昼休み。屋上。
冬弥
司
冬弥
驚いて箸で摘んでいたトマトを落としてしまった。
司
冬弥
司
冬弥
沈黙は長かった。 体感では1分近くに感じたが、 実際は10秒といったところだろうか。
冬弥
司
呆れた顔で冬弥の方を見ると、 少し恥ずかしそうな顔をしていた。 嬉しそうにも見える。
司
冬弥
司
今までにないほど頭が真っ白になった。
冬弥とキスをする。
考えたことがない。
いや、ある訳がない。
自然と距離が近付く。
冬弥がオレの首の後ろに手を回した。
こんなに近くで冬弥の顔を見たのは初めてだ。
ドキドキする。
冬弥
あと数センチ──いや、もうあと1、2センチだ。
抵抗しなければこのままキスをすることになる。
司
冬弥が急に手を離した。 何事かと思った。
冬弥
する前提……。 今の流れはなんだったんだ。
と、心の中で突っ込みつつも、 返事もせずただ従順に冬弥に従う自分がいた。オレは何をしているんだろう。
冬弥は口角を少し上げて優しい笑顔で待っていた。
目を瞑る。
他のことを考えないようにする。 ふにっと柔らかい感覚──これは、
唇じゃない。
冬弥
恐る恐る目を開けたオレをからかうように笑い、人差し指で口を封じられた。
直後、サンドイッチのゴミをまとめて立ち上がる。
冬弥
司
校庭の声がうるさかった。
冬弥
背を向けたまま一度も振り向かずに屋上を出て行ってしまった。
“俺以外には”。 その言葉の前に何か言っただろうか。 それとも校庭の声?
分からない。 何故突然あんなことを聞いてきて、 あんな冗談を言ったのか。
ただ──
司
そう呟いた自分が、一番分からない。
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