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平澤 由佳里

梨沙っ…

平澤 由佳里

梨沙ぁ…っ!!

下半身の痛みもかまわず、由佳里は夕暮れの中をひたすら走っていた

平澤 由佳里

ねぇ、こんなの…ありえないよね?

平澤 由佳里

嘘だよね?

平澤 由佳里

きっと、宮坂さんがちょっと怖がらせるためにイタズラしただけだよね?

平澤 由佳里

宮坂さんだって、人の子なんだもん…

平澤 由佳里

だから、梨沙は無事に決まってる!

平澤 由佳里

私が帰ったら…

平澤 由佳里

『お姉ちゃん、怖かったよー!』って泣きついてくるに違いないんだから…!

平澤 由佳里

ねぇ、そうなんでしょう?!

平澤 由佳里

お願い!

平澤 由佳里

梨沙…!!

道の途中で、行き交う人たちの話し声が耳に入る

おばさん

ちょっと、あっちの住宅街で火事だって!

おばさん

ええ?!

おばさん

怖いわねぇ…

平澤 由佳里

……!!

平澤 由佳里

梨沙…っ

恐ろしいほどの不安を押し殺すように、由佳里は自宅への曲がり角を曲がった

そこには、半分鎮火してもまだ尚、燃え続けている自宅の姿があった…

平澤 由佳里

う…そ…

平澤 由佳里

こんなの…

平澤 由佳里

嘘…だよ…ね

近所の野次馬が見つめる中、消防隊員たちが必死に消火活動をしている

平澤 由佳里

り…さ…

平澤 由佳里

…梨沙ぁぁ!!

焼け焦げた自宅の玄関に向かって走る由佳里を、消防隊員が掴んで止めた

消防隊員

おい!君っ!

消防隊員

危ないじゃないか!!

消防隊員

まだ火は完全には消し止めてないんだぞ?!

平澤 由佳里

離して!!

平澤 由佳里

梨沙が…梨沙がぁっ…!!

消防隊員

やめなさい!!

平澤 由佳里

いやだぁぁ…梨沙っ!!

平澤 由佳里

り……

玄関から、担架を運び出してきた消防隊員2人の姿を目にした瞬間に由佳里は言葉を失った

平澤 由佳里

………

消防隊員

可哀想に…

消防隊員

まだ幼い少女だろうに…

平澤 由佳里

……!!

消防隊員

あっ!おい君!どこへ行く?!

掴まれていた消防隊員の手を振り払い、由佳里は運ばれる担架まで駆け寄った

消防隊員

な、なんだ君?!

そして…

それに掛けられていた、シートに手をかけた

消防隊員

…君!

消防隊員

見ない方がっ…!!

シートをめくると、そこに梨沙はいた

全身が赤黒く焼けただれ、

変わり果てた姿で

平澤 由佳里

り……さ…

消防隊員

ほら、そこをどきなさい!

消防隊員

…しかし、なんでこんな短時間でここまで…

消防隊員

どうやら、台所の鍋で揚げ物のような料理をしていた痕跡があったようです

消防隊員

その油に引火したことで、一層炎の勢いが増したものかと…

消防隊員

…そうか

消防隊員

一体、何を揚げていたんだろうな

消防隊員

天ぷらなのやら、はたまた…

消防隊員

ドーナツなのやら…

平澤 由佳里

………

力なく、その場に由佳里はガクンと膝から崩れ落ちた

平澤 梨沙

『お姉ちゃん!ハニードーナツ作ったよ!』

平澤 梨沙

『たまには甘い物食べて、ホッとしてもらいたくて…』

平澤 梨沙

『…お姉ちゃん!』

あの笑顔は、もうどこにもいない

平澤 由佳里

あ…

平澤 由佳里

あ…あああああぁ…!!!

これが、「絶望」という言葉1つで片付くのなら、少しは楽になれたかもしれない

その夜中、由佳里は当てもなく彷徨い続けた

意識があるのかないのかさえ、わからないまま

平澤 由佳里

………

そして、気がつくと学校に入っていた

そして、そのまま旧校舎へと足は向くのだった

旧校舎に足を踏み入れ、ギシギシと軋む床を踏み歩く

そして、下足ホールに差し掛かると、木製の下駄箱に書かれたある生徒の氏名が目に入った

平澤 由佳里

……2年A組

平澤 由佳里

「一ノ宮ゆかり」…

平澤 由佳里

…イジメを苦にして自殺した、ゆかり……

うわ言のようにつぶやきながら、その下駄箱の扉を開ける

平澤 由佳里

………

その中には、ボロボロに朽ち果てた上履きと、その上に1枚の紙が入っていた

平澤 由佳里

ゆかりの…

平澤 由佳里

遺書…

導かれるように、その紙を手に取った

そこには、女性と思わしき細い字で、紙面いっぱいに文章が綴られていた

私は許さない 私をイジメという檻に閉じ込め、生きる権利すら否定した人たちを

私のことを「貧乏な生まれの卑しい豚」と罵った女子も

私の大切にしている物を目の前で壊してみせた奴も

私を殴って蹴って、ゲラゲラ笑っていた男子も

私の給食に唾を吐き入れた女子も

そして、それをすべて見て見ぬふりしてきた先生たちも

許さない

この世のすべてを呪いながら、私は死にます

そして必ず、私を殺した奴らに罰を下します

平澤 由佳里

………

由佳里は遺書を丁寧に折り畳むと、スカートのポケットに入れた

…誰かが呼んでいる

そんな気がした由佳里は、誘われるままに夜の屋上へと辿り着いた

平澤 由佳里

………

平澤 由佳里

…そうだね

平澤 由佳里

あなたと、私は同じ…

平澤 由佳里

名前も…

平澤 由佳里

生きる意味を失くしてしまったのも

ヒュウゥーッと、生ぬるい風が由佳里の髪の毛をなびかせる

平澤 由佳里

…いつか、真世がこんな噂話してたっけ

平澤 由佳里

夜中の2時ちょうどに旧校舎の屋上のフェンスを乗り越えて…

平澤 由佳里

下を見下ろすと、自殺した生徒が校舎の壁を伝って登ってくるって…

平澤 由佳里

ねぇ、あなたなの?

平澤 由佳里

ゆかり…

フェンスの方へと、ゆっくりと歩みを進めた

平澤 由佳里

…ねぇ

平澤 由佳里

あなたは、後悔してるの?

平澤 由佳里

この世で、自分をいじめた奴らに復讐してやれなかったことを…

そしてフェンスをよじ登り、向こう側へと降りた

平澤 由佳里

…殺してやりたい

平澤 由佳里

私は…

平澤 由佳里

私のすべてを傷つけ奪い尽くし、今でも笑って生きているアイツらを…!

平澤 由佳里

この手で…

平澤 由佳里

この手で殺してやりたい…っ!!

平澤 由佳里

もがき苦しんで、死ねばいい…

平澤 由佳里

あなたも…

平澤 由佳里

そう…思うでしょう?

そして、下を覗き込んだ

平澤 由佳里

あ…

そこに、「それ」はいた

まっすぐに、由佳里を見つめる、ゆかりが…

 

…コロセ

 

……コロス

 

バツヲ…クダス

 

オマエガ

 

ワタシガ

平澤 由佳里

あぁっ…

希望に満ちた笑顔で、由佳里は

受け入れた

人に優しくしたら、自分が壊れた。

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