【週末短編】思いやり。−前編−

ガッチさんの家で 4人実況を撮るはずだったのだが

キヨくんの姿が見えない。

連絡もなく遅刻するのは初めてだった。

ガッチさんはスマホの画面を見ている。

季節の変わり目で体調を崩しやすい時期だ。

いつも元気なキヨくんが風邪を引くなんて…

俺はちょっと心配になった。

3人での実況は撮り終わった。

一人いないせいか、やけに 静かな実況が撮れたと思う。

うっしーと俺は帰る準備をする。

俺たちはガッチさんの家を出た。

帰り道。

俺は自分の家とは反対方向の電車に乗った。

うろ覚えな道を、マップを見ながら ゆっくりと進む。

途中にあった薬局で色々買い込んで。

今日の撮影にキヨくんが来なかったのが 心配だった。

最近は一人が多かった。

グループ実況も久々で 正直かなり楽しみにしていたのに。

時計を見ながら少し足早に キヨくんの家へと向かう。

ピンポーン

あれ、音がない。

風邪だから居留守使ってるのかもしれない。

少し待ってみても キヨくんは出てこない。

ピンポーン

2回目のチャイムを鳴らすと

少し足を引きずるように歩く音が聞こえた。

カチャッと音が鳴って 玄関の扉が開いた。

顔色の悪いキヨくんが出てきた。

少しかすれた声で いつもの元気さがどこかへ行ってしまったようだ。

心底驚いた顔をして 玄関に佇んでいる。

俺は心配になってキヨくんの 顔をじーっと覗き込む。

寝室に入って二人でベッドに座る。

風邪はかなりつらそうで 普段の元気が見る影もない。

俺は買ってきた解熱剤や スポーツドリンクをテーブルに置く。

具合の悪いキヨくんの目はとろんとしていて

キヨくんには悪いけれど ちょっとかわいいと思ってしまう。

目に掛かりそうな前髪を除けて

キヨくんの目を見つめる。

枕元にスポーツドリンクを置いて

俺はキッチンに向かった。

TO BE CONTINUED…