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光のカーテン

第1話 - 光のカーテン

2020年02月21日

#超能力

#学生

#いじめ

#恋愛

ゆきみ大福

ナレーター

人の心の中が見えたら良いと思う人は多いでしょう。しかし本当に人の心の中が見えてしまう能力があったら、大変な事になってしまいます。

ナレーター

犬山美良（いぬやまみら）はそんな心の声が聞こえてしまう能力を持っている女子高生だった。友達は出来ず、いつも一人ぼっちで校舎裏のベンチに腰掛けて物思いに耽る日々…

犬山美良

私はオーラのようなモノを読み取れる。言語ではなく感情が流れ込んでくる感じ…。嫌な事を考えてる人がそばにいると、ドス黒いオーラが頭の中に映像として流れ込んでくる。

犬山美良

これは多分、イルカのエコーロケーションに似ている。イルカは音で映像を観ている感覚になるらしい。だからソナーの超音波で脳内の映像がバグって座礁してしまったりする。

犬山美良

ラジオのチャンネルを合わせる時にノイズで音が乱れるが、それに似ている。私は人混みが苦手だ。教室にいても雑音が酷くて周りの話も上手く聴き取れない…

犬山美良

まただ…。悪い思考が頭の中に流れ込んで来た。悪い思考であればあるほど大きな声で聴こえてくる。もう聴きたくない！校舎裏に逃げよう。

ナレーター

王の字型の校舎裏の玉の字の点のベンチには人がほとんど来ない。遠回りしなくてはならず、日陰になっていて昼間でも薄暗い。だが、美良にとっては居心地の良い場所だった。

清水流一

犬山さん、いつも一人であのベンチに座って俯いてばかりだな。僕は君の事が気になってしょうがないよ。

ナレーター

ベンチに同じクラスの清水流一（しみずりゅういち）が座った。男子制服のブルーのチェックのズボンが美良の目に入る。美良は顔を上げた。

犬山美良

清水君だ！彼だけは他の男子と違って透明で綺麗なオーラを持ってる。

ナレーター

二人は一言も発しないままだったが美良には流一の考えている事が全てわかっていた。自然と流一の手を握る。流一は嬉しそうに握り返した。

犬山美良

清水君と一緒にいると落ち着く…。

ナレーター

普通は相手がどう思っているのかわからなくて悩むものだが、美良には流一が何を望んでいるのか全てわかるのが辛かった。

犬山美良

清水君は私の中で70点くらいかな？

清水流一

えっ…、どうして点数の話を急に？

犬山美良

点数が知りたいと思ってたでしょ？

清水流一

うん、ちょうどそんな事を考えてたんだ。僕の中では犬山さんは80点！

犬山美良

それは嘘。60点だと思ってたよね？

清水流一

犬山さんの方こそ本当に70点なの？

犬山美良

私は本当に最初から70点だよ。私の答えを聞いてから、80点に変えたでしょ？全部わかってるんだからね！

清水流一

えええっ！どうしてわかるの？犬山さんすごいなぁ…

ナレーター

美良が心の中を言い当てると、ほとんどの人が激怒するか、恐怖を感じて避け始める。しかし流一だけは怒りもせず、怖がる事もしなかった。美良にはそれがとても嬉しかった。

ナレーター

心の中が見えるので流一が他の女子生徒と話していても美良はヤキモチを妬かない。しかし美良が他の男子生徒と話していると流一はヤキモチを妬くので、それも直接指摘する。

犬山美良

さっき私が教室で男子と話してた時、清水君ヤキモチ妬いてたでしょ？

清水流一

そんな事ないよ〜？全ッ然、平気！

犬山美良

それも嘘！全部わかるんだからね？

ナレーター

美良は嘘つきが大嫌いだったが、流一のつく嘘だけはなぜか許せた。嘘には2種類ある。人を傷付ける嘘と人を傷付けない為の嘘。他の人は平然と人を傷付ける嘘をついていた。

犬山美良

女子生徒はいじめのターゲットを決めると、私にもその子を無視するように言って来る。断ると次のターゲットは私にされてしまったようだ。

いじめっ子

流一君は優しいから、美良に同情してるだけなんでしょ？あの子、性格悪いから気を付けた方が良いよ〜！

清水流一

