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午前の始業時間。
鏡の前で何度も深呼吸を繰り返した華は、重たい足を引きずるようにしてフロントへ向かった。
「……大丈夫、大丈夫。きっと覚えてないはず……」
小声で呟きながらも、心臓の鼓動は速くなるばかりだ。
カウンターに立つと、すでに律が制服姿で整然と並んでいた。
その背筋はいつも通り真っ直ぐで、隙がない。
「おはようございます」
震えそうになる声を必死に整えて、華は挨拶をした。
律はちらりと視線を向け、短く頷く。
「……おはようございます」
その表情に特別な色はない。
けれど、華の胸のざわつきは収まらなかった。