狂気と愛の結晶と

体温計を見て、溜め息をつく。

ここ数日、原因不明の体調不良が続いている。

微熱と嘔吐(おうと)。あとは胸がはって痛かったり、疲れやすく、気付けばうとうととしている。

だからといって、病院に行くほどではない。

俺は、入力作業を続ける為、パソコンに向き直る。

俺の返答を聞くなり、南雲の兄貴は、椅子のレバーを引いて、椅子を回転させる。

俺の手を引き、椅子から立たそうとしてくる。

パソコンの横には、入力途中の書類が残っている。

この程度の体調不良で、仕事を放棄(ほうき)している場合ではない。

軽微(けいび)な体調不良なので、病院には行かなくても大丈夫だと、申し開きするつもりだったのに、先を読んだ南雲の兄貴が、速水に俺の仕事を引き継ぐように指示を出してしまった。

俺の性格を読んで、南雲の兄貴は先手(せんて)、先手をうってくる。

お陰で、俺の仕事はなくなってしまった。仕事がない以上、事務所に残る必要性はない。

カルテ片手に、難しい顔をした氷室と対面する。

余りにも芳(かんば)しくない氷室の表情に、もしかして大病(たいびょう)でも発見されたのかと不安になってくる。

氷室の話について行けず、俺は聞き返す。

南雲の兄貴から、求めれば応じていたが、一回も生ではしていない。

予想外の妊娠に戸惑いを隠せないでいる俺に、氷室は医者として話を続ける。

南雲の兄貴は、氷室の話を遮る。

待ち合い室で待っている筈の南雲が、診察室の扉の前に立っていた。

どうしょう、話聞かれていた。組にとって大事な時期に、兄貴の子を妊娠したなんて詫びればいいのか。

それに赤ちゃんが産まれてきたとして、俺に育てられるのか？

赤ちゃんを抱く、自分の姿さえ想像すらつかないというのに。

それに今、大きな抗争を控えている。尚更、組を抜ける訳にはいかない。あ！そうだ。なかった事にすればいい。そうすれば、組にも兄貴にも迷惑をかけないで済む。

俺の頭に、ぽんっと温かい手が置かれる。

まだ膨らんでない俺のお腹に、南雲の兄貴は頬を寄せ、愛おしそうに話しかける。

氷室から促され、診察室から出る為に、椅子から立ち上がろうとする俺の前に手が差し出される。

まさか、妊娠しているとは思わなかった。

あれほど不安だったのに、南雲の兄貴となら、こんな俺でも立派な母親になれる気がするのだから不思議なものだ。

俺達の元に来てくれてありがとうという気持ちを込めて。

俺は南雲の兄貴の子が宿る腹を優しく撫でた。

おわり

あとがき たまに、ヤンデレ南雲ニキ書きたくなる。南雲ニキは計算高そうなイメージある。え？あまり病んでないって？いやいや、おまけ見たら分かる分かる。マジでこんな奴いたら、恐怖だなって感じで書いてみた。 こっから先はどうでもいい話。 ユニバ疲れた(´ρ`)7時～21時30分遊び尽くしたから、翌日はへばってた。日焼けしてヒリヒリするし、足も疲れたけど、混雑してる割には11は乗れたから良かった。ドラえもんの120分待ちが、一番しんどい。 でも、やっぱり遊園地行くなら絶叫系乗る奴と行くに限る(о´∀`о)因みに、手は離して乗る方。 絶叫乗れん奴とも行くけど、お互い気を使うからな。今はないけど、絶叫乗れん言うて、子供向けのスヌーピーコースター乗ったら、ちーんやったのに、ジェラッシックライドは平気なんは意味分からん。ジェットコースターは、一番前は後続よりも初速スピード遅いし、最初にブレーキ掛かるから、怖いなら一番前に乗りなって言うけど、頑なに真ん中乗るんよな。中間から後続はスピード乗ってるから、そっちの方が怖いと思うんやけどな。

おまけ

華太と同棲する為に、部屋を片付ける。

片付けていると、一冊のノートが床に落ちる。

南雲はノートを拾い上げ、パラパラと中身を確認する。

ノートには、華太の基礎体温、生理周期、排卵日など、事細かく記入されていた。

そう、何を隠そう、華太の妊娠は偶然じゃない。南雲による計画的な妊娠だ。

南雲は華太の体調不良には、早い段階で気づいており、だから、あの日、愛車のバイクではなく、揺れの少ない車を選んだ。そして、氷室には、赤ちゃんに影響の出るX検査ではなく、それとなくエコー検査をするように、と裏で色々と手を回していたのだ。

そう言うと南雲は、ノートを乱雑にゴミ袋に入れ、証拠隠滅(いんめつ)をはかるのだった。

おわり