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『夢で見たあの子』
雪山で私は笑っていた。白い息を吐きながら、隣にいる女の子と雪を投げ合って、転んで、手を引かれて----
それが夢だと気づいたのは、夢が覚めてからだった。
翌日。
私は公園のベンチに座り、スケッチブックに鉛筆を走らせていた。描いているのは、昨夜の夢の雪山。
朝霧凪
白雪澪
振り向いた瞬間、心臓が大きく跳ねた。
--夢で見たあの子だ
長い黒髪、少し眠たそうな目。夢の中と何一つ変わらない。
白雪澪
背後から声がした。
笑いながら、当たり前みたいに言う。知らない。見たことなんて、ないはずなのに。
朝霧凪
そう答えると、彼女は少しだけ眉を下げた。
白雪澪
朝霧凪
けれど彼女は聞いていない。
何度も、何度も「行こう」と言う。私はそのたびに断る。
それでも、気づいたとき、私は彼女に手を引かれていた。離してと言ったはずなのに、声は風に消えていく。
いつの間にか、私たちは手を繋いでいた。
雪山に着くと、彼女は振り返って言った。
白雪澪
----昨日の夢と、同じだ。
そう思った瞬間、彼女がじっと私を見つめた。
白雪澪
白雪澪
胸が、痛んだ
朝霧凪
その言葉に、彼女は一瞬だけ目を伏せてから笑った。
白雪澪
朝霧凪
白雪澪
雪は、音もなく振り続けていた。
澪は、私の手を握ったまま離さない。
その指先は冷たいはずなのに、不思議とあたたかかった。
白雪澪
そう言って、澪は少し前を歩く。
私は引っ張られる形で、ぎこちなく足を運んだ。
朝霧凪
白雪澪
朝霧凪
制服の下に隠れた鼓動が、少し早くなる。澪は少しだけ歩く速度を落とし、振り返らずに答えた。
白雪澪
嘘だ。名前も、癖も、間の取り方も。
知らない人にしては、近すぎる。
白雪澪
それ以上、澪は何も言わなかった。
しばらく歩くと、小さな広場に出た。
誰もいない。夢で見た風景と、寸文違わない。
白雪澪
澪が聞く。
朝霧凪
そう答えると、澪は小さく笑った。
白雪澪
澪は雪を掬って、私に向かって軽く投げた。
肩に当たって、冷たさに思わず声が出る。
朝霧凪
白雪澪
そう言って、もう一つ。気づけば、私も雪を掴んで投げ返していた。
夢と同じ。笑って、逃げて、転びそうになって。
朝霧凪
足を滑らせた瞬間、私は澪に抱きとめられた。
近い。吐く息が、触れそうな距離。
白雪澪