あの場を離れ、若井の家まで連れられている間、あんな事があったのにも関わらず、Sub dropになり掛けてた割には、以外と落ち着いていた気がする。 それは、あまりにも非現実的な事が起こりすぎて、どこか他人事のように思っていたからなのかもしれない。 それでも、口の中に残る感覚や臭いがふと先程の現実を思い出させ、ぼくはその度に若井にしがみつき、若井の体温や匂いで自分自身を落ち着かせていた。 乗り込んだタクシーの運転手さんには怪訝な顔をされたが、若井は家に着くまでぼくの事を抱きしめてくれていて、身体を摩ってくれたり、頭を撫でてくれたりして、ずっとぼくの事を気遣ってくれていて、その優しさに涙が出そうになった。
若井の家に着くと、ぼくは直ぐに洗面所に行き、水で口の中を濯いだ。 何度も何度も口に水を含んでは吐き出すのを繰り返したが、口の中の気持ち悪さは消える事はなかった。
若井
ぼくのその様子を見てた若井は、ぼくを後ろから抱きしめ謝罪の言葉を口にした。
大森
ぼくがそう言って、出来るだけ平気な顔をして、鏡越しに若井を見ると、苦しそうな顔をした若井と目が合った。
若井
そんな顔ってどんな顔だよ。 失礼だなと思い、鏡の中の自分の顔を確認したら、確かにそう言いたくなるくらい酷い顔をしたぼくが居た。
大森
鏡の中の僕が僕を自嘲する。
若井
そんなぼくを見ながら再度謝る若井に、ぼくは迷いながらも口を開いた。
大森
本当は何となく分かっている。 若井が何を謝っているのか。
もう何年の付き合いだと思ってるんだよ。 若井がPlay中、またに見せる苦しそうな顔にぼくが気付いてないとでも思ってた?
若井がぼくとパートナーになった事を後悔している事は分かってたよ。 それでもこの関係を続けてたのはぼくの弱さからだ。 まあ、その結果自分で自分の首を絞めてたんだけど、どんなに苦しくても若井を手離す事は出来なかった。
でも、そろそろ若井を解放させてあげる時なのかもしれない。
そうじゃないと、きっと、二人とも駄目になってしまうから。
だから敢えて聞きたくない答えを聞く為に、ぼくは若井に聞き返した。 自分からはこの関係を終わらせる事は出来ないから。
若井
若井
ぼくの目から1粒だけ涙が零れた。
分かっていたのに、やっぱりキツいな。
こういう時、泣き叫ぶ事が出来たらどんなに楽だろう。 今までの事全部ってなんだよ!って。 間違いって、どういう事だよ!って。 でも、ぼくにはそんな事出来ないから...
大森
強がるしか出来ないぼくを許して欲しい。
これでもう終わり。 大丈夫、たかだか2ヶ月だけの関係だ。 若井の優しさも、温もりも、きっと忘れる事が出来るから...
コメント
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目から大量の水が…(;´༎ຶД༎ຶ`)