真っ黒なこの世界で
真っ白な雪がただ降り続けている
まるで
僕らの心を冷まそうとするように
雪は止もうとはせずに
ただただ僕らの足元を純白に染めていく
視界には誰が作ったかもわからない溶けかけの雪だるま
オレンジ色の灯火の上には うっすらオレンジ色に染った雪が積もっている
僕らが雪を踏んだときの足音
君が寒そうに鼻をすする音
それ以外に音なんて聞こえない
2人だけの世界かと錯覚してしまいそうだ
僕らはそんな夜の街を ゆっくり肩を揃えて歩いていた
「 寒いね 」
君が雪を両手のひらに乗せながら言う
僕は君の髪にかかった小さな雪たちを払いながら言った
「 そうだね 」
君は顔を赤らめて下を向く
そこに追い討ちをかけるように 僕は君の手を握った
「「あったかい」」
僕の低い声と 君の少し高い声が重なる
僕らは顔を見合わせて笑う
君は幼い子のような無邪気な笑顔を見せた
「 ..好きだなぁ、 」
しまった
声に出すつもりなんて無かったのに
僕の手を握る君の手の脈が
少し速くなったのが分かる
僕は小さく深呼吸をしてから言った
「僕の事、好き?」
返ってくる言葉はだいたい分かってた
僕らの気持ちが同じということも
君が僕を好きでいてくれてることも
全部わかっててそう聞いた
君から
"好き"の2文字が聞きたかったから
君は少し躊躇って
いつもより小さな声で言った
「...好きじゃない」
...え?
心臓が一瞬止まった気がした
これが
失恋ってやつなのか?
ドクッドクッドクッ
僕の心臓の音が
君にも聞こえてしまいそう
予想外の返事に なんと返そうか
僕は必死で考えた
僕が1番恥をかかない返事はなんだろうか
僕は顔を下に向けた
下に向けるつもりは無かった
でも、気づいたらこうしてた
弱い顔を見せたくなかったからなのかもしれない
俯いたまま
目に涙が溜まるのが分かった
視界がぼやけて
さっきまで見えた 雪についた小さな汚れも
寒い中必死で生きている小さな虫も
滲んでよく見えない
君は僕の手を離した
あぁ、
もう君を想っていてはダメなんだな
すると君は
僕の肩を持って体の向きを変えた
そして小さく息を吸って
「好きじゃない」
「愛してるよ」
君は真っ直ぐな目で僕を見て 優しく微笑んだ
僕の目から
溜めきれなくなった涙が零れた
ほっとしたからなのか 感動したからなのか
自分でもよく分からない
「僕も、愛してる」
かっこよく返そうと思ったのに
どうしても声が震えてしまう
君は僕の手を握り直して
また ゆっくり歩き出した
いつの間にか雪は止んでいた
さっきまで降っていた雪が無くなると
なんだろう
時間が止まっているように感じる
やっぱり僕は 君は好きじゃない
愛してる
白一色に染まったこの街で
君の言葉が 僕の心を温めた
コメント
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followするっ
映画化してもいいレベル(?) これ、すき、
めっちゃ感動で好き