生徒会室
朔
好きな席についてくれ
遊
は、はい...
朔
あっはは‼︎そんな緊張しないでくれ
朔
別に取って食おうなんて考えていないからさ
遊
わ、分かりました...
朔
まずは、すまないね。放課後に突然呼び止めてしまって
朔
この後、用事などはないかい?
遊
全然ないです...
朔
そうか、良かった。あ、別にそんなに長い時間話すつもりはないから安心してくれ
朔
では、話を始めよう
朔
私は普段、会長として様々な業務を担当している
朔
あ、副会長や会計、書紀や庶務といった役員もいるから仕事は分担しているぞ?
朔
それで仕事の中に部活動の活動記録を整理するものがあるんだ
朔
詳しくは守秘義務の関係もあり言えないがね
朔
それで最近誕生した部活として君...風祭 遊さんが部長を務めている部活が気になってね
朔
それで声をかけさせてもらったんだ
遊
....
朔
“死生観研究同好会”だね?どうしてこんな部活を作ろうと思ったのかな?
遊
それは...
朔
ちなみに別に尋問をしている訳ではないから、答えたくない質問には無理に答える必要はないよ
遊
いえ、変に疑われるのも嫌なので答えます...
遊
この部活ができたのは同じ学年の女子生徒が、自殺未遂をしたことがきっかけでした
遊
原因はいじめです
遊
それで私ともう1人の部員がそれを解決する
遊
且つ被害生徒が死なないようにサポートするという目的で、この部活を作りました
朔
...ほう
朔
では次に、そのいじめは解決したのかな?
遊
はい、しました
朔
誰が?どのように?
遊
私です。でも方法は秘密です
朔
そうか...
朔
ではあと3つだけ聞きたいことがあるんだが、いいかな?
遊
はい、大丈夫です
朔
その死生観研究同好会は
遊
死研で大丈夫ですよ
朔
そうかい?なら死研は文化祭で何をやるのかな?
遊
私達はメイド研究同好会と合同で、大正浪漫をモチーフにしたメイド喫茶をやる予定です
朔
ほう?メイド研究同好会?聞いたことがない部活だ
遊
部員が1人の非公式の部活です
朔
なるほど、それなら納得だ
朔
しかしメイド喫茶か...なかなか面白そうだな
朔
今、どのくらいの進捗だい?
遊
まだ服装やメニューをどうするか話し合っている段階です
朔
そうか。当日は生徒会が活動している全部活を視察する予定だから楽しみにしているよ
遊
ありがとうございます
朔
次に...少し、変なことを聞いてもいいかな?
遊
何でしょうか?
朔
君は...
朔
朔
死にたいと思ったことはあるかな?
遊
死にたい...ですか...
朔
...すまないね、やっぱり忘れてk
遊
あります
朔
そうか...深く聞いて申し訳ないが、それはどんな時にかな?
遊
今、まさにこの時も...です
朔
それは...私と一緒にいるからかい?
遊
いいえ、違います
遊
元々こんな世界に未練なんてないし、死ねるなら早く死にたいです
朔
では何故、生き続けているんだい?
遊
それは...“約束”があるからです
朔
“約束”...?
遊
死研の副部長の蛇ヶ崎 茜と言うんですが、彼女とした“約束”です
朔
...ちなみに内容を伺っても?
遊
それは...
朔
なるほど...君はそれをしっかり守っているんだね
遊
はい
朔
しかし、気になるんだが...何故その話を私にしてくれたのかな?
朔
普通、“約束”とは誓い合った者同士にしか内容を明かさない筈では?
遊
それは...会長なら“私たちの邪魔”をしないと思ったからです
朔
“邪魔”...か。その理由は?
遊
会長の話は偶に耳に入ってきます
遊
生徒だけではなく教師からの信頼も厚く、この学校の王と呼ぶに相応しい存在だ...と
朔
大袈裟だよ
遊
だから王は民の意見を尊重してくれるのではないか...と思いまして
朔
案外、傍若無人かもしれないよ?
遊
それは話してみて、そんなことはないと確信しました
朔
...へぇ、面白いね君
朔
じゃあ、最後の質問だ
朔
君はこれまでの会話の中で何か嘘をついているかい?
遊
いいえ
朔
本当に?
遊
はい
朔
....
遊
....
朔
そっか、分かった
朔
話はこれで以上だ。色々聞いてしまってすまなかったね
遊
いえいえ、私は楽しかったです
朔
そうかい?まあ、何はともあれ気を付けて家に帰るように。寄り道は厳禁だぞ?
遊
大丈夫ですよ、では失礼します
そう言うと私は 生徒会室を後にした。
朔
死にたいが死ねない...嘘をついていない...
朔
はぁ...どれだけの人間をこれまで見てきたと思っているんだ...
朔
(部活ができた理由...恐らくアレは“嘘”だろう)
朔
(“約束”という“呪縛”に囚われ、嘘をついてまで何かを計画している...)
朔
これは極めて稀な“危険分子”だな