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美里

ごめんね、雄也

雄也

美里

私、もう行かなきゃ

雄也

待って

雄也

待って!!

美里

ごめんね

ピピピッピピピッ

雄也

……ん

雄也

……夢、か

美里が死んでから2週間。

毎晩毎晩

こんな夢を見る。

美里

もう、行かなきゃ

そう言っていつも夢の中で

美里は俺の前から消えるのだ。

雄也

……夢でくらい、一緒にいろよ

そう言いながら俺は

ダブルベッドから起き上がった。

もちろん

隣には誰もいない。

しんとした部屋の中で1人

仕事へ行く準備を始める。

新しいスーツを着ようと

クローゼットに手を伸ばす。

取手に手をかけたところで

俺は動きを止めた。

クローゼットの中には

美里の私物がたくさん入っているのだ。

まだ心の傷が癒えていない俺には

それを見ることさえ辛かった。

雄也

……仕方ない、か

そう言って俺は

結局クローゼットを開けずに

洗濯したばかりの

まだ少し湿っぽいスーツを着て

会社へと向かった。

謙介

お、雄也

雄也

……ああ

謙介

どうだ?調子は

雄也

見ての通りだ

謙介

……そっか、そうだよな

謙介

悪い

雄也

いや、いいよ

雄也

気にかけてくれてありがとう

謙介

……疲れてるだろ

同僚の謙介。

昔からの付き合いなので

俺の変化にはすぐに気がつく。

雄也

……

謙介

……疲れないわけないか

謙介

でも、目の下のクマが尋常じゃないぞ

謙介

何かあったか?

雄也

……少し、良いか?

謙介

ああ

俺は

これまでの夢の話を謙介に説明した。

謙介

ふーん……

謙介

「もう、行かなきゃ」

謙介

って言ってるのに、毎晩夢に出てくるのか

雄也

そうなんだ

雄也

ひどい夢だろ

謙介

まぁな

謙介

……もしかしたら、行けない理由があるんじゃないか?

雄也

謙介

だって矛盾してるだろ

謙介

「行かなきゃ」

謙介

それで毎晩夢に出てくるんだろ?

雄也

……確かに

謙介

もしかしたら、この世に何か未練があるのかも

謙介

伝えたいことが手紙に書いてあったりとかは?

謙介

お前の奥さん、病死なんだから

謙介

言い方悪いけど

謙介

家に遺書みたいなのが無いとも言えない

雄也

でも、そんなのどこにも……

雄也

……あ

雄也

クローゼット

謙介

その中かもな

謙介

辛いのはわかるけど

謙介

開けてみたらどうだ?

謙介

いづれ開けなきゃならないんだし

雄也

そうするよ

雄也

ありがとう

そして俺は

家に帰ると

若干戸惑いながらも

クローゼットを開けた。

雄也

……あ

雄也

マジであった

『雄也へ』

『この手紙を読んでいる時』

『私は死んでいるでしょう』

『病気になってから、貴方は沢山のサポートをしてくれましたね』

『抗がん剤で髪が抜けても』

『笑いながら可愛いバンダナを付けてくれて』

『とても嬉しかった』

『ありがとう』

『雄也』

『死んでごめんね』

『もっと貴方と一緒に生きたかった』

『貴方は私の人生の中で』

『1番大切な人です』

『……じゃあ』

『もう、逝かなきゃ』

『雄也』

『幸せになってね』

『美里より』

雄也

……美里

雄也

あ、りがと……

雄也

ありがとう

雄也

ごめん

雄也

ありがとう

雄也

大好きだよ

雄也

愛してるよ

雄也

ありがとう

雄也

ありがとう

雄也

俺、幸せになるから

雄也

絶対なるから

雄也

だから

雄也

天国から見ててくれよ?

雄也

……愛してる

その日から二度と

俺の夢に美里は出てこなかった。

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