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午前1時5分。
パンダ舎から2キロ離れた「行徳橋」のたもとで、ふたりの刑事は車を降りた。
夜の川辺には、人の気配はない。
ただ、橋の下の水辺に、何かがずるりと滑り込んだような跡が残っていた。
「監視カメラ、ここにあるな」
日下部が近くのコンビニに駆け込んで、録画データを確認する。
――画面に映ったのは、白い毛むくじゃらの生き物が、二足で歩いている姿だった。
まるで着ぐるみのように見えるが、動きは明らかに自然だ。
しかも、その生き物は一瞬だけ――
カメラのほうを振り返り、黒い瞳でレンズをじっと見た。
「……メイリンだとしたら、何かがおかしい」
山科の声に緊張がにじむ。
その時、後方から1本の連絡が入った。
「こちら動物園本部。夜間用の飼育ログに記録されていた温度センサーのデータによると、パンダ舎の中にいたのは……人間の体温とほぼ一致する“熱源”でした」
「つまり、檻の中にいたのは……」
「人間だった可能性があるってことだ」
その言葉を聞いた瞬間、川の対岸――「ジュンサイ池」の奥から、
「フウ……フウ……」という不気味な呼吸音が、微かに夜風に混じって聞こえてきた。
次回:第4章「ジュンサイ池の森」
――白い影の正体と、人間の足跡の謎に迫る刑事たち。だが、池の奥で待っていたのは……