に怪しいものじゃないぞぉぉ!!??
白
太眉のおじさんが追いかけてきたぁぁぁ!!!!
ヤダもう捕まったら何されるのぉ!!!??
白
???
君!この夢の中から出られなくて困ってるんだろぉ!!協力する!!!私出口しってるぞぉぉ!!!?
白
急ブレーキをかけて、太眉おじさんの方を見ると大きく息を吐いて、軽く目を瞑って3m位のところで両手を前に垂らした姿で立ち止まった
太眉おじさん
いやぁ〜ハッハッ、驚かせてしまったみたいで申し訳なかった。
お国柄、こういう時フランクに行くと安心してくれる場合が多くてね!
君には逆効果になってしまったから反省事項だね。
白
太眉おじさん
そして、先程も伝えたように!
私は出口を知っている!
証明する手段は無いが〜
少なくとも君が不利益を被らなくて済むくらいにはサポートできる!
白
太眉おじさん
君自身も、こんな不気味な所に居るの辛いもの有るだろう?
どうかね!ココは一つ騙されたと思って!
目の前の怪しい男の言葉信じて貰えないだろうか!?
『頼む!この通ーり!!』
背筋を伸ばしてからの、綺麗なお辞儀と…
下げてる頭の上に両手を置いてめっちゃスリスリしてくる…
怪しいし、癖強いけど…悪い人じゃないのかも…?
白
太眉おじさん
太眉おじさんが、胸を叩いて自信満々の顔で言ってくる。
そこはちょっと心強く見えた…
ンンンンンンンン…
白
またさっきの音…!
白
太眉おじさん
ついてきたまえ!
可能な限り最短ルートで出口まで行こう!
そうして両手を後ろで組んだおじさんが 私から見て左の出入口に向かって歩いてく。 よく見るとスーツ姿だった。
革靴を鳴らして部屋のにある通路に進んだ。
私も、おじさんの後ろを急いで着いてく。
進めば進むほど変な空間を、ただ前にいるおじさんについて行った。
その間も、後ろの方から気味の悪い声みたいなものが聞こえて来る。
白
太眉おじさん
最も、音の主も…出くわさないに越したことはないようなやつだ
白
太眉おじさん
生き物と機械を足して2で割った様な存在と言えばいいのかな?古い家電製品に怪物みたいな脚が生えてる様な姿…
どこかの誰かが1度は考えたことある恐ろしい化け物の姿をしてるそういうよく分からない存在だ。
白
太眉おじさん
近づいて挨拶がてら握手しようなんてチャレンジ精神は湧かなかった。
言葉の通じる相手には見えなかったし。
そもそも、あれ1体だけかどうかも分からない。
ただ、見つかった時はもっとすごい音立てて追いかけてくる。
だから今のところはまだ大丈夫だよ!
白
太眉おじさん
余計恐怖を煽ってしまったね…すまないGirl…
そうだ、まだ自己紹介していなかったね。
私はTHISMAN!
というのはさっきもやったか…
そちらは?
白
太眉おじさん
ご両親から、素敵な名前を授かったね。
大切にしたまえよ?
白
太眉おじさん
そういう丁寧な所作は第一印象で好感がもたれる。
それは成人してから多くの人間に可愛がってもらえる要因にもなる。
どちらも大切にする事だ!
おっと、説教臭くなってしまったかな?
白
褒めてくれてとても嬉しいです!
ありがとうございます太眉おじさん!
太眉おじさん
太眉おじさんと来たか…
…いや?それniceかもしれない…!
This manなんて呼称よりよっぽど掴みがいい気がする…!
よし、今度誰かと会ったらその呼称使わせてもらおう!そうしよう!
白
仕草は少し大袈裟だけど、悪い人じゃないのかも?
太眉おじさん
それで気がついたら外国って状況不便だろう?
だから少しだけ、体感的に10分程歩いてもらいたい。疲れてるところ申し訳ないがね
白
あのここ
太眉おじさん
そう聞こうとしたね?
白
太眉おじさん
おじさんが、人差し指を立てておでこをポンポンと叩く独特の仕草をしている。
『💡』
と、閃いたのがわかる位に指を上に挙げた。
太眉おじさん
白
太眉おじさん
白
名前は知ってますけど…
太眉おじさん
そう、唐突に人が燃えてしまう人体発火や忽然と姿を消す現象…
本来なら物理的にありえない事が発生する事をオカルティズムという言い方をする訳だが。
あれらは総じて、地球という空間が時折起こしてしまう不具合、バグによって発生する事がある。
ここはそういったバグ情報に対するゴミ箱みたいな空間という事だ
白
あの!私!
太眉おじさん
さっきからめちゃくちゃ考え読まれてる…!?
太眉おじさん
本来であれば普通の人間がbackroomに迷い込むというのはそうそう起こらない
白
それって確か、ネットとかで有名な異次元空間の事ですよね?
太眉おじさん
なら話が早い。
ここは、backroomのFloor0。
異次元と現実の狭間にある空間だよ
白
太眉おじさん
ここはそれだけ異常な領域なのさ…
白
太眉おじさん
よく頑張ったね…もう大丈夫だよ!
