再び閉じていた瞼を開ける。
レジスタンス末端の___以前 力豪の襲撃に遭った男が顔を覗き込んでいた。
ミファエル
ミファエル
男は小さく首を横に振った。
覚悟していたがやはり…。 彼女はムードメーカー気取りでは無く正真のムードメーカーだったのに。
__でも彼女は最後まで笑顔だった。だから少なくとも今は、俯いている場合では無い。
ミファエル
ミファエル
ミファエル
壁に手をついて立ち上がる。 首筋に垂れた髪を払って移動しようと___
ド ォ Ⅰ Ⅰ ン ・ ・ ・
ミファエル
全てを震わす、とてつもない爆音が轟いた。
蝋燭が地面に叩きつけられ、壁や天井に幾つものヒビが走り、瓦礫が降って__
ミファエル
この このデタラメな爆破は____
鴉
回廊に、闇色の騎士が現れた。 空耳じゃ無く、確かにそう言った。
ミファエル
___そうだ。 四元素の上には、侵攻軍を束ねる残夢が居る。
まだ残夢が居る。 でも…
ミファエル
鴉
鴉は小さな瓶を取り出すと、男に放る。
鴉
男は小瓶を両手でキャッチすると、あたふた と駆けて行った。
鴉
男の姿が視界から消えると、鴉はその鋭い眼光を私に向けた。
鴉
鴉
ミファエル
建物は崩壊の音を奏で続ける。 鴉は視線を外すと、スタスタと歩き出した。
鴉
鴉
鴉
ゴーム
ミファエル
レジスタンス総本部。 イロハの事を話すと、ゴームは顔を雲らせた。
暫し黙祷し、目を閉じたままゴームは続ける。
ゴーム
ミファエル
私は、アレンの部屋のドアに視線を飛ばす。 あそこで勝者が闘いの傷を癒している。
ゴーム
ゴーム
ミファエル
ゴーム
ミファエル
鴉に貰った、空の解毒薬を握りしめ、私も自室に入った。
「はぁ……はぁ…」
レジスタンスによる侵攻軍襲撃より数時間後。
コルティアには夜が訪れ、人々は眠りの中に沈んでいた。
たった1人を除いて。
霧我
霧我は 爆発により片腕と片足を失っていた。
身体中に刻まれる傷は深く、銛も使い物にならない。 ___それでも、霧我は片腕で地を這っていた。
霧我
霧我
霧我
鴉
鴉
その声は 夜闇によく響き
後ろから霧我の背中を刺し、霧我の動きを止めた。
霧我
霧我
霧我
鴉
霧我
霧我
霧我
鴉
カラスの甲高い鳴き声が夜闇を切り裂く。 __いつの間にか沢山のカラスが周囲を旋回していた。
鴉
魔術世界大戦記 第9話
「真実」
___時は少し遡る。
城中が燃えている。
逃げる道中、総騎士長の死体を見た。
無惨にも背中に銛が突き立っている。息子のアレンは、あれを見たらどう思うだろうか。
鴉(回想)
「今は逃げる事だけお考えください!」
先導する執事長がぴしゃりと言い放つ。
__俺は察した。 口を閉ざしていると、執事長が振り向く。
あちこちで燃え盛る炎が、眉尻を下げた執事長の顔をオレンジに照らし出す。
執事長
住んでいた城が、炎に呑まれ崩れて行く。
蛇山のあたりまで逃げ込んだ俺は、その様をぼんやりと眺めていた。
同じく惨状を眺めていた執事長が苦々し気に口を開いた。
執事長
鴉(回想)
着の身着のまま飛び出した、服の裾を掴む手は震えた。
鴉(回想)
霧我
鴉(回想)
鴉(回想)
霧我
鴉(回想)
執事長
霧我
霧我は楽し気に笑いながら、テーブルに何かを放る。
ゴトリ、 と机上を転がったのは
残夢の左腕だった。
霧我
霧我
轟姫
霧我
霧我
___賽(さい)は投げた。
「反乱」の始まりだ。
俺は俺のやり方でこの国を___
コメント
1件