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ヴァロ

生きたかったんだ

リン

都合のいい言い訳がないなんてお前らしくないな

ヴァロ

そうか

ヴァロ

私らしくないのか、こういうのは。

リン

ああ

ヴァロ

だって、もし彼女を救ったら契約が成立して私は死んでしまうだろ

リン

だがよ、死にたがりのお前が死から逃げ出すとは。

リン

それに、お前は臆病者じゃない。死なんて怖れていない。少くともオレはそう思っていた

ヴァロ

そうか

ヴァロ

でも私は臆病者だった。

ヴァロ

そんな君を失望させるような吸血鬼を守ったのはなんの為だ

リン

そんなの、お前が…………

リン

ああもうそういうのはいい

ヴァロ

ああ。私ももう、そういうのはいい。

ヴァロ

それと、メリエンを守ったのは何故だ。

リン

メリエンを救った人間には死が与えられる

リン

それに、あいつはオレにとって邪魔な存在だった

リン

だけどな、

リン

あいつは、お前が守ると決めた少女だ。

リン

何かに対するお前の覚悟が揺らいだとき、それを全力で止めるためにオレは存在している。

リン

そうだろ

ヴァロ

ああ、そうだ。そんな約束もした。

ヴァロ

ありがとう、リンよ。

リン

もし許してくれるなら

リン

まだ側にいたかったが

リン

これで、さよならだ

ヴァロ

どうかあちら側でも苦しまないで上手く生きてくれよ。

リン

あちら側ではもう死んでるだろ

ヴァロ

ああ、確かにそうだな

リン

ひとつ、我儘を聞いてくれはしないか

ヴァロ

ああ。だが、お前が救ってくれたこの命とメリエンの命は粗末にできない。私たちをお前の生贄にする以外ならなんでも聞こう

リン

それ以外なら、なんでもいいのだな

リン

最期に今夜もう一度踊ってくれ、そして、曲の終わりの最後の一音が聞こえる前にこの首を斬り落としてくれ

ヴァロ

分かった

メリエン

ねえ、もう寝なきゃだめなの?

リン

だめだ

メリエン

りんちゃん……死んじゃうの?

リン

ああ

メリエン

ごめんなさい。ヴァロさんも、りんちゃんも。

メリエン

アタシのせいで二人は「シ」の危険に晒されたんだよね?

リン

いいんだ

リン

「あたし」は、ヴァロに手を下してもらうから、それで構わないんだ

メリエン

それが、好きってことなの?

リン

ああ…………

リン

リン

多分そうだ。これが、愛というものなのだ

メリエン

ねえ、りんちゃん。

メリエン

…………元気でね

ヴァロ

すまんな。

リン

構わん

リン

その代わり、お前は、もう二度と死にたいなどと言うでない

リン

メリエンを一人前に育て上げろ。

リン

…………生きろ。

リン

永遠に生きて、この罪を償うんだ。

リン

あたしはこの恋慕の罪を死で償おう

リン

お前は、この恋慕の責任を、永遠の生で償うのだ。

ヴァロ

ヴァロ

分かった

リン

リン

さあ、踊ろう。

ヴァロ

綺麗だ

リン

……何がだ

ヴァロ

お前が、だ

リン

…………随分とキザなことを言うようになったな

ヴァロ

……お前のせいだ

ヴァロ

お前がもっと醜ければよかった

リン

そいつは無理な願いだ

リン

夢魔の生まれだからな。
必ず美しく生まれる定めなのだ

ヴァロ

知っている

リン

リン

どうだ?最後に。
今まで散々、
勿体ぶってただろ

ヴァロ

……遠慮しておく

ヴァロ

私は、守らないといけないものがある

ヴァロ

メリエンの為にも私の心をあの世に連れ去られては困るのだ。

リン

そればっかだな、ヴァロ

リン

お前は一人の少女が為に三大欲求全てを捨てているのだぞ

リン

それでいいのか

ヴァロ

……いい。

リン

残念だ。

リン

此処に来たのは間違いだったか

ヴァロ

……踊りに来たのでは無かったのか。

ヴァロ

お前は別のものを求めていたのか

リン

それでは駄目か

ヴァロ

汝は綺麗だ

リン

……いつか生まれ変わる日が来たら、夢魔じゃないといいな、はは

リン

不老不死なお前のもとに必ずまた生まれ

リン

どれだけ身分や年齢の差があれども

リン

いつか必ずあたしのものにしてやるよ

ヴァロ

待っているよ、お前のことを

リン

必ず出逢うさ

リン

そして、その時にはお前を毒して壊してやる

リン

必ずだ

ヴァロ

もう毒されているし壊されているさ

ヴァロ

もし許されるならば……

リン

……来世巡り逢うまで苦しみ続けろ

リン

あたしを傷つけた罰だ

リン

ずっと切ない心を抱えて生きていけ

ヴァロ

……そろそろ時間だよ

ヴァロ

君は死ぬ

リン

殺してくれるのか?

リン

その太刀で首を断ってくれ

ヴァロ

……この剣は古い。死に際まで苦しむぞリン

リン

この心の痛みに比べたらそんなもの痛くもなんともない

ヴァロ

……噛んでも構わんか

リン

……ああ

メリエン

すっごい血塗れ

メリエン

大丈夫?

ヴァロ

……大丈夫だ

メリエン

ねえ、どうして大切なのにわざわざ首を切ったりするの

ヴァロ

大切だからだ

メリエン

ねえ、なんで大切なのにわざわざ痛みつけたりするの?

ヴァロ

大切だからだ

メリエン

なんで?おかしいよ?

ヴァロ

お前も大人になればわかる

ヴァロ

感情というのはすぐに倒錯するものなのだ

メリエン

とー、さく?

