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【プロローグ:2度目の地獄】
甚爾
五条悟の紫の光に焼かれ、今度こそ終わったはずだった。
だが、次に甚爾が目を開けた時、視界に広がっていたのは見覚えのある、そして反吐が出るほど忌々しい『禪院家』の和室の天井だった。
甚爾
赤子の体。思うように動かない手足。 最初は夢かと思った。
だが、数年経って理解する。
ここは前世と同じ場所でありながら、決定的に違う世界。
ここには『呪霊』も『呪力』も存在しない。代わりに、誰もが生まれながらに『個性』という超能力を持つ。
そして、甚爾の運命は、この世界でも変わらなかった。
甚爾
5歳。個性発動時期。
検査の結果、甚爾の体内には『個性因子』が欠片も存在しなかった。
『呪力ゼロ』から『個性ゼロ』へ。肩書きが変わっただけで、周囲の態度は驚くほどの前世のトレースだった。
???
???
日々、従兄弟や親戚たちから浴びせられる罵倒と、個性を利用した「教育」という名の暴力。
炎で焼かれ、風で叩きつけられ、氷で凍らされる。
小さな甚爾の体は、常に痣と傷で覆われていた。
ある日の夕暮れ。
家の裏庭で、年上の親戚たちが笑いながら甚爾をいたぶっていた。
禪院家の親戚
和室の冷たい板間に転がされている。 体が熱い。
熱を出しているのではない。 さっきまで受けていた親戚による『個性発火』の余韻だ。
幼い手足は痣だらけで、ボロ衣の様な服が、焼けた皮膚に張り付いて剥がれない。
甚爾
咳き込むと、口から鉄の味で溢れた。
前世では、曲がりなりにも「呪具」を扱えば殺し屋として頂点に立てた。
だが今の自分は、まだ満足に箸も持てない子供だ。
かつて五条悟と渡り合った記憶があるだけに、個性という『異能』を持った大人たちに、無力に、赤子同然に殺されかける現実が、何よりも反吐が出る。
禪院家の親戚
禪院家の親戚
禪院家の親戚
禪院家の親戚
禪院家の親戚
禪院家の親戚
女達の笑い声が頭上を過ぎる。
指先に力を込めようとしたが、骨まで響く様な痛みがそれを許さない。
禪院家において、個性がないことは「人ではない」ことと同義だった。
食事は腐りかけた残食。 寝所は窓のない、埃のこもった倉庫 服も、言葉も、温もりも、
この世界の甚爾には何一つ与えられない。
甚爾
夜、一人っきりの暗闇の中で、甚爾は自分の震える手を握り絞めた。
前世で見た青空、過ごしてきた日々
それが今の自分を嘲笑っているように感じる。
甚爾
涙は出なかった。
代わりに、胃の奥からどす黒い怒りがせり上がってくる。
だが、その怒りをぶつける先となる筋肉も、まだこの体には備わっていない。
ある夜、甚爾は禪院家の「訓練施設」で、自分を焼いた男が個性を使って華麗に岩を砕くのを見せつけられた。
禪院家の親戚
禪院家の親戚
禪院家の親戚
男が放った強風が、甚爾を壁まで吹き飛ばす。
後頭部を打ち、視界が真っ赤に染まる。
甚爾
意識が遠のく中、甚爾は自分の血の匂いを嗅いだ。
その瞬間、記憶の底にある「天与呪縛」の感覚が、微かに、だが確実に響いた。
個性がねぇから、何だ。
呪力がねぇから、何だ。
俺の魂は、この程度で腐り落ちるほど安かねぇんだよ。
意識を失う直前、甚爾は初めて、自分を虐げる大人を「獲物」として睨みつけた。
その瞳の冷たさに、勝ち誇っていたはずの男が、一瞬だけ背筋を凍らせたことを、甚爾だけは知っていた。