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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで

扉から出ると、また石レンガに挟まれた石畳の道に出た。

それと、ガイド妖精が待っていた。

ガイド妖精

Question。
私について来い

ガイド妖精は、それだけ言うと、ふよふよと通路の奥へと進んでいった。

もう次の問題が始まったようだ。

シシロウ

追うぞ。
見失ったら失格になるかもしれん

シシロウが走り出し、ぼく達もつられて後を追う。

ガイド妖精

ふよふよ……

ガイド妖精

ふよふよ……

ガイド妖精

ふよふよ……

ユウゴ

置いていかれることはなさそうだけど?

ガイド妖精の進むスピードは、ぼく達が歩くよりも遅く、走らなくとも歩いているだけでも追い抜いてしまいそうだ。

ガイド妖精と付かず離れずの距離を保ちながら進んでいくと、これまでの石レンガに挟まれた通路から、広い空間に出て視界が一気に広がった。 道の左右には壁がなく、暗い闇が果てなく広がっている。

つまり、道の左右は断崖絶壁だ。

アルク

底が見えなくて、高いのかどうかもわからないわね

アルクが道のはしから下をのぞいてつぶやく。

見えないのは下だけじゃない。

空間全体が真夜中のように闇に包まれていて、道そのものも10メートルくらい先までしか見えない。 まさか、その闇の向こうで道が途切れて無くなっているということはないだろうけど。

シシロウ

どれ。
ぼくがあたりを照らしてやろう

シシロウが一歩前に出て、右手をかざす。

火を出して、灯りの代わりにするつもりみたいだ。

シシロウ

はあっ!

シシロウの手のひらから、パスっと湿気ったマッチのような音がして、細い煙が一本のぼっただけだった。

シシロウ

くっ、魔力切れのようだ

水を沸騰させるって、すっごい熱量使うしね。

なんてことをやっている間にも、ガイド妖精は道の上をまっすぐと進んでいく。

ペースは変わらず歩くよりもゆっくりだから、落ち着いて歩けば灯りがなくても置いていかれることはないだろう。

道の両はしを避けて真ん中を歩いているうちに、自然と縦並びの隊列になっていった。

先頭がシシロウで、その後ろにアルク、ぼく、ユトリと続いていく。

アルク

あれ? なんかおかしいわ

最初に異変に気がついたのはアルクだった。

ユウゴ

何かあった?

アルク

何かやわらかい物を踏んだ気がしたんだけど。
ごめん、気のせいだったみたい

一度立ち止まりアルクの足元を確認してみたが、特に何も見つからなかった。

シシロウ

みんな、遅れているぞ

シシロウが振りかえって、ぼく達に声をかける。

少し離れてしまったので、小走りで距離を詰める。

ユトリ

ひゃっ!

急に走ったせいか、ユトリがつまずいてぼくの背中にぶつかった。

ユトリ

ご、ごめんなさいっ

すぐに離れるユトリ。

さっきの隠し通路での件もあったから、なんとなく気まずくなって、ぼくとユトリはお互いに目をそらした。

アルク

あら、あら、あら~

そんなぼく達の様子を、アルクが楽しそうにしたからのぞき込んできた。

アルク

これは吊り橋効果ってやつかしら

吊り橋効果と言うのは、恐怖心でのドキドキを恋愛感情のドキドキだと勘違いして、その時近くにいる人を好きになってしまうことを言う。

シシロウ

冗談ではなく、本当に吊り橋のようになってきたぞ

先頭を歩いていたシシロウの足元の石畳が、左右にゆらゆらと揺れている。

ユウゴ

え、どういうこと?

気がつくと、ぼくの足元も揺らぎ始めていた。

立っていられないほどじゃないけど、真っ直ぐ歩くのが難しくなってきた。

さっきアルクがやわらかい物を踏んだと言っていたけど、地面そのものがやわらかくなっていたんだ。

シシロウ

揺れに気を取られずに、道の中央を歩くことを心がけろ。
吊り橋は、はしよりも中央のほうが揺れが少ない

シシロウが振り返らずに、ぼく達にアドバイスする。

こんな揺れる道ではしに行ったら、そのまま暗闇に投げ出されそうだ。

前を見ると、少しずつガイド妖精が遠ざかって行く。

揺れる地面に気を取られて、歩くスピードが遅くなっていたんだ。

走ると地面の揺れが大きくなるので、慎重に速歩きくらいのペースでガイド妖精を追いかける。

ユトリ

ま、待ってくださひぃっ

ぼくの後ろでユトリがころんだ衝撃で地面が大きく揺れ、波が前を歩くシシロウのところまで届いた。

ユウゴ

うわっ、とっと

シシロウ

くっ、落ちていないか?

みんな、足を踏ん張って揺れに耐える。

ぼくが後ろを振り返ると、ユトリはよつんばいの体勢で持ちこたえていた。

ユトリ

はい、なんとかー

ユトリは起き上がろうとしたが、地面が波打ち、また床に手をついてしまう。

シシロウ

無理に立とうとするな。
その体勢の方が安定しそうだから、ユトリくんはそのままついてきた方がいい

ユトリ

ええーっ、わ、わかりましたぁ

ユトリは少し不満そう(と言うか恥ずかしそう)だったけど、みんなの足を引っ張ってしまうと思ったのか、渋々はいはいで進み始めた。

ユウゴ

ユトリ、ぼくが後ろになるよ

はいはいだと歩くよりも、もっと進むスピードが遅くなる。

1番後ろのままだと気づかずに置き去りにしてしまうかもしれないと思って、ユトリに前をゆずった。

ユトリ

すみません

ユトリは恥ずかしそうにうつむいたまま、速足(速はいはい?)でぼくを追い抜いていった。

ぼくはみんなの1番後ろをついて歩いていく。

あたりは闇に包まれたままで、前を歩くシシロウやアルクの後頭部までは見えるけど、シシロウよりも先を飛んでいるはずのガイド妖精の姿は、見えなくなっていた。

はいはいで進むユトリからだと、見上げても前にいるアルクの背中に隠れて、ガイド妖精は見えないだろう。

アルク

ねえ、みんな。
もう地面が元に戻ってるんじゃない?