ん？別に性格は悪くないと思うけどなぁ…。僕は犬山さんが好きだよ。

犬山美良

あの子は清水君が好きなんだ。だから私の事がずっと嫌いだったのよ。

いじめっ子

ちょ…何、勝手に勘違いしてんの？そんなわけないじゃん！バーカ！！

清水流一

犬山さん、そんなわけないじゃないか？僕はイケメンでもないし、女子からモテない事くらい知ってるよ？

犬山美良

いじめに加わらなければ次のターゲットにされる。それがいじめのメカニズムだとわかっているのに私は…

ナレーター

いつものベンチに一人で座っていると流一がいつものように隣に座る。美良を抱きしめたいと思っているのが伝わってくる。

犬山美良

うん…、抱きしめて良いよ？私もそうしたかったの。

ナレーター

流一は少し戸惑うような表情をしたが、美良の体を優しく抱きしめる。

犬山美良

今は90点くらいかもしれない…。清水君の点数が私の中で上がってる。

清水流一

それなら僕は…今、百点満点だよ？

ナレーター

二人のオーラは混ざり合いマーブル模様になっている。胸が高なった。

犬山美良

百点満点なんて嘘…。私の方が清水君が想ってるより好きなんだもん。

清水流一

僕の想ってる事が、どうして君にはいつもわかるんだい？不思議だよ。

ナレーター

オーラの事を説明するのは難しかった。微妙な温度差でわかるのだ。今まで説明しても理解されなかった。

犬山美良

なんて言うか、お風呂に入ってる時にお湯を足してると、蛇口のそばと離れてる場所は温度が違うでしょ？

清水流一

ああ、確かにそうだね。あんな感じでわかるの？君は不思議な人だよ。

犬山美良

ねぇ、清水君は海外に旅行するならどこへ行きたい？

清水流一

ナバホ族の聖地！この前テレビで観たんだけど光のカーテンがすごく綺麗でさ〜。肉眼で観てみたいんだ。

ナレーター

光のカーテンが目の前に現れる。流一がテレビで観た映像を脳内で美良は共有している。

犬山美良

私も行ってみたい！光のカーテン、生で観たらもっと綺麗なんだろね。

清水流一

でもナバホ族の決まりで一年に十組しか入れないんだってさ。いつか結婚したら新婚旅行で予約したいね。

ナレーター

校舎裏から昇降口に回り、下駄箱を開けると、美良の上履の中に石ころが詰められている。それを見た流一のオーラが怒りの朱色に染まった。

清水流一

誰がこんな事をしたんだ！犬山さんをいじめるなんて絶対に許さない。

ナレーター

流一は上履の中に入っていた石ころを外に捨てると、パンパンと叩いて中に入っている土も落として、美良の所へ戻ってくると上履を手渡す。

いじめっ子

……………………

犬山美良

私には犯人が誰なのかわかってる。でもそれを流一君には言うつもりはない。あの子の気持ちもわかるし…

ナレーター

座る人の少ない校舎裏に人がよく来るようになった。あのベンチに好きな人と座ると両想いになると言う噂が女子生徒の間で広まったからだ。

ナレーター

王の字型の校舎の玉の字の点の辺りにあるベンチだが、他のベンチではなくそこだけ人気スポットになる。

犬山美良

学校で二人っきりで話せる場所がなくなっちゃった…

清水流一

駅まで一緒に帰ろうよ？歩きながらでも話は出来る。

ナレーター

王の字型の校舎の王の字の真上の昇降口から出て橋を渡ると、その先に最寄りの駅がある。駅までの短い通学路を二人並んで歩くのが、唯一の楽しみになった。

清水流一

今度、僕の家にくる？犬山さんの家にも行ってみたいけど、ダメかな…

犬山美良

私の部屋は散らかってるからダメ！

ナレーター

電車が来るまで駅のホームのベンチに座って、次の日曜日の待ち合わせ日時を決める。逆方向の路線へと別れて電車に乗り込んだ。満員電車は雑音が酷くて美良は大嫌いだった。

ナレーター

若い女性の胸をガン見している男性の思考や、とにかく嫌なオーラが入り乱れている。皆、無言のままなのに、美良にはうるさくて堪らない。

ナレーター

美良の住んでいる家は神社が近くにあって、緑も多く静かな場所なので雑音はそれほど酷くはない。流一が住んでるのは、所謂ベッドタウンでマンションがいくつも立ち並ぶ場所にあった。雑音はそれなりにある。

