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「名前の知らない誰かへ」
「貴方が私を愛する時」
「私は貴方を壊してしまう」
「それでも貴方は私を呼んで」
「静かに消えていってしまう。」
暗い暗い森の奥
1本の道に従って その先を進んでいくと
そこには、白く瞬い
歌姫が居る。
という噂が 僕の住んでいる町中に流れ渡った。
皆は「嘘だ。」と
口を揃えて貫き通してくるけど
僕はその歌姫の存在を知っている。
彼女は僕のことを知らないけど
僕は彼女と出会った瞬間身体中を駆け巡った
あの感覚が忘れられない。
今も、ずっとずっと
辺りの光はもうすぐ沈み
暗くなる直前に、僕は彼女を見た。
肌には棘(とげ)のような痛々しいものに囲まれ 行く道も帰る道も分からない状態だった。
どこに行っても棘だらけで 自分の隣にいるのは痛いの感情だけだ。
突然耳に何かが通り過ぎた
とても綺麗な形で僕を見ていった気がした
その形をなぞって行くように
体が進み続けて立ち止まらない。
この世のものとは思えないほど 美しい女の子がいた。 ───────────
全ての毛先が透き通るような白で 目は哀しさを隠しているような
群青色で囲んだ中に真っ黒い色が見えた。
綺麗な形の招待は彼女の歌声だった
特別美しいってわけでもないけど どこか、特別に綺麗だ
彼女の歌声に惹かれるまま
彼女をずっと見つめていた。
目に映っていた横顔が 正面向きに現れた。
彼女の声は透明感で埋め尽くされていて
宝石のようなものだった。
彼女の目は何よりも輝いていた。
きっとこれからも誰よりも光ると そう思っていたのに。
彼女をその日から見かけたことはなかった。
静かな森の中で
大きくも小さくもないのに
僕の耳に入り込んで
簡単に姿を消してしまって
でも、その一瞬で心が奪われて。
僕はもう一度彼女に会いたい
そう思っても叶わない。