ヴァロ

なあ、この話はやめにしないか

ヴァロ

私はお前を守る覚悟でいるのだ

メリエン

ねえ、ひとつだけ聞きたいの

メリエン

メリエン

ねえ、それじゃあさ

メリエン

アタシのことも
ヴァロさんは殺す気でいるってことだよね

ヴァロ

……そんなことは、ない

ヴァロ

そうじゃないんだ

ヴァロ

もういいだろ

ヴァロ

この話は終いだ

ヴァロ

もう決めたんだ

ヴァロ

お前のことをこの命に変えてでも守るって

ヴァロ

……まあ、二度と私は死ぬことはないだろうが

ヴァロ

すごく甘美だ

ヴァロ

なあ、あと何夜越せばいい

ヴァロ

ヴァロ

でもこれでよかったのかもしれない

ヴァロ

どちらにしても私がいなくてはメリエンは生きてはいけなかった

ヴァロ

折角巡り逢えたと言うのに

ヴァロ

惜しい気はするがな

ヴァロ

……君は凄く綺麗な目をしているな

ヴァロ

死体と喋っても虚しいだけなのは知っているが、

ヴァロ

お前しか私の話し相手はいないのだ

ヴァロ

……お前のいない200年の間は誰のことでも愛せるような心持ちがしていたが

ヴァロ

そうでもないらしいな

メリエン

わあ

メリエン

星がすっごく綺麗

ヴァロ

ヴァロ

綺麗だな

メリエン

この中にりんちゃんもいるの?

ヴァロ

……いない

メリエン

え?どうして?

ヴァロ

彼女は私たちの心の中にいるじゃないか

ヴァロ

空みたいな遠くへは行かないさ

ヴァロ

ずっとそばだ

メリエン

うん、ずっと、そば。

メリエン

アタシもそう思うの

ヴァロ

だから、メリエンも、私のずっとそばだ

メリエン

うん、いつかヴァロさんとお別れが来てもずっとそばなんだね

メリエン

じゃあ怖くないよ

メリエン

もしヴァロさんが歳をとったとしても。

ヴァロ

ヴァロ

……そうだな

メリエン

勇者食堂のみなさーん

メリエン

お薬いりませんかー?

店長

あら、メリエンちゃんじゃない

店長

まさかあの時はあの勇者じゃないくせに勇者食堂に入ってくる二人組が

店長

こんなすごい薬草師だったなんて思わなかったわ

メリエン

えへへー

メリエン

ヴァロさんとアタシの薬は最強なんだよ

ヴァロ

……ヴァロ、な。

店長

もう君たちも勇者の一員だ!

店長

なにかご飯食べていく?

メリエン

食べたーい!

メリエン

店長さんのご飯勇者の人からも美味しいって評判だし。

店長

え、そう?

店長

照れちゃうなー

店長

ヴァロくんもどう?

ヴァロ

ううん、妹にだけやってくれ

店長

えーー

店長

育ち盛りの若者はもっと食べなきゃだぞー

ヴァロ

昨日夜食を食べすぎたんだ

店長

わー生活リズムの乱れがすぎるぞ

店長

夜食を食べすぎるってやばいよ

ヴァロ

薬を夜中まで作っていたんだ

店長

無理はだめだぞー

店長

ヴァロくん、メリエンちゃん。そんな無理しないでよ。

店長

お姉さんが手伝ってあげるからいつでもおいでよ

メリエン

ありがとう

ヴァロ

ありがとう

店長

じゃあメリエンちゃん、ハンバーグをどうぞー

メリエン

やったー!

メリエン

ありがとう店長さん!

店長

ヴァロくんはいらないのね

ヴァロ

大丈夫

店長

よし、じゃあふたりとも、頑張ってねー

店長

お姉さんは仕事に戻るから。お皿返しにくる時にちょっとだけうちの店用の薬を頂戴ね

ヴァロ

はーい

メリエン

あー美味しかった

ヴァロ

よかったな

メリエン

ねえねえ、お薬売るのって楽しいね

メリエン

みんなが喜んでくれるし

メリエン

みんながアタシたちのこと覚えてくれたり気遣ってくれたりするし

ヴァロ

そうだな

ヴァロ

よかったよ、この街で暮らすことにして

メリエン

アタシね、リーファーでよかったって思うの

ヴァロ

じゃあよかった

メリエン

最高の街だよね、ここ。

ヴァロ

だが、くれぐれも気をつけろ

ヴァロ

今日も妖精が焼かれていたぞ

メリエン

……うん。

メリエン

ねえ、もしも妖精だってバレたら

メリエン

あんなに優しい街の人たちも

メリエン

アタシのこと捕まえにくる?

ヴァロ

捕まえに来るかもな

メリエン

それじゃあさ、

メリエン

もしヴァロさんが吸血鬼だってバレたらどうなるの?

ヴァロ

……街の人たちは捕まえに来るだろう

メリエン

もし、そうなったらどうする?

ヴァロ

街の人間を皆殺しにする

ヴァロ

メリエンを守らなきゃいけないからな

メリエン

……うん

ヴァロ

どうした、いきなりそんなことを聞いてくるなんて

メリエン

だって怖いの

メリエン

みんな、アタシたちが人間だと思ってるから優しいだけなんじゃないかって思って

ヴァロ

ああ、私たちが魔物だとバレれば、殺される

ヴァロ

最初から分かっていたことだろ

メリエン

ねえ、みんなが生き残る道はないの?

ヴァロ

そんなものはない

ヴァロ

私は人間を食わなければならないし

ヴァロ

人間はお前を食わなければならない

メリエン

そうだよね

メリエン

変なこと言ってごめんね

ヴァロ

いいんだ

ヴァロ

私も昔はそういうことばかり思っていたから

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