ナレーター

日曜日に最寄りの駅に迎えに来た流一に案内されて初めて清水家にやって来る。部屋の中は流一の匂いで溢れていた。美良が隣に座って手を握ると流一の心の声が聞こえてくる。

犬山美良

今、キスしたいって思ったでしょ？

清水流一

どうしてバレた？

犬山美良

流一君を見てたらすぐわかるもん！

清水流一

そんなにわかりやすいのかな、僕…

犬山美良

キスはしないの？

清水流一

しても良いなら…

ナレーター

美良が目を閉じてこくりと頷くと、流一の髪がおでこに当たって美良はくすぐったかった。ファーストキスはふんわりとした軽いキスだった。

犬山美良

もう一度…して？

ナレーター

美良がおねだりすると流一は何度も軽いキスを繰り返した。終わった後も肩を寄せ合い至福の時を味わう。

ナレーター

流一が次に何を望んでいるのか美良にはわかっていた。でもそれはまだ心の準備が出来ていない。他の男子生徒もいやらしい妄想はよくするが流一の妄想は嫌だと思わなかった。

清水流一

いつか犬山さんの家にも遊びに行きたいなぁ。どこに住んでるのかな？

犬山美良

それじゃ次の日曜日までに部屋を片付けておくね？神社の近くだよ。学校から遠いけど…

清水流一

神社があるんだ？お参りに行こう！

ナレーター

次の日曜日は美良の家まで流一を連れて来た。モフモフのカーペットに美良が大の字で寝転ぶと、流一も横に寝転がる。二人の指と指を絡めると、流一の思考が流れ込んで来た。

犬山美良

少しだけなら…胸触っても良いよ？

清水流一

えっ…！それって、どういう意味？

犬山美良

胸触りたいって思ってたでしょ？少しだけだからね！

ナレーター

絡んだ指を解くと美良の胸に流一の手が近付いてくる。軽く手が触れると、美良はすぐに流一から離れた。

犬山美良

ごめん！これ以上はやっぱり無理…

清水流一

どうして…胸を触らせてくれたの？

犬山美良

だって…胸触りたかったんでしょ？

清水流一

僕は君の嫌がる事はしたくないよ…

犬山美良

流一君が思ってたから触らせてあげたのにどうして喜んでくれないの？

清水流一

僕は君と一緒にいられるだけで良いと思っているよ？

ナレーター

流一がなぜそんな嘘をつくのか美良にはわからなかった。神社でお参りをすると、流一は帰ってしまった。

ナレーター

それからしばらくして流一はラブレターをもらった。中身は見せてもらえなかったが、内容は大体わかっている。高木小夜（たかぎさや）と言うクラス一の人気者の女子生徒だ。

高木小夜

流一君、この前渡した手紙は読んでくれた？返事、そろそろ聞かせて…

清水流一

うん…、手紙は読んだよ？ありがとう。嬉しかった！

高木小夜

ところで流一君、犬山さんと付き合ってるの？噂になってるんだけど…

清水流一

知ってたんだね？

高木小夜

私、いつも彼女がいる人、好きになっちゃうんだよね…。でも諦めきれないから手紙、書いちゃったんだ。

清水流一

今は彼女の事しか考えられない。僕みたいな奴が高木さんのような可愛い子を振るなんて申し訳ないけど…

高木小夜

そう言うと思った…。彼女を大事にしてるところが好きだったから、裏切るようなら冷めちゃってたかも？

清水流一

高木さんならいくらでも良い男が現れると思うよ？僕なんかには勿体ない美人だからね！

高木小夜

いつもそう言われて振られてるの。でもこの気持ちだけは伝えたかったから…。末長く二人でお幸せにね？

犬山美良

高木さんはピンクとパープルのマーブル模様のオーラを出してるわ。本気で流一君の事が好きだったのね…

犬山美良

私のオーラはグリーンとブルーのマーブル模様だから、恋はしてないみたい。流一君の事は友達みたいな感覚だし、えっちな事もしたくない…

犬山美良

高木さんならえっちな事もしてあげられそう。その方が流一君は幸せなんじゃないかな？

ナレーター

次の日曜日は流一の家でデートする事になっていたので、憂鬱な気分のまま、待ち合わせ場所へ向かった。

犬山美良

流一君、この前もらってたラブレターの事なんだけど、本当は嬉しかったんだよね？私に気を遣わずに、その子と付き合ってあげたら良いよ！

清水流一

僕はあれがラブレターだなんて君に言ってないのに何でそう思ったの？

犬山美良

高木さんと流一君はお似合いだと思うよ？私より高木さんの方が、流一君と考え方も合うんじゃないかな？

清水流一

高木さんからの手紙だって事も知ってるんだね？女子の噂話は怖いな…

犬山美良

私…流一君に甘えてばかりで何もしてあげられないし、高木さんなら流一君のしたい事させてもらえるよ？

清水流一

僕のしたい事って…。僕が好きなのは犬山さんだけだよ？僕が誰と付き合うかは僕自身が決める事だから。

犬山美良

私にとって流一君はただの友達なんだよ。えっちな事もしたくならないし、普通はえっちな事するみたい…

清水流一

君が僕を嫌いだと言うなら別れるけど、えっちな事もしなくて良いし…

犬山美良

別れたくはないよ…。でも私が一緒にいたら、流一君は不幸になるよ？

清水流一

君と一緒にいられることが幸せなんだけど？君以外の人と付き合う事は考えられない。君が一番好きだよ。

ナレーター

いつもより強く抱きしめられた。流一の思考が流れ込む。実際にはいやらしい妄想をしていたが、それでも美良は流一を嫌いになれなかった。

犬山美良

もし私より先に高木さんが流一君を好きになってたら、流一君は高木さんと付き合って幸せだったのかもしれない。私を選んで本当に良かったの？私は望む事をしてあげてない。

ナレーター

高校を卒業して二人は入籍する事にしました。お互いの両親には高校時代から公認の仲でしたので、トントン拍子に話が進みます。結婚式場のパンフレットやハネムーンのパンフレットを机の上に並べていました。

