赤い生霊
……
赤い生霊
なんで、そんなに泣いとるん?
残骸
…嗚呼、死神。俺の全てを奪った死神!!
残骸
故郷を、友人を、父さんを、母さんを奪った死神!
残骸
ただ、自らのエゴで俺の全てを奪っておきながら、自らの罪悪感で俺の命を見逃した死神!
残骸
俺はアイツを殺したかった!怨めしかった!俺の何もかもを奪ったアイツを!
残骸
大切なものが何もかもなくなった俺を、ただ「自分の最期を飾るのに相応しい」という自己中心的な理由で殺してくれなかったアイツを!!
赤い生霊
────
残骸
俺はアイツの憎悪を糧にした!糧にするしかなかった!そうして生きてきた!
残骸
あの地獄を生き延びたものたちと協力して復讐の土台を積んできたのだ!
残骸
アイツが沢山の仲間に囲まれ、私にしたことを忘れ去ってのうのうと生きている間に!
残骸
他の追随を許さない未来国家を作り上げた!世界を牛耳る大企業を立ち上げた!
残骸
古代文明を解き明かし、かつての友人たちのソウルを使い破滅の巨人を再現した!
残骸
全て、全て──■■■!アイツに復讐を成し遂げるために!
残骸
…だが
残骸
アイツはこの負の連鎖に終止符を打つといって、本当にそうした。
残骸
俺は…『■■■■■■』は、破滅の巨人が壊れ、海の底へ沈んで尚、死なばもろとも、と。
残骸
だが、そこで俺は母と父の声を聞いた。
残骸
『もういい』と
残骸
それで、確かに俺は救われた。そうして海の藻屑となって眠れると。
残骸
そう、思っていた
赤い生霊
…じゃあ
残骸
全てを奪われたあの子はちゃんと眠れたけれど
残骸
全てを奪おうとした俺は死ぬことを許されなかったようだ
残骸
復讐のために世界を滅ぼそうとした俺は救われたんじゃない
残骸
生きる理由を奪われただけだったんだ
赤い生霊
……
残骸
復讐する理由は消えて、また俺は生き残って。
残骸
この罪を背負って生きろと?もうこれじゃ、償うことすら出来ないのに?
残骸
何もかもを燃やして全部無くなったのに、これ以上何をしろと?
残骸
誰もいない、何もない。そのままこの暗闇のなかを意味もなく彷徨い続けろと?
残骸
それが俺の罰なのか?
残骸
…もう、なにも、わからない
赤い生霊
…せやなあ
赤い生霊
確かに、世界を滅ぼそうとした奴に相応しい罰ではあるのかもしれんな
残骸
……そうか
赤い生霊
やけど、お前のその罪は、一人で抱えていくには重過ぎる
赤い生霊
本来なら、それは仲間と分かち合いながら、向き合っていくべきものや
赤い生霊
そんなものを、たった一人で背負い込んだら潰れるのが当たり前やで
赤い生霊
人生のゴールを否定されて、たった一つの希望も奪われて
赤い生霊
たくさんの人と共に向き合うべき問題をたった一人で背負い込まされて、潰れることすら許されない
赤い生霊
そら、辛いやろなぁ
一つの国を滅ぼした死神は、たくさんの人に囲まれて今日もきっと日の光の中で笑っているのだろう
一つの世界を滅ぼしかけたその男は、たった一人、暗闇の中でもがき苦しみ続けるのだ
……どこだろうが、この世は無常で溢れている。そういうことだ。
けれど、清算できない罪はもはや罪ではない。それはもうただの毒でしかないのだから。
地獄であろうが罪に対する償いが存在する。なのに、その償いすら出来ないなんてのはあまりにも惨すぎる。
赤い生霊
なあ。あんたは償いたいんか?
残骸
……何も分からないが、償う方法があるというなら。俺は、そうしたい
赤い生霊
そうか。……一つだけなら、あるで
残骸
どうか教えてくれ。何だってする
右も左も分からない。故に縋る。何でもするとまで言うほどに。
しかし、彼はきっと本気で何でもしてしまうに違いない。
赤い生霊
……そうか
正直気は進まない。けれど、こうしないときっと彼は救われない。
あまりにもぼろぼろで、今にも壊れてしまいそうなそれを、僕は放っておけるほど心が無いわけでもないので。
赤い生霊
俺の鎌で、お前を死刑にする。……現状はそれしかないやろ
残骸
死刑。……死刑、か
残骸
ああ、きっと、それがいい
それがあまりにも綺麗で。でもその理由が理由だから、心が痛い。
残骸
それじゃあ、早速だが執行を頼む。一想いでも、追い詰めるようにでも、私はどちらでも構わない。
赤い生霊
一思いにやるに決まっとる。やからあんまり動くなよ、急所外したら苦しむで。
残骸
……こんな場所で出会えたのはどういう奇跡なんだろう。どうか最期に、貴方の名前を聞かせてくれないか?
赤い生霊
俺の名前?
赤い生霊
トントンや
残骸
……そうか、トントンというのか、貴方は
■■■■■■
最期にあなたに出逢えて、本当によかった