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何かが壊れる音がする
穏やかなあの日が黒になる
このままでよかった
変わらずにいたかった
だけれど
それは
気づかぬ内に
ミシミシと静かに軋んで
砕けて
呆気なく
崩れてゆく───
【Re:んネ 第9話 後編】
【ふたり】
流血表現が幾つかございます
苦手な方はご注意ください
パ キ ッ
ズ ル ッ……
ズ ル ズ ル ッ
いっ…
シズマ
シズマ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
シズマ
ハルナ
シズマ
シズマ
シズマ
ド ン ッッ !!!!!
ド ン ッ ッッ !!!!!!!!!!
シズマ
シズマ
キンとした強い耳鳴りの隙間から
シズマさんの声と
数回の激しい銃声が聞こえた
シズマ
意識が少しずつ 確かになっていくと
腹を向け 煙を上げた車から
引きずり出されていることに 気がつく
周囲には硝子の破片と
砕けた車のパーツが散乱していて
どれだけの速度で横転したかを 物語っていた
ハルナ
ハルナ
必死になって 立ち上がろうにも
5センチ程のガラスが刺さった
嘘のように血だらけの左脚には
全く力が入らない
へたりながら後ろを見ると
10mほど離れたところから
リンが 薄気味悪い笑みを浮かべて
身体をユラユラと 小さく動かしながら
ゆっくりと近付いてきていた
シズマ
シズマ
ハルナ
ハルナ
シズマ
シズマ
誰もいない 狭い道路の真ん中を
一直線に突っ走る
シズマ
大きく揺れるシズマさんの 背中の向こう側から
苦しそうな吐息が聞こえてきた
ハルナ
シズマ
広い間隔の寂しい電灯が
私たちの頭上を通り過ぎると
バキ ン ッと音を立てて消えていく
シズマ
シズマ
シズマ
『←睡蓮ダムまで』
『およそ250メートル』
シズマ
シズマ
ドンッ!!!!!!
シズマさんが 分厚い南京錠を撃ち壊して
鉄柵を無理矢理こじ開けた
ハルナ
ハルナ
ハルナ
シズマ
シズマ
スマホのライトを付けて 私に持たせると
そのままタッタッタッ…と ダムの天端を奥まで進んでいく
シズマ
シズマ
シズマ
ハルナ
シズマ
シズマ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
シズマ
シズマ
シズマ
ハルナ
ハルナ
シズマ
ハルナ
シズマ
シズマ
シズマ
ハルナ
ハルナ
シズマ
シズマ
シズマ
ハルナ
シズマ
シズマ
ハルナ
シズマ
シズマ
シズマ
ハルナ
ハルナ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
「ねぇ」
シズマ
リン
リン
シズマ
シズマ
ハルナ
ハルナ
ポケットの中の鈴の御守りが
何故かカタカタと 自ら震えているように感じる
それに加えて じんわりとしながらも
すごく熱を持っているような
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
シズマ
リン
リン
リン
シズマ
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
シズマ
シズマ
シズマ
リン
リン
リン
リン
シズマ
リン
リン
ハルナ
ハルナ
ハルナ
リン
リン
グシャクシャ…
ハルナ
さっきまでは 日記帳の一部だった物が
紙吹雪となって夜空に消えていく
リン
リン
リン
シズマ
リン
リン
リン
リン
リン
リン
ハルナ
リン
リン
リン
ハルナ
ハルナ
シズマ
ハルナ
シズマ
シズマ
シズマ
リン
リン
シズマ
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
シズマ
シズマ
シズマ
リン
リン
リン
シズマ
シズマ
ハルナ
シズマ
シズマ
ハルナ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマさんは 両手でしっかり銃を構えると
ゆっくりと
歩み出る
目の前の男は 銃口を真っ直ぐに保ち
あたしに近付いてきた
鋭い目付き
抑えた呼吸
前頭部から滴る鮮やかな血
そんな殺意に満ちた表情で
〝成仏屋〟とは
よく言えたものね
ふふっ…
あたしはその男に
俺に向かって
異常な速さのガラス片が
弾丸のように飛んでくる
シズマさんはそれを ギリギリかわし避けたけど
軽くかすめた右頬から
真っ赤なしずくが舞い散った
それでも
構うことなく 絶え間なく
慎重に進みながら 3発の弾丸をリンに撃ち込んでいく
ドンッッ!!!
ドンッッッ!!!!
ドンッッッッッッ!!!!!
だけど
リン
リン
シズマ
シズマ
弾が当たる瞬間にフッ…と消え
また少しズレたところから 姿を現す
そして そう撃ち込むほどに
少しずつ
俺に距離を詰めてくる
ドンッッドンッッッ!!!!
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
〝残り4発〟
私が風下にいるせいか
花火の時のような
火薬の匂いが鼻をつく
ハルナ
ハルナ
リンに向かって 弾が放たれる度に
その閃光で一瞬照らされる シズマさんの背中が
だんだんと
歪んでいくように見えた
それでも、私には、
何も出来ない
何も出来ないから
ハルナ
ハルナ
シズマさんの後ろ姿を 必死に目で追いながら
ただ〝何か〟に ひたすら祈ることしか出来なかった
でも
私のそんな不安を 打ち壊すかのように
「リンッッ!!!!!」
シズマさんが叫んだ
ふと、
その右手を見ると
卵のような形をした ガラス玉が握られている
俺はそのまま
2発続けて撃ち込んで
リン
リン
リンを誘導する
シズマ
ブンッ!!!
