「あなたを守り抜くと、この剣に誓います」
そう言ったのは、いつだったでしょうか。
私は、あなたを守れなかった。
あの時、私が行かなければ、あなたは……
遠い昔にも、あなたに約束しましたよね。
「俺が___を守るよ!」
いつしか、それは約束から義務に変わってしまいましたね。
でも、私の気持ちは変わらなかった。
この命を懸けて、必ず守ると…
………誓ったのに。
あの日から、私の時間は動かない。
あなたから賜った剣は、人を守れるようにと願いを込めた名でしたね。
──シュッツエンゲル──
………もう、その名を私は呼べません。
守れなかった私には、その資格は無い。
ああ、まただ。
あの日の悪夢。
陽動に引っかかり、騙された俺。
急いであなたの元に戻るも、遅かった。
あまりにも鮮やかな赤に染まったあなた。
嘲笑う刺客。
そして──
皆殺しにした、俺。
緑の髪に付いた赤黒い液体。
赤黒い色に染まった俺の手と、剣。
──俺が。
俺が、傍にいれば。
あなたは傷つかなかったかもしれない。
もう一度、あなたの声が聞きたい。
雪のような髪を揺らし、空色の瞳を輝かせるあなたに、会いたい。
鈴のように笑うあなたに、もう一度だけでも──
───目が覚めた。
私は今日も剣を振るう。
復讐のため。
………でも、今日こそは。
「………もう、終わりにしよう」
私は喉に剣を向ける。
刺そうとしたその時。
──駄目だよ、___。戻って来て。
あなたの声が、聞こえた。
………そうか。
あなたが戻って来てと言うのなら、行かなければ。
「………ああ、近衛隊長殿か」
私は、その呼び名を呼ばれる資格は無い。
「今はそう呼ばれる訳にはいきません」
「……そうか」
「殿下のご容態は?」
「まだ、目を覚まさぬ」
そっと、部屋に通される。
寝台で眠るあなた。
「……戻りました、殿下」
そう言うと、私は部屋から出ようとした。
その時。
「…………あ、れ…」
「!?」
「殿下が!殿下が目を覚ましたぞ!」
「………おはよう、みんな。心配かけてすまない」
「「ははっ!」」
「しばらく…近衛隊長と2人にさせて」
「かしこまりました」
俺とあなた、2人だけの空間。
「おはよう、おんりー」
私に微笑みかけるあなた。
「今は、昔みたいに名前で呼んで」
「……おはよう、おらふくん」
俺の目からは、涙が溢れていた。
「泣かないで。僕は生きてるよ」
「ごめん…俺が…俺が行かなければ…」
涙が止まらない。
「俺はっ…誓ったのに…必ず守るって…」
「おんりーは守ってくれたよ」
嘘だ。俺は守れていない。
「僕との約束、覚えてる?昔の約束」
「俺がおらふくんを守るっていう?」
「そうだけど、そうじゃないよ」
どういう事だろう。他にあったか?
「自分を大切にして、って言ったでしょ?」
その瞬間、昔の思い出が頭をよぎった。
俺がおらふくんを守るよ!
ありがとう。でも、おんりーは自分を大切にしてね。
僕にとってはおんりーも大事だから、おんりーに何かあったら悲しいよ。
「あ…」
「さっき夢の中でね、おんりーが自殺しちゃいそうな気がして」
おらふくんは苦笑いをして言う。
「駄目だよ、って言ったんだ」
……分かってたのかな。
「……全部、お見通しなんだね」
俺は少しだけ笑う。
「もうしないよ」
おらふくんは真っ直ぐこっちを見て言う。
「また、僕の傍に居てくれる?」
「……俺なんかで良ければ」
2人で顔を見合わせて、笑った。
今度こそ、この笑顔を守りたい。
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わぁ⊙.☉