犬山美良

ナバホ族の聖地ってアメリカにあるんだよね？モニュメントバレーってところみたいだけど…。ホテルの予約とかどこにすれば良いんだろう？

清水流一

ああ、そんな話した事あったね！僕もう忘れてたよ…

犬山美良

えええっ！私は忘れた事、一回もないよ？毎日思い出してたのに、光のカーテンの映像…

清水流一

光のカーテンの映像見た事あるの？

犬山美良

流一君の見てたテレビの映像だよ？

清水流一

同じ番組、美良ちゃんも見てたんだね〜。あれ見た時は感動したなぁ。

犬山美良

忘れちゃった癖に…。流一君、記憶力悪過ぎるんだもん！5分前に言ってた事まで忘れてる時とかあるし…

清水流一

美良ちゃんが記憶力良過ぎるんだって！普通はそんな話、忘れてるよ？

犬山美良

酷い！私は流一君と喋った事、全部覚えてるのに、すぐ忘れちゃうの？

清水流一

メンドクサイな…

犬山美良

えっ、今メンドクサイって言った？

清水流一

僕は何も言ってないよ？気のせいじゃないかな。美良ちゃん空耳が多くて、言ってない事で怒り出すから…

犬山美良

絶対に聞こえたもん！心の中の声…

清水流一

言ってないのに言ったと言われるの辛い…。ただの空耳じゃないかな？

犬山美良

私が嘘つきって言うの？酷過ぎる…

清水流一

美良ちゃん…。そう言う意味じゃないよ？本当に美良ちゃんの事は大好きだから信じて！

犬山美良

子供っぽいって思ったでしょ？聞こえてるよ…。えっちな事も全然させないって思ってるのもずっと聞こえてたんだからね！

清水流一

う〜ん、美良ちゃんは僕の考えてる事いつも当てられるけど、僕は美良ちゃんの考えてる事がわからないんだ。本当に君の事が大好きだから…

犬山美良

もう結婚するのは辞めた方が良いのかもね。こう言うのマリッジブルーって言うのかな？

清水流一

美良ちゃんはいつもそう言うね。僕は一度もそんな風に考えた事ないけど、僕の事が本当は好きじゃないんじゃないかな？美良ちゃんの方が…

犬山美良

そんな事ないよ！結婚したらハネムーンで、えっちな事するって決めてたもん。絶対にするって決めてる。

清水流一

えっ、それ本当？

犬山美良

今めっちゃ喜んでるね！男の子って単純だわ…。えっちな事しか考えてない人多いから…

清水流一

ぼ、僕はそんな事ばかり考えてないよ！信じてくれ…

犬山美良

知ってる。毎日流一君の考えてる事見えてるからね…

ナレーター

なんだかんだで結婚してハネムーンは無難にハワイに行きました。ナバホ族の聖地は予約がいっぱいで諦めたのです。旅先で美良は不満そうにほっぺたをぷくっと膨らませます。

清水流一

僕もナバホ族の聖地に行きたかったけど、世界中から予約が殺到して何年も前から埋まってるらしいんだ…

犬山美良

いつか絶対に行くって決めてるから今からでも予約しといてって言ってるのに、なんで予約しなかったの？

清水流一

ハネムーン以外で海外に来るなんて余裕がないからだよ。僕はサラリーマンになると思うし、旅行してる暇はなくなるから…

犬山美良

嘘！親から反対されたんでしょ？そんなわけわかんないところ行くのは危険だ！って言われたの、知ってるんだからね？危険なわけないのに…

清水流一

あまり知られてない場所より、誰でも行ける場所の方が安全だって、お父さんが言うから、仕方なくここに決めたんだけど…

犬山美良

そう言う考え方嫌い！流一君のお父さんなんか嫌い…

清水流一

お父さんは美良ちゃんの事、可愛いって言ってたよ？

犬山美良

でもお母さんはあの子は天然だからちょっと…、とか言ってなかった？

清水流一

本当になんでも知ってるんだね？うちに盗聴器でも仕掛けてあるのか…

犬山美良

盗聴なんかしてない！私はイルカと同じ第六感があるのよ？何度も説明してるのに理解してないんだから…

