君と幸せな恋を

昔からそうだった

『血が美味しい』 そんな理由で狙われる

家族を殺され吸血鬼に捕らえられ

オークションで売られて

今では小さな暗い部屋で過ごす

ガシャｯ

肌を乱暴に噛み切られ そこから血を吸われていく

最初は怖かった 肌を噛み切られる感触が嫌で嫌で

仕方なかった

でも今は慣れた 肌を噛み切られる感触も もう何も気にしなくなった

人間と吸血鬼じゃ立場も 吸血鬼の方が上だ

人間は奴隷にしてもいい そんな時代だ

今日も言いなりの日々

何時しか出なくなった言葉

叶うはずのない願いを思いながら 瞼を閉じた

目を覚ますと目の前は暗かった

おそらく目隠しでも つけられているのだろう

よく耳をすませてみれば 大きな音が聞こえてくる

怒鳴り声のような叫び声のような

後ろから気配を感じても 何も抵抗できない

ぎゅっと目を瞑る

目隠しを外され目を開くとそこは

大きくて明るい会場

あちらこちらから 110万、150万

165万などと大声が飛び交う

この大きな声が出た途端 会場が静かになった

会場がざわめきだす

2億なんてそう簡単に 払える額じゃない

彼が指を鳴らすと1人の男が アタッシュケースを持って入り それを彼へ渡す

アタッシュケースを開けてみせる彼

中には札束が敷き詰められており 大金が入っている

抱き抱えられ会場を後にする

音が聞こえなくなるまで 会場は騒いでいた

そう言い優しく地面へおろしてもらう

声を振り絞ってだす

二度と呼ばれることの 無いと思っていた名前

なんだか家族に呼ばれた時と 同じ気持ちで

気づくと頬に雫が伝っていた

あわあわと慌てる彼

止めたいのに止まらない涙

黙り込む彼 きっと嫌になっただろう

漏れる嗚咽 冷える心

止まらない涙を拭い続けていると

そんな効果音がつかんばかりに 優しく自身を包み込む彼

優しい声でそんなことを言うのだから

抑えていた何かが 堰を切ったように溢れ出す

氷のように冷たい心が 暖かい何かによって溶けていくように

胸が暖かくなる

この人とならきっと 一緒に生きていける

初めても全部この人に捧げよう

重ねた唇 少し開いた口から入る舌

この恋はきっと長く 幸せな恋になるだろう