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🖤side
💚「ごめん。わざわざ…」
🖤「いや、ちょうど暇してたし」
個室の居酒屋に来ている。阿部ちゃんは烏龍茶を頼んだ。俺はビール。飲み物が届くと、少し言いにくそうに、阿部ちゃんは語り出した。
💚「翔太に気持ち、伝えたよ」
その一言で、心臓が跳ね上がった。カァッと頭に血が上るが、気づかれないように喉に冷たいビールを流し込んだ。
🖤「よかったね」
そう言うのがやっと。
💚「でも始まり方があんまり良くなくて…。返事も未だ聞けてないんだ」
🖤「そう」
胸ぐらを掴み、何をしたのか問い糺したいところをぐっと堪える。阿部ちゃんはいかにも困ったような顔をして俺を見た。媚びるようなその目つきに苛々が募る。
💚「翔太って、やっぱり好きな人でもいるのかな」
🖤「かもね」
突き放すような冷たい言葉が思わず口をついて出てきてしまい、慌ててビールを飲み足す。阿部ちゃんの顔が悲しそうに歪んだ。
💚「……そっか。めめは優しいね」
🖤「は?」
💚「前に翔太に気になる人はいないって言ったアレ、気を遣ってくれてたんでしょ。俺がちゃんと気持ちを伝えて、ちゃんと失恋できるように」
🖤「……………」
阿部ちゃんは勝手に俺の心を解釈して、勝手に感謝し始めている。何も言えなくなって、俺は黙る。
💚「そうだよね。それならちゃんと…。もっとちゃんと振られたかったな」
🖤「…振られたの?」
驚き、被せるように言ってしまった。
俺の心臓が早鐘のように打っているが、苦いビールはもう身体が受け付けなかった。阿部ちゃんの次の言葉を待つ。
💚「たぶんね。連絡しても全然返してくれなくなった」
🖤「……へえ」
しょっぴーは阿部ちゃんのもとへと行ったのではなかったようだ。ほっとし、幾分、心に余裕が生まれた。
逆に阿部ちゃんは酒が飲みたくなったようでビールを頼み、つまみにも手をつけ出した。そして、3杯めに差し掛かると、アルコールで緩んだ心が阿部ちゃんにとんでもないことを告白させた。
💚「だったら『抱いて』なんて言うなよな翔太も」
俺は、今度こそ頭に血が上るのを強く感じた。阿部ちゃんは俺の怒りにも気づかず、しょっぴーを抱いた夜のことを赤裸々に語り始めた。
阿部ちゃんと別れた後、頭を冷やすべく、公園のベンチに腰を下ろした。
夜空は曇っていて星は見えない。
俺は自然と頬に涙がつたうのを抑えることが出来ないでいた。
不器用すぎる両想いの2人に、割り込む邪魔者に過ぎない俺。
阿部ちゃん側が両想いだと知れば、2人に障害はなくなる。ぐだぐだと話す阿部ちゃんのしょっぴーへの想いを聞き、叫び出したいのを堪えながらひたすら相槌を打った。
しょっぴーも貴方のことが好きですよと教えてやれば全てが終わる。
でもそんなことは絶対にしたくない。
数時間前にしょっぴーの口から放たれた俺への『好きだよ』を繰り返し反芻してみた。その中に含まれた僅かな希望を大きく育てていくしかない。今、付き合ってるのは他でもない、俺なんだから。
そして、阿部ちゃんにはなんとか諦めてもらうしかない。自販機で買った苦いアイスコーヒーを飲みながら、込み上げてくる感情に必死で蓋をして、頭を巡らせた。
コメント
6件
あべちゃんと上手くいって欲しいけど無理なのかな? 辛い(ㅠ︿ㅠ)
はぁー😭 みんな辛いなぁ😂