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狂気、愛、そして…

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狂気、愛、そして…

第1話 - 狂気、愛、そして…

51

2025年06月21日

#irxs

#凛とした音♪

#nmmn

雨宮凛音

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雨宮凛音

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凛音

せってい

凛音

りうら＝人魚（美しくも狂気を孕んだ存在）、初兎＝王子（純粋で優しいが人間社会に縛られている）

　

それでは本編どぞ

　

　　

　　　

　　　　

初兎

……また君か。夜になると、必ず現れるんだね。

りうら

うん。君の声を聞きたくて。

りうら

……あと、ちょっとだけ、顔も見たかった。

初兎

危ないよ。もし兵士に見つかったら——

りうら

僕が“人魚”だって、バレたら殺される？　それとも、捕らえられて、見世物？

初兎

……そんなことさせない。でも……でも、

初兎

君は、海の者だ。僕は……陸の者なんだ。

りうら

じゃあ、海に来る？

初兎

……え？

りうら

全部、捨ててさ。冠も、国も、名前も。僕と一緒に沈んでよ。

初兎

冗談、だよね……？

りうら

本気だよ。僕は……ずっと前から、君を“海に引きずりこみたい”って思ってた。

初兎

——っ、りうら……？

りうら

ねぇ、君の喉、綺麗だよね。声も、柔らかくて、あたたかくて。

りうら

……僕、それ、もらってもいい？

初兎

やめて、冗談にしても怖いよ……！

りうら

どうして怖がるの？　愛してるから、声が欲しいんだよ。愛してるから、君を海に沈めたいんだよ。

りうら

愛してるから、僕のものにしたいんだよ。ずっと、ずーっと……

初兎

やめて、やめてよ……そんなの、愛じゃない……っ

りうら

じゃあ、“人間の愛”って何？　君の婚約者、今夜も別の男の子の部屋にいたよ。あれが“人間の愛”？　それなら、そんなもの、壊してしまえばいい。

初兎

……見てたの？

りうら

うん。ずっと見てたよ。君が泣いてるのも、知ってた。王子っていう檻に縛られて、偽りの愛を与えられて、君が壊れていくの、全部。

初兎

……どうして、そんなに僕のことを……

りうら

君が、僕を助けた夜があったでしょう？嵐の夜、船が砕けて、君が溺れかけてた。僕、あの日から君のすべてに呪われたんだよ。

初兎

……あのときの歌声……君だったんだ……

りうら

そう。君を岸に運んで、君の肌に触れて、君の心臓の音を聴いて、僕の心が壊れた。

初兎

……りうら……

りうら

ねぇ、いっそ僕を壊してよ。君がくれた“恋”のせいで、僕、もう海にも帰れない。

初兎

そんなの……僕だって……っ

りうら

じゃあ、選んで？　この手を取る？　それとも、僕を忘れて陸の檻に戻る？

初兎

……もし、僕が君の手を取ったら……

りうら

君の心臓は止まる。でも、魂はずっと僕の中で生き続ける。永遠に、ね。

初兎

それでも……君の孤独を壊せるなら……

りうら

——え？

初兎

君が泣いてたの、知ってるよ。僕が溺れたとき、君の涙、頬に触れたんだ。

りうら

……嘘、だ

初兎

本当だよ。だから……僕を、君の海に沈めて。君の孤独ごと、抱きしめさせて……

りうら

——初兎……！

初兎

一緒に、堕ちよう？

りうら

……うん

——沈んだ先で、誰も知らない“愛”が、深く深く、息をしていた。