白
思わず泣きそうになった、けど何とか涙止められた!
太眉おじさん
白
太眉おじさん
白
おじさんに言われた通り、次の部屋に入ってから
両手を交互に上げ下げした
太眉おじさん
真ん中の柱を時計回りで3周してくれ
・・・
太眉おじさん
・・・
太眉おじさん
・・・
10分くらいそんなやり取りをすると、ここに来て初めての扉が出てくる。
白
太眉おじさん
どうやら無事出口へたどりつけたみたいだ。
あとはその扉をくぐるんだ。
生憎、この扉は君専用なので私は中に入れない。ただ、目が覚めた時には見慣れた家の中にいるよ。
白
太眉おじさん
そうだ、最後に一つだけ聞いてくれ。
白
太眉おじさん
君には素敵な素養が沢山ある。
大人になっても、それを忘れないでくれたまえ…
それは、年寄りの出ばったお願いだ。
白
太眉おじさん
もしかしたら、backroom以外の夢の中でも会うかもしれない。
その時は、今よりもっと美しくなった君と再会…そんな事もあるかもしれない。
そうなった時は、親しき君の隣人たるこのTHIS MANの、話し相手になってくれれば幸いだ。
白
不思議な人だった。
変な空間だけど、それでもこんな風に話せたのはちょっと良かったと思ってる。
コクリと頷いて、扉に手をかけた。
太眉おじさん
無事生還するところ、ここで見守らせて頂くよ?
白
そうして、扉を開けて中に入る。
瑠香
バクマル
白
気がつくとそこは、マンションのリビング…
ソファの上で横になってたみたい。
白
瑠香
ほんと焦った…
10分揺すっても起きなかったし…
白
瑠香
途中うなされてたから、まさか悪夢見になっちまったか…て本気で心配になった。
白
確かに怖い夢だったけど…それでも太眉おじさんのおかげで、悪夢とは違ってた。
白
瑠香
バクマル
瑠香さんとバクマルちゃんが一安心という顔でソファーにもたれかかった。
そうして、ソファーに座り直して天井を見上げたあと…
白
瑠香
白
瑠香
白
私のピンチを助けてくれたおじさんの事…瑠香さんとバクマルちゃんになら話してもいいかなと思った。
白
瑠香
同時刻…とあるビジネスホテルにて。
『僕さまの完全無欠ムーニー帝国に反旗翻すなんて生意気でち!
今日こそ、国家権力の犬共に屈して、オトモダチと地獄のお砂場でオママゴトに興じるがいいでちモニカたん!!』
『地獄のお砂場でオママゴトするのはテメェだベービーフェイス閣下…!!
俺様の必殺技でテメェの魂泥棒してやらァ!!』
竹中
部屋に備え付けられていたテレビの前で竹中が手に汗握りながら大騒ぎしていた。
井嶋
おま、そのアニメまた見てるのか…?
ラフな部屋着を着た井嶋がシャワー室から出てくる。
竹中
良いですよねモニカたん!
井嶋
竹中
先輩〜それちょっと考え方硬いですよォ?
『いくぜ!!必殺…デスフォールドドライバァァァァ!』
『ぐぁぁぁぁ!!!!』
竹中
ね凄いでしょう!!
井嶋
バァン!!
『うっせぇ!何時だと思ってんだ💢!』
それは隣の部屋の壁越しから聞こえた。
井嶋
竹中
隣りの宿泊客の怒声によって2人が萎縮する…
井嶋
竹中
竹中が、バツの悪そうな顔でテレビを消す。
その様子を見た井嶋が呆れた顔をしながら、テーブルに置いてある酒瓶のキャップを空け、グラスに注いでいく。
井嶋
満たされた杯を持ち上げて揺らし、透明のソレを上機嫌そうな笑みを浮かべながら香りや景観を楽しみ…グラスをゆっくりと口元で傾ける。
井嶋
うん…
目を瞑りながら、口の中に広がっている味わいを楽しみ、笑みが零れていた…
その様子に竹中もごくりと唾を飲み込み…
竹中
井嶋
竹中
井嶋
竹中
井嶋
ダメだ。さっきもいったが俺ァ一日のしめぇに
最低でも一杯はコイツを腹に収めなきゃ寝れん。
1滴でも飲まれるなんざ冗談じゃあねぇってもんだ
竹中
見せつけられているような気分になりつつも、井嶋が晩酌に煽る吟醸のラベルを覗いた。
竹中
井嶋
口に含んだ時の香りと言い…果物を想わせる甘酸っぱさといい…
どうやら俺の味覚は曾祖父さん譲りらしい。
竹中
それなんですど。
ウチも父方の実家、千葉県だったんです。
井嶋
『警備室』なんざほんと所属すくねぇ部署にもかかわらず、互いに先祖が千葉のしかも同じ町出身って聞いた時はさすがに腹抱えて笑ったもんだ
竹中
昔、こんなやり取りしてたかもですか?
井嶋
有り得るっちゃ有り得るぞ?
竹中
井嶋さん…
井嶋
人間なんて所詮そんなもんだろ…
竹中?
何やら、潮の香りが漂うような錯覚を…
この時の井嶋と竹中は感じていた。
竹中
井嶋