玲奈
私は負けない! と叫びながら走る男がいた。彼は、かつて死に怯えていた頃の自分とはもう違うのだということを世界に示したかった。そのために必死になって走っていた。自分の足音を追いかけるように後ろから聞こえてくる銃声に背筋を凍らせつつ、それでも立ち止まることなく走り続けた。
彼の名は新村清海。つい先ほどまで高校に通っていた普通の男子高校生だ。今はそんな面影など微塵もなく、着ている服は泥だらけになっており所々破れており、血痕も付着していた。清海の背後からは複数の追っ手が迫ってきていた。
何故こんなことになったのか? 何度目か分からない自問を繰り返すが答えは出ない。そもそも自分が追われるようなことをした覚えはないのだ。それなのに……。
「クソッ!」
思わず悪態をつく。同時に前方にあった木の幹に衝突してしまう。勢いよくぶつかったため頭をぶつけてしまったようで、一瞬意識を失いそうになる。だが、すぐに持ち直して再び逃げ出そうと試みるが、すでに体力の限界だったらしく思うように体が動かない。
「おい、いたぞ! こっちだ!」
後方からの声に反応して振り返ると数人の男たちの姿があった。彼らの目は飢えた獣のようにギラついている。今にも飛びかかってきそうな様子だ。
「くそぉ!!」
そう叫んだ直後、背中に強い衝撃を受けて地面に倒れる。痛みに耐えながら見上げるとそこには銃を構えた男が立っていた。どうやら発砲されたらしい。
「手間取らせやがって……」
男は苛立った声で呟くと倒れたままの清
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