今度はアルクがみんなに話しかけてきた。

シシロウ

そう言われれば、さっきよりも歩きやすくなってきたな

シシロウがつま先で地面をコツコツと叩いてみせる。

これまでなら、その衝撃で地面が波打っているところだが、揺れるどころか振動すら感じない。 普通に石畳の地面を蹴った時と同じ、かたい音がした。

ユウゴ

そうだね。普通の道に戻っている感じだ

ユトリ

え、そうですか?

ぼく達の話を聞いていたユトリが立ち上がろうとする。

グニャリ。

また地面がやわらかくなり、道全体が大きく波打ち、ぼく達全員が転びそうになった。

ユトリ

ひゃあっ

立ち上がろうとした不自然な姿勢で揺れに見舞われたユトリが、また両手を地面についた。

その瞬間、地面の揺れがなくなり、かたく平らな石畳に戻った。

アルク

あれ、揺れがなくなった

シシロウ

ユトリくん、片手だけゆっくりと地面から離してみてくれ

いち早く何かに気づいたらしいシシロウが、ユトリに指示する。

ユトリ

ええっと、こうですか?

ユトリがよつんばいのまま、左手だけ上にあげた。

すると地面の左側だけがやわらかくなり、道全体が少しだけ左にかたむいた。

ユウゴ

も、戻して!

ユトリ

は、はい!

ぼくがわざわざ言うまでもなく、揺れでバランスを崩したユトリは、左手を地面についた。

地面がまたかたくなった。

シシロウ

ユトリくんの属性は地《テラ》だったな?

ユトリ

はい。ガイド妖精にはそう言われました

シシロウ

これはユトリくんの魔法の力だ

シシロウ

学校側が用意した『やわらかくなった地面』に対して、地《テラ》の魔法が作用してかたくしているんだろう

アルク

おおーっ、すごいじゃん、ユトリ。

アルク

その魔法があれば、この問題は楽々クリアだよ

ユトリ

は、はいっ。

ユトリ

ですけど……

ユトリが立ち上がろうとすると地面がグニャリとやわらかくなるので、よつんばいの体勢は崩せない。

アルク

立って魔法を使うことってできないの?

ユトリ

今も意識して魔法を使っているわけではないので。

ユトリ

手で触ったら勝手に地面がかたくなるみたいです

シシロウ

なら、そのまま、はいはいでゴールまで行くしかないな

ユトリ

……そうなりますよね

話している間もガイド妖精は、ゆっくりと前に進んでいる。

ユウゴ

そろそろ追いかけないと、ガイド妖精を見失っちゃうよ

シシロウ

先頭はユトリくんが行け。
ガイド妖精が見えていたほうが、気安いだろう

ユトリ

はい

ユトリ

あ、でも……

ユトリは一度うなずいたあとで、何かを言いたげに口ごもった。

アルク

じゃあ、2番目はあたしが歩くわ

アルクが手を上げて、ユトリの後ろにつく。

シシロウ

今までの順番を守るなら、ぼくが2番目だろう

アルク

駄目よ。
はいはいしている女の子の後ろ姿なんてえっちすぎるじゃないの。
だから、ユトリだって先頭を行くのを渋ってたんじゃないの?

ユトリ

あの、

ユトリ

あたしは、

ユトリ

みんなが遅くなっちゃうんじゃないかって、

ユトリ

思っただけで

アルク

安心して。ユトリのおしりはあたしが守るわ

ユトリ

違うのに

ユトリが顔を真赤にしてうつむいてしまった。

シシロウ

これ以上足を止めると、ガイド妖精を完全に見失う。
女子2人が前でいいから、早く行ってくれ

はいはいで進むユトリが先頭、2番目がアルク、3番目がぼく、最後をシシロウという順番で行軍は再開した。

シシロウが3番目ではなく最後になったのは、

シシロウ

3番目なんて中途半端な順番なら殿を務める方が良い

と、ぼくの後ろに移動してきたからだ。

ユトリの地《テラ》の魔法の効果は良好で、これ以降は地面がやわらかくなることもなく、順調に扉のある場所までたどり着いた。

ガイド妖精

ゴール到着、確認。
クリア

という音声を残して、ガイド妖精は消えていった。

ユトリ

やった。クリアしましたよ

扉を前にして、ユトリが立ち上がった。

アルク

うわっ!

アルクがバランスを崩して、後ろに倒れてきた。

地面がまたやわらかくなって、大きく揺れだしたからだ。

ユウゴ

あぶなっ!

とっさに両手を広げて受け止めて、なんとか転ばずにすんだ。

ユトリ

ええ、なんで?大丈夫ですか?

扉の前の地面だけは硬い普通の石畳のようで、ユトリは普通に立って待っている。

シシロウ

ガイド妖精が消えても、地面のやわらかさは残っているみたいだな

シシロウがぼくとアルクの横をスタスタと素通りして、扉の前まで歩いていった。

ぼくとアルクも揺れが収まるのを待ってから、扉の前まで歩いていく。

ユトリがアルクに近づいて、そっと耳打ちする。

ユトリ

吊り橋効果、ありましたか?

アルク

ないわよ

アミキティア魔法学校の闇

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