通り魔

ガタンゴトン ガタンゴトン

A県B区で通り魔が出ており 複数のけが人が…

次は〜○○駅〜 ○○駅〜

プスー

3人がいっせいに目線を父に向けた。

解説

幸い、彼の心配に反して、家族は全員無事

はぁ、なんだよ。全く 心配して損したよ

そう言ってもいい場面なのに、彼の口から出たのは

はぁ、なんだよ。全くもう、 …最悪じゃないか。

最悪？一体、何が最悪なの？

ヒントは3人という数。

妻、大学生の長男、啓太 高校生の次女、咲菜 これで3人。

でも、次女がいるのであれば、とうぜん長女も存在するよね？

つまり彼には4人の家族がいる。

だけど、リビングにいたのは3人。

じゃあ長女は事件の夜に一体どこに行ってしまったの？

まさか、通り魔に襲われて…？

いいえ。 だって語り手は

家族に事件の被害者なんていなくて、全員けが1つしていなかったのだ。

って言ってるもの。

被害者はいない。 でも、最悪。

残された可能性はひとつ。

つまり、長女は、事件の被害者ではなく ………事件の犯人だった。

そう考えれば、つじつまが合うね。

あの時、語り手がリビングに入る前に家族がみていたものはテレビ。

そして、リビングに入った語り手は、その場に長女がいないにも関わらず、すぐに

家族は全員無事だ

とわかった。

その時、家族がみていた番組は当然、通り魔事件のニュースだったに違いない。

きっと語り手と家族は見てしまったの。

画面の中で、おそろしい犯行におよぶ娘の姿を…

父である語り手が最悪じゃないかともらしたのも、奥さんがたすけてと返したものも、当然の事だよね。