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大事屋

第6話 - 想いと記憶　後編

2025年09月19日

#ホラー

#ミステリー

#怪談

#噂

#記憶喪失

自由少女

誰もいない静かな廊下

月明かりしか届かない教室

大きく伸び続ける影

それが、夜の学校

監視

おーい、誰かいねぇのか？

いたら怖いよ

監視

いや、そうじゃなくてな

監視

えーっと

なに確認してるの？

監視

ここに住んでる怪異の名簿だよ

名簿？

監視

ここの大家はトイレの花子さんだな

監視

よし、女子トイレ行くか

うん…

…………

女子トイレ！？

監視

あ？なんだよ

いや、だって僕、男…

監視

そんなん気にしてんのかよ

監視

ほら、さっさと行くぞ

ま、まって！

監視

よし、呼び出してくれ

え…僕がやるの？

監視

この羽じゃノック出来ねぇよ

クチバシでつつけばいいじゃん

監視

前それで怒られたんだよ

監視

ドアが傷つくって

う…

わ、わかった

コン、コン、コン

は、花子さん花子さん

いらっしゃいますか

トイレの花子さん

はーい

あ…こ、こんばんわ

トイレの花子さん

………

トイレの花子さん

……き

き？

トイレの花子さん

きゃぁぁぁぁぁぁぁ！！？

トイレの花子さん

なんで！？

トイレの花子さん

なんで男の子が女子トイレにいるの！？

トイレの花子さん

はやく出てって！

トイレの花子さん

キモい！変態！！

お、落ち着い…

トイレの花子さん

いや！来ないで！！

監視

落ち着け花子！

トイレの花子さん

ひっ…

トイレの花子さん

え、監視さん……？

トイレの花子さん

酷いこと言ってごめんなさい……

トイレの花子さん

獄卒以外のお客さん、初めてだったから…

いや…こっちこそ急にごめんね

トイレの花子さん

あの…ご用件はなんでしょうか

女性を探してるんだ

制服を着た、ショートヘアの髪型なんだけど

トイレの花子さん

あの…その女性って、足ありますか？

いいや…

トイレの花子さん

その子なら知ってます！

本当？

どこにいるかわかる？

トイレの花子さん

それが…

トイレの花子さん

一昨日から見てないの

トイレの花子さん

学校中探したけど、どこにもいなくて

監視

変なヤツとかいなかったか？

トイレの花子さん

……そういえば

トイレの花子さん

彼女が消える前、一緒変な感じがしたんです

変な感じ？

トイレの花子さん

なにか…物凄く強い想いが

トイレの花子さん

私たちより強い怨みが

トイレの花子さん

一瞬表れて、消えたんです

監視

怨霊か？

トイレの花子さん

多分、そうだと思います

監視

今も感じるか？

トイレの花子さん

いいえ…

最後にその気配がしたのはどこ？

トイレの花子さん

放課後の校舎だよ

そこって…

大輝くんがいなくなった場所と同じだ

監視

行ってみよう

うん

監視

っても、なにもないな

監視

どうするよ？

なにかあるはずだ

監視

へえへぇ

フフ

なにか聞こえた？

監視

いや？

アハハハハ

アハハハハハッ！

監視！あそこ！

屋上を見上げると、そこには下半身のない女性がいた

テケテケ？

アハハハハハッ！

テケテケ？

アハハハハハハハッ！

「テケテケ」は屋上から飛び降り、力強く首を締め付ける

ガハッ！

テケテケ？

覚エテルカ？

テケテケ？

私ヲ

お前っ…なんか、知らない

はやく…彼女から、出ていけ……！！

テケテケ？

…………………

テケテケ？

ハハッ

テケテケ？

アハハハハハッ！！！

突然「テケテケ」は笑い始め

同時に苦しみ始めた

テケテケ？

グアアアァァァァァ！！

テケテケ？

アアアアアアアアッ！！

怨霊は苦しみながら「テケテケ」の中から出ていった

監視！追ってくれ！

監視

わあってるよ！

テケテケ

ん……

気がつきましたか？

テケテケ

あなた…

テケテケ

怖い思いさせてごめんなさい

テケテケ

怪我はない？

(この声、この言葉…)

(前にどこかで…)

