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「植物園って、3年生が遠足で行ったところ。行きたい!」
「そうか。千愛が行きたいなら、行こう!」
千愛の言葉には即答の夫を見て、植物園行きは決まっても何だかもやっとする。
モヤモヤした気分をスッキリとさせるために、翌日は美容院へ行った。
肩につかないワンレンボブから、前髪を作ってもらう。
長くない髪だけれど、前髪のあるのとないのとでは、ずいぶんとイメージも気持ちも変わる。
「前髪を作った方がお若く見えますね」
そんな美容師さんの言葉にも心が浮上し、少しスッキリと帰宅した。
けれども、その日帰って来た夫が私の髪に気づくことはない…そりゃ、目が合わないならそうか。
「ママ、髪切った?切ったよね?」
「うん」
「すっごく可愛い」
「ありがと、千愛。パパ、どう?」
食事をしながら、そう聞いても、夫が私を見ることはなく
「千愛も少し髪切るか?パパがいい美容室に連れてってやる」
夫は千愛の髪を撫でた。
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既婚であることが社会的信用にも繋がる、というような古い考えがある会社を、古臭いという友人もいるが、俺はそう思わない。
ステレオタイプの人間なのかもしれないが、古き良き……というものもあると思う。
子どももいて立派に育ててこそ社会に誇れる男だと思っていたが、なかなか子どもに恵まれなかった。
風子は妊娠がわかった時
「子どもはまだか?と言われていた両方の両親の期待に応えられて、ホッとした」
と漏らしたことがある。
その時、俺は
「無事に生まれてからホッとしてくれ」
と風子に言った。
どこかおっとりとした部分のある風子は、間違いなく家庭的だが、子育てを任せても大丈夫だろうか?と、この時、一瞬思った。
念願の子どもが生まれて
この子に全愛情を注ぎ出来ることは何でもする!
初めて抱いた瞬間に決意した俺は、千の愛を与えるという意味を込めて
【千愛】
と名付けた。
新米ママ風子が頼りなく見えて、口出しが日常化しているが、娘を想い最優先するのは自分だけでなく世間一般に当たり前のこと。
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