「桜坂さん、こちらのお客様をご案内して下さい」
律の声はいつも通り冷静で、業務的だった。
「は、はいっ!」
笑顔を作りながら対応に出るが、頭の片隅では律の態度ばかり気になって仕方がない。
(ほんとに……覚えてないのかな)
(私、何か言っちゃった? もし“好きになってよ”なんて……いやいや、そんな……!)
心臓が跳ねるたびに、顔が熱くなる。
ちらりと律を盗み見るが、彼はただ黙々と業務をこなしている。
(落ち着いて……普通にしてれば大丈夫……!)
必死に自分に言い聞かせるものの、不安と羞恥は増すばかりだった。
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