タッ、タッ、タッ、タッ
靴底が心地よい音を鳴らす
勢い余って転びそうになるけど そんなの今は気にしてられない
虹に向かって走ってゆく
あの虹が消える前に 伝えたいんだ
出会ったのはいつだっけ?
何年前の春だっけ?
たしか、あの日は 雨が降っててさ。
雨月
一人、昇降口の前で立ち尽くした
今朝、母の予言を無視して 傘を持ってこなかったからだ
雨月
雨月
数秒で思考を巡らせるのを中断して駆けだそうとした
その時
陽太
雨月
駆けだそうと構えた体制を 正してしまった
陽太
呆れたように近づいてくる人
確か、岩畑 陽太さん…だっけ。
雨月
陽太
雨月
陽太
雨月
陽太
笑いながら傘を開く君
いつかの会話が頭をよぎった
数年前も こんな会話流行ったっけ。
陽太
雨月
陽太
雨月
雨月
雨音が散る通学路を 二人で帰ったのが始まり
雨月
陽太
休日にバッタリ君と出会った
ちょっと心が跳ねたのは 秘密だよ?
雨月
陽太
雨月
陽太
ちょっと照れたような君の笑顔
知ってるよ
限定スイーツ目当てで来たこと
ちょっと女子力高いとこ 嫌いじゃないから
雨月
さり気なく誘うと
陽太
雨月
ハイテンションで乗ってくる君
可愛いとこあんじゃん、って
胸がキュンと鳴いたのは
この時だって堂々と言えるよ
陽太
君と他の子が喋ってる
別に、誰だっていいんだけどさ。
陽太
一瞬キョトンとして頷く君
陽太
胸が騒ぐのは雨の予兆みたい
この気持ちが分かんなくなるのは 心に霧が起こったみたいだ
雨月
陽太
代永さんが去ったあとに 君に聞くと
また呑気な顔をされた
気づけよ、バーカ。
二人きり、なんて 何かあるに決まってんだろ。
陽太
雨月
雨月
陽太
鈍感過ぎる君
気づいてよ、って 風が吹くみたいに胸がざわめいた
雨月
委員会もなければ 告白の予定もない私は
たった一人で帰路を歩いた
告白の返事とか 気にしないつもりだったのに
胸がざわめいたままなのは どうして?
もし君が告白に頷いたなら
もし君があの子を好きならば
そんな想像が雲のように 流れては消えていく
こんなの
雨月
私の頬を雫が叩く
君と初めて会った時の 雨みたいだ
でも
「さよなら……」
なんて
雨月
すぐさま踵を返して 走り出す
こういう時の駆け出しは 止めてくれないなんて
本当、ズルいなぁ…
あの時、霧が晴れて
君の隣への道が 見つかったみたいだったんだ
雨月
昇降口前で君の名前を叫んだ
そう、君と初めて話した 昇降口だ
陽太
不思議そうな顔で見つめる君
丁度、委員会も終わったみたいだ
雨月
やばっ…私
告白の言葉なんて 用意してなかった…!!
陽太
ふにゃっとした笑顔をして 歩きだそうとする陽太
だけど、告白するなら 昇降口でしたい。
だから、私は立ったまま。
陽太
雨月
考えがまとまらないまま 言葉を紡いだ
ただ、それだけなんだ
でも、これだけは伝えたいんだ
雨月
雨月
あの日から私、 君のことが好きだったんだよ
そんなのすぐ冷めるかも、って?
そんなの、惚れた弱みだ
雨月
雨月
精一杯、笑顔を作った
だって、振られて 後悔したくないんだもん
泣くのは、後でいいでしょ?
陽太
赤く染まった頬
反らした目に はにかんだ顔
あの日みたいに 忘れたくないなぁ、って
雨月
あの日みたいに並んで歩く
傘が無くたって距離は近いけど。
陽太
何かに気づいて空を指す君
校門を出てすぐに
大きな虹が見えたのは 二人だけの秘密。
コメント
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『君も明日から傘を持て』と言うお告げですね!?だが、私は持たない(´-ι_-`)ふっ
可愛すぎる…(*´`)♡ 私の友達の恋バナ聞いてる時と同じくらいキュンキュンしました!心臓がもたない…笑
まってめっちゃ微笑まし…