清水流一

そうそう、イルカと戯れるダイビングツアーに申し込んでおいたから！

犬山美良

イルカに逢えるのは楽しみだなぁ〜

ナレーター

その日の晩に美良は流一と初めて結ばれました。すると翌日から急に心の声が聴こえなくなってしまったのです。周りの雑音がなくなり嘘みたいに静かでした。

犬山美良

どうして聴こえなくなっちゃったんだろ？イルカに逢ったら話せるの楽しみにしてたのに、もう話せない…

清水流一

ダイビングの前にトレーナーさんから説明があるから、早く更衣室で着替えて出て来て！

ナレーター

体にピッタリ張り付くダイバースーツに着替えると、イルカのいる浜辺へ集合しました。

トレーナー

皆さん！イルカと戯れる前に注意事項があります。野生のイルカはどんなに人間に慣れてる様に見えても凶暴なので、決して触らないように…

犬山美良

そうなんだ…。イルカに触ってみたかったのになぁ〜

トレーナー

それとフラッシュを焚かれるとイルカは怖がるで、カメラをお持ちの方は撮影をご遠慮願います。フラッシュを焚かなければ、撮影しても構いませんが、イルカを刺激しない為に全ての撮影をお断りしております。

犬山美良

写真も撮りたかったけど、スマホは置いて来ちゃった。まあ、撮影禁止みたいだからスマホなくていっか！

イルカ

美良ちゃん、逢いたかったよ？君は僕の友達だから…

犬山美良

あれ？イルカの声が聴こえてくる…

イルカ

美良ちゃんにはアンテナがあったけど、今はアンテナがなくなってしまってる。でも僕のエコーロケーションは人間のより強力だから、強制的に受信させてる。

犬山美良

そうなの！スマホのアンテナもたまに圏外になるけど、私のアンテナは今圏外らしくてハワイだからかな？

イルカ

それは美良ちゃんが大人になったからだよ？人間の中にもたまにエコーロケーション使える子がいて、僕と友達になるんだけど、大人は使えない人が多いから。

犬山美良

えっ？私まだ18歳だし、一応役所に婚姻届は出したけどまだ子供だと思うんだけどなぁ…

イルカ

うん、美良ちゃんはまだ純粋な心があるけど、大人になると純粋な心を失ってしまうよ。子供なのに純粋な心がない人もいる。だから大人になっても君は純粋な心を失わないで…

犬山美良

わかったよ。流一君の声は聴こえなくなっちゃったけどイルカの声は聴こえて良かった！

イルカ

僕は遠くにいても君と話せるからまた話しかけるね。

犬山美良

本当に？スマホで喋るのと似てるんだね。イルカのエコーロケーションは海外でも声が届くなんてすごい！

イルカ

時々、心の中に声が聴こえる時なかった？悪い事しようとした時とか…

犬山美良

うん！ゴミをポイ捨てしようとした時とか捨てないで…って聴こえた。

イルカ

それは僕だよ？イルカは人間を見守る為に海から見てるんだ。エコーロケーションで人間が悪さしてるのをね！あまりにも酷いと災害が起こるのは、神様が怒ってるからなんだ。

犬山美良

そうだったんだ？最近、大雨洪水や津波地震が多いのはそのせいなの…

イルカ

うん、だから反省して欲しい。人間が悪さをするから災害が起きてるってね。美良ちゃんからも人間に伝えて欲しい。スマホのアプリとかで…

ナレーター

光のカーテンを最後まで読んでくださって、ありがとうございました。今回は作風をガラッと変えてみたのですが、不評のようなので反省中…

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ゆきみ大福

プロフィール

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光のカーテン

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