春。 新しい季節。
レオ
体育館の入口横には、 バレー部の面々が並んでいた。 腕を回したり、足を伸ばしたり、 思い思いに身体を暖める。
黒尾
レオ
新入生
新入生
研磨
レオ
研磨
レオ
どこか緊張した面持ちを見せるのは 真新しい体操服。 その前にはいつもの練習着に身を包んだ 上級生たちが胸を張っている。
いや、張っていない者もいるけれど。
新入生たちの目に先輩たちは どう映っているだろうか。
黒尾
黒尾
黒尾
レオ
「行くぞー」と黒尾が声を張り上げる。 自然と並び出す先輩たちに習って、 新入生たちも不格好な隊列を組んだ。
最後尾にレオは当たり前の顔して並ぶ。
新入生
レオ
新入生
新入生が違和感を払拭できぬまま、 列は黒尾を先頭に進み出す。 深く聞くほどでもなかったのか、 先輩に対する遠慮のせいか、 彼はそれ以上声を掛けてくることはなく、まっすぐ前を向いて走り出した。
カラリとした晴天。 呑気な雲がゆっくりと流れていく。
レオ
誰にともなく呟かれた言葉は 風と共に消えていく。
黒尾
黒尾
黒尾
人がほとんど通らない旧階段。 いつからの伝統なのか、 音駒バレー部の活動は この階段ダッシュから始まる。
並んだ部員の横で黒尾が手を叩けば、 先頭の2人が階段を駆け出した。
黒尾
パンッと手を叩く。
黒尾
全力で登って、 息を整えながら降りてくる。
黒尾
海
夜久
慣れた上級生たちは降りて来ながら 声を掛けたり、掛けなかったり。
登る側は無言で登る。
黒尾を除いた部員の数は、 丁度偶数だったらしい。
並んでいた全員を送り出し、 あと登っていない部員は黒尾のみ。
黒尾
レオ
待ってましたと言わんばかりに、 レオは黒尾の隣に並ぶ。
それを見た上級生たちは おっと少しだけ沸き立った。
海
山本
レオ
研磨
2年部員
黒尾
何も知らない新入生たちを置き去りに、 上級生たちはやいのやいのと 野次を飛ばす。
夜久
パンッ!
夜久が手を叩いた音を合図に 2人は走り出した。
体格差のある背中が遠ざかっていく。 どちらもほぼ同じペース。 勝敗の分からない勝負に、 ギャラリーがまた少し盛り上がる。
新入生
夜久
新入生
夜久
新入生
夜久
新入生
夜久
新入生
夜久
新入生
夜久
夜久
夜久が視線を向けたタイミングを 見越していたかのように、
レオ
黒尾
階段のてっぺんから声が降ってくる。
山本
2年部員
海
夜久
夜久が手を叩けば、 また部員たちは階段を登り出す。
これがいつも通りの音駒バレー部の風景。
体育館に戻れば本格的に練習が始まる。
黒尾
夜久
山本
活発な部員たち。 それに負けないくらい、あっちこっちへと 動き回るポニーテール。
必要な時には、 すでにもう道具が準備されている。
レオ
レオ
レオ
レオ
セカセカセカセカ 止まったら死ぬんじゃないかと思うくらい 常に動きっぱなし。
声変わりを終えた男子の声の中に 女子の声はより際立つ。 その上、そもそも声がデカイものだから 意識しなくともその声は耳に入った。
猫又監督
レオ
練習も終盤。 最後の休憩が終われば 試合形式の練習だ。
小学生が外で絵を描く時のような ドデカいバインダーを首にかけたレオは、 猫又監督と話しながら ノートにペンを走らせる。
海
新入生
海
新入生
海
少し迷った後、海の言葉に背中を押され 新入生の1人はレオへ近づいていく。
近付くと、バインダーの上には 今広げているノート以外にもいくつか ノートが乗っていることに気付いた。
新入生
レオ
新入生
レオ
はい、とレオが 開いているのとは別のノートを差し出す。
新入生
開けば、ビッシリと黒に覆われていた。 対戦のメンバー、得点した人、 得点の種類、ミスの数。 全てではないが、 その時の状況まで簡単に書いてある。
新入生
思わず声が漏れた。 毎日だ。公式試合じゃない。 練習の最後に行われる試合、その全てが データとして記されている。
得点の状況が書かれているということは、 選手や監督視点の知識があるということ。
新入生
レオ
新入生
レオ
ふと、広げられたノートが目に入る。 対戦メンバーの横に、メモらしきもの。
緑6 灰羽 緑7 ○○ 赤6 犬岡 赤7 芝山 ………
新入生全員の名前と番号。 それが休憩中に配られたビブスの番号であることは馬鹿でも分かる。
この人は、当たり前に 新入生のデータも残そうとしているのか。
この人は、そういう人なのか。
黒尾
黒尾の声に顔を上げる。 知らず知らずの内に、 新入生の彼は6と書かれた赤いビブスを 握り締めていた。
レオ
チラとノートに視線をやってから、 レオがそう声を掛ける。
芝山
ニッと笑ったレオに見送られ、 芝山は他の部員の輪へと戻って行った。
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