シズマさんの右手から
あのガラス玉が飛んで
俺はそれを
撃ち抜いた
シズマさんが放った弾丸で ガラス玉がパキンッと弾けると
中から透明な液体が飛散して
リンの顔から左肩にかけて 勢いよく降りかかった
リン
リン
リン
リン
リン
リン
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
リンの身体から シュウシュウと煙が上がり
両手で顔を押さえ 身をねじりながら悶え苦しむ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
カチャ
お゙前もッ
シズマ
リン
ハルナ
ハルナ
リンが
シズマさんに突っ込んでいく
両手に
一本の長いガラス片を携えて
ドスッ…
シズマ
シズマ
俺の
脇腹に何かが
刺さっている
シズマ
薄汚れた白シャツが
そこから赤く
シズマ
赤く
シズマ
染まっていく
シズマ
シズマ
吐血したシズマさんは 膝から崩れ落ちると
前屈みになって 真っ赤な傷口を押さえながら
苦しそうな表情で リンを睨んだ
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リンは 後ろにタジタジと後退しながら
うっとりとした表情で 自身の両手を見つめる
ハルナ
ハルナ
身体が自然と
シズマさんに向かって 駆け出していた
シズマ
シズマ
「あぁ」
「そうだった」
リン
リン
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
リン
リン
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
リン
リン
リン
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
リン
リン
リン
リン
リン
目の前から
リンが消えた
ハルナ
そして背後に気配を感じた瞬間
私の頭の後ろから リンの両手が伸びてきて
こめかみを手のひらで 強く押さえ付けられた
ハルナ
何かが
何かが何かが何かが何かが何かが
頭の中に流れ込んでくる
ハルナ
ハルナ
ハルナ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
口元の血を拭って
拳銃を握るが
手に上手く力が入らない
銃口がブレてる
目が霞む
ハルナに当たるだろ
そもそも 弾は入ってたか
あと何発か
コイツを
倒せるか
…あぁ
無駄な思考が
多過ぎる
ハルナ
リンの両手が離れると
ハルナが前に向かって たじろぐ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
シズマ
ハルナは
今にも泣き出しそうな表情で
俺に、静かに、顔を向けた
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
リン
リン
リン
リン
ハルナ
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
ハルナ
ハルナ
あたしが1歩前に進むたび
ハルナも1歩ずつ後退していく
ハルナ
ハルナ
ここは
ダムの天端
このお話の ラストシーンには
丁度いいじゃない
ハルナ
ハルナ
ハルナ
背中が
金属で出来た 落下防止用の手すりに当たる
リン
リン
リンはスっと右手を出すと
果物を握り潰すかのように
ゆっくりその手のひらを 閉じていく
と、同時に
手すりと手すり子が 1本ずつねじ切れて
壊れていった
ガキン ッッ
リン
リン
リン
ハルナ
リン
リン
リン
とんっ
ハルナ
バランスの崩れた身体が
浮遊感に
襲われる
コンクリートから
足が離れていく
ハルナ
私は
そのまま底に
落ちて
〝走れ〟
シズマ
シズマ
ハルナ
ハルナ
シズマさんの右手が
私の左手を
繋いでくれた
シズマ
シズマ
ハルナ
リン
リン
リン
リン
リン
シズマ
ハルナ
リン
リン
カランッ
リン
リン
リンがさっきねじ切った
鉄の破片を手に持って
俺の前腕に 突き立てる素振りをする
リン
リン
グッ…
シズマ
一瞬、シズマさんの力が抜けて
身体が数センチ 下にずり落ちた
ハルナ
脚がバタバタ泳いでも
支えひとつ かすらない
右からびゅうと 強く風が吹けば
一緒にこの身も流されていく
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
リン
リン
ググググッッ…
シズマ
シズマさんの プルプルと震えた右腕から
真っ赤な血が枝分かれて
伝ってくる
ハルナ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
1本
2本、3本……と、
血が歪な線を引く
いつしか線は束なって
2人の手のひらに 割って入ってきた
ハルナ
ハルナ
血が潤滑油のようになって
だんだんとシズマさんの手から
ズルズルと離されていく
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
〝シズマさん〟
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
シズマ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
シズマ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
スルッ…
シズマ
リン
ハルナ
こういう時って
走馬灯とか
あるものだと思ってた
お父さんとかお母さんの顔が 映るのかなって
少し期待してたんだけど
全然映らないしさ
それに最後が
全然似合わない
シズマさんの そんな情けない顔だなんて
ちょっと
ズルいよ
ばか
バシ ャン ッッ……
シズマ
シズマ
リン
リン
シズマ
シズマ
リン
リン
シズマ
リン
シズマ
リン
リン
リン
カチャ
リン
リン
リン
シズマ
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
シズマ
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
リン
ドンッ
何かがが壊れる
音がした
【Re:んネ 第9話 後編】
【終】
【to be continued....】