テラーノベル
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💚side
💜「どうした?阿部ちゃん。元気ねぇな」
💚「まあ、ちょっとね」
あれからしばらく翔太に連絡を無視され続けている。翔太と仕事で会うことがあってもなんだかそっけないし、2人きりになれる隙すらなかった。仕事が終わると、一番早く帰る照を追い越すようにして帰ってしまう。
あの夜のことは全て夢や幻ではなかったかと思うほどだ。
目黒に相談しようかとも思ったが、目黒は目黒で疲れているのか、楽屋にいる間は誰も寄せ付けない雰囲気で台本に向かっていた。
2人がそんなだからか、楽屋全体もなんだか刺々しい空気で、心の休まる時間がない。心配したふっかが、こうして俺に寄り添ってくれている。
💚「ねぇ、ふっかってさ、心が通い合ったって思ったのに、突然離れられたことある?」
💜「は?ちょっとわかんねぇな。何の話?」
💚「………言わない」
💜「あっそ」
ふっかは、全く別の話のようにいきなり小声で切り出してきた。
💜「最近のなべ、変だと思わないか?」
💚「…………」
思いがけず話が繋がったので、言葉の先を待つ。
ふっかはいかにも心配そうに言った。
💜「聞いていいもんかわからないから口出ししないけど、なんだか悩んでるみたいに見えるんだよな」
💚「そう…」
💜「ん?何か知ってんの?阿部ちゃん」
💚「知らない」
俺が聞きたいくらいだよ。
イライラともやもやが胸の底に澱のように溜まっているけれど、それよりも大きいのは翔太が何かにずっと悩んでいるということ。もしかして、俺と寝たことを後悔しているのだろうかと勘繰ってしまう。あの時は酒も入ってたし、同意の上で心が通ったように感じたけれど、翔太は終始涙を流していた。その理由を翔太は最後までとうとう教えてくれなかった。
朝が来たら魔法のようなあの時間も消えて、翔太自体もすり抜けるように俺の元から消えた。
何から何までが嘘のように儚い時間だった。
💚「もう忘れろってことなのかな…」
💜「は?阿部ちゃんも悩んでるのかよ」
ふっかが、相談に乗ろうかと身を乗り出してきたので、お先に、と言って楽屋を後にした。
🖤side
しょっぴーが急によそよそしくなって、俺はイライラしていた。地方ロケから帰ってからというもの、理由がわからないが、急に抱かせてくれなくなった。家に泊まらないかと誘っても、何かと言い訳をして断ってくる。
今日こそ決着をつけたい。
一日の撮影を終えると、その足で、しょっぴーの住むマンションへと向かった。灯りは点いているので在宅は確認できている。
💙「悪いけど今日は帰って」
ドアの隙間から青白い顔を見せると、しょっぴーはすげなくそう言った。無理やりドアの間に靴を捩じ込み、力任せに開けて中に入る。
驚き、目を見開いたしょっぴーは、そのまま諦めたような顔をした。
抱きしめると、少しよろけた。身体が熱い気がする。
🖤「どうした?具合でも悪いの?」
💙「だから今日は帰れって言ってるだろ」
額を触ると、やはり熱があるように感じた。心なしか息も荒い。怠そうに顔を上げた。
🖤「なんで…」
💙「知らね」
しょっぴーは背を向けると、そのままスタスタと寝室へ消えた。靴を脱ぐのももどかしく後を追う。横になった顔を見ると、熱で顔が赤くなっていた。
🖤「大丈夫?」
💙「………ん……」
苦しそうに目を閉じているのに、無防備な唇が欲しくて、キスをしてしまった。
💙「おま……っ。ばか。感染るぞ」
🖤「ごめん、わかってるんだけど、止まらない」
シャツの裾をまくって、手を入れる。冷たい手が気持ちいいのか、色っぽく声が漏れた。
ああ、もうだめだ。
我慢できない。
そのまま、上衣を脱がせて、深いキスをする。嫌がるしょっぴーを無理やりに押さえ込むことに興奮している自分がいる。
やがて、しょっぴーも諦めたのか、身体から力を抜いた。
💙「はぁ……来いよ」
耳を舐めると、可愛い声で鳴いた。
熱い身体に興奮する。潤んだ目が唆る。自ら身体を開き、怠そうにしているのを構わず、前戯もショートカットし、ほとんど抵抗しない人形のようなしょっぴーを繰り返し抱いた。二度ほど中で射精すると、ようやく俺の衝動も落ち着き、汚れたしょっぴーの身体を綺麗にして、横に添い寝した。
🖤「ねぇ、こっち見て」
行為が終わると、背中を向けてしまった、白い背中を後ろから抱く。汗でじっとりと濡れていた。
しょっぴーは怠そうに顔だけ振り返った。わずかに開いた口元に、舌を捻じ込み、キスをした。ねぶるように味わい、糸を引きながら口を離す。
🖤「しょっぴー、怒ってる?」
💙「……怒る資格なんてない」
気になることを言うが、仰向けになると、腕を上げて、顔を隠してしまった。
🖤「しょっぴーのこと、好きだよ」
💙「……ん」
🖤「しょっぴーも俺のこと好きでしょ」
問うと、腕を外して、熱で火照った顔で悲しそうに俺を見た。具合が悪いことを差し引いても、その目つきが気に入らなかった。無理やりに唇を重ねる。しょっぴーはまた抵抗せず、されるがままにしていた。それも気に入らない。何か心が肝心なところで繋がっていない気がした。唇を離すと、しょっぴーは小さく言った。
💙「めめ」
🖤「何だよ」
💙「しばらく俺に時間をくれない?」
🖤「……………」
💙「ちょっと一人で考えたい」
🖤「やだ」
俺はしょっぴーをさらに強く抱きしめた。涙が溢れてきた。今手を離したら、しょっぴーが遠くへ行ってしまう気がする。俺の涙を見て、しょっぴーは慌てた。
💙「泣くなよ…」
🖤「泣かせてるのは、しょっぴーだ」
💙「ごめん」
🖤「俺たち、付き合ってるんだよ」
💙「…………そうだよな」
🖤「何かに悩んでいるのなら、ちゃんと言って欲しい」
💙「……………」
🖤「しょっぴー?」
💙「悪かった。ごめん。…ちょっと、本当に具合悪いからもう寝る」
🖤「俺のこと好き?」
💙「好きだよ」
しょっぴーは聞き分けのない子供を宥めるように俺を見つめて、触れるだけのキスをし、再び背中を向けて目を閉じた。
さすがにそれ以上は触るのもこの場にいるのも憚られ、俺はしょっぴーの背中をもう一度ぐっと抱くと、また来る、と囁き、しょっぴーの家を出た。
ぎりぎりのところでしょっぴーを繋ぎ止められたような、そんな感触があった。
きっと何かあったに違いない。そしてそれは俺には話せないようなこと。マンションを出てスマホを取り出すと、阿部ちゃんからメッセージが入っていた。電話を掛ける。
💚『あ、めめ。ごめん、忙しい?』
🖤『今、ちょうど手が空いたとこ。どうかした?』
💚『例のことで、ちょっと話がしたくて』
🖤『例の?』
まさか…。
俺は居ても立っても居られず、その勢いのまま阿部ちゃんと約束を取り付け、すぐに会うことにした。
コメント
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えっ何も知らないあべちゃんと直接対決… どうするんだろうーーー
嫌な予感しかしない…🥺🥺