あの…

テケテケ

どうしたの？

……あっ！

お姉ちゃん！

　お姉ちゃん

どうしたの？

僕、もうすぐ6年生だよ！

　お姉ちゃん

そっか、もうお兄さんだね

うん！

お姉ちゃんはもう大人？

　お姉ちゃん

うーん、大人は20歳からだから

　お姉ちゃん

あと2年かな

大学ってどんなところ？

　お姉ちゃん

いろんなところから人が集まって

　お姉ちゃん

好きなものを学べる場所だよ

楽しそう！

僕もはやく、大学行きたいなぁ

僕には、年の離れた姉がいた

学校帰りで、お姉ちゃんと踏み切りを渡ろうとした時

　お姉ちゃん

危ないっ！

えっ

遮断機が起動せず、電車が来ていることに気づかないまま踏み切りに入った

姉の声が耳に届いた頃には、電車が僕の視界に隙間なく映っていた

今まで聞いたことないような激しい音が辺りに響いた

気がつくと、僕は踏み切りから離れたところに座り込んで

姉は僕を抱き締めていた

姉の体を見ると

胴体が切り離されていた

ごめっ…

ごめんなさいっ…

僕っ、あの時なにも出来なくて！

見てることしか出来なくてっ…！

あの時僕がっ…！

テケテケ

大丈夫。恨んでない、憎んでない

テケテケ

あなたに怪我がなくて良かった

テケテケ

こんなに大きくなって…

テケテケ

お姉ちゃんより年上になっちゃったね

テケテケ

…思い出してくれて、ありがとう

お姉ちゃん！！！

………

(僕は…)

(こんな大事な記憶を、あといくつ忘れているんだろう)

テケテケ

もう平気？

あ…ごめん

テケテケ

相変わらず、泣き虫ね

う、うるさい…！

監視

………

監視

あのー

あ、そうだった

僕たち、大輝くんっていう男の子を探してるんだけど

テケテケ

もしかして…あの子かな？

テケテケ

こっちだよ

あ！

大輝

ｽｩ……ｽｩ…

よかった…傷もなにもない

テケテケ

ごめんね、危ない目にこの子を巻き込んでしまって

なにがあったの？

テケテケ

私に取り憑いていた怨霊が、この子を狙っていたの

テケテケ

なんとか抑えようとしたんだけど

テケテケ

自分が取り憑かれるなんて、情けないわね

そんなことない

守ってくれてありがとう

テケテケ

ねぇ、名前はどうしたの？

閻魔大王が持ってるんだ

テケテケ

ええっ！？

僕、記憶失くしてて

これ以上忘れないように、名前を預かってもらってる

テケテケ

そうだったの…

僕ね、記憶を取り戻すために大事屋ってお店開いて

今日やっと、お姉ちゃんのこと思い出せたんだ

テケテケ

そう…

テケテケ

ねぇ、記憶を取り戻すことが怖くなったりしてない？

いや…ないけど

テケテケ

これからきっと、そう思う時がくるわ

テケテケ

負けないで

僕は負けないよ

なにがあっても、必ず記憶を取り戻す

監視

………

監視

あのー

そうだ、もう行かないと

じゃあね、お姉ちゃん

テケテケ

ええ。気をつけて

環樺

本当に、本当にありがとうございました！

海信

大輝！お前どこいたんだよ

大輝

ごめんって！

すみれ

どこも怪我してない？

大輝

うん。大丈夫だよ

大輝

大事屋さん。ありがとうございました

いい友達だね

これからも仲良くね

大輝

はい！

ふぅ…

(ひとりかくれんぼをやる時使わなかったぬいぐるみ)

(あれは、お姉ちゃんの形見だったんだな)

監視

おい

監視

俺を忘れてねぇか？

……あ

監視

ったくよ

監視

こっちは必死だったってのに

ごめん…

監視

ま、いいさ

監視

俺も取り逃がしちまったし

なにかわかった？

監視

すばしっこすぎて、ちゃんとは見れなかったが

監視

ありゃガキだな

子供の怨霊？

監視

そうだ

監視

それに、お前の姉貴から出てった時

監視

怨めしそうにお前を睨んでたが

監視

なにか心当たりはないのか？

……

わからない

僕を怨んでるのかな

監視

そうじゃねぇと、あんな顔しねぇだろ

監視

殺しでもしたのか？

僕が……？

監視

記憶を取り戻さない限り、その可能性も考えていいかもな

監視

さて

監視

この依頼は、お前にとっての貴重な情報が沢山あった

監視

お前には姉貴がいて、誰かに怨まれていた

……………

監視

怖じ気づいたか？

いや…

余計に使命感が出てきたよ

僕の記憶は、絶対に思い出さなきゃいけないんだ

僕だけじゃなく

大勢の人が関わってるかもしれない

僕は…なにがあっても逃げないぞ

数カ月後

監視

ほら、はやく帰ろうぜ

監視

客が来てるかもしれねぇ

そんなに急がなくても

監視

お前が買い物行くって言い出すからだろ？

だって、買わないと生ゴミ漁るじゃん

いくらカラスだからって、体に悪いよ

監視

はいはい

プルルルルルル

ん？

監視

お前の電話か？

違う。僕のじゃない

プルルルルルル

監視

あ、なんだ

監視

公衆電話が鳴ってるだけだ

そっか

監視

………

監視

…………

ねぇ、監視

公衆電話って、電話をかける道具だよね？

監視

…ああ

公衆電話に電話がかかってくることってある？

監視

普通はねぇが……

プルルルルルル

ガチャ

もしもし…？

さとるくん

大事屋…さん

さとるくん！？

さとるくん

僕の…友達を

さとるくん

メリーさんを…助けて

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