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ゆうな
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#みじかめです、!
夢仁羽
104
Side Lapis
「あれ? どこだ……ここ」
気づけば、俺は暗闇に包まれた、何も無い空間にぽつんと立っていた。
クスクス……。
ヒソヒソ……。
どこからともなく、不気味な笑い声が響いてくる。
「うぁ……」
反射的に両手で耳を強く塞ぐ。だけど、その声は鼓膜を突き抜けて、直接頭の中に流れ込んでくる。
『ほんとは周りのこと、見下してるんだろ?』
「違う……!」
『サイテー』
「やめて……」
『あはは! いい気味だわ』
「やめて、くれ……」
『優等生さん(笑)』
「……やめてください」
必死に叫んで、ようやく声が止んだ。やっと終わったのかな……そう思った瞬間、さらに何倍もの歪んだ声が、濁流のように押し寄せてきた。
『あははははは!』
『クスクス……』
『バッカじゃないの?』
『早く死ねばいいのに』
『気持ち悪い』
『サイテー』
「……っ」
『見損なったよ』
息ができない。胸が苦しくて張り裂けそうだ。
「……っス」
『お前なんて、いらない』
「ラ……スくん!」
『本当に、つかえないな』
「――Lapis!」
その時、闇の向こうから、俺の名前を呼ぶ強い声が聞こえた。
同時に、冷え切っていた手を、誰かにぐっと力強く引っ張られたような気がした。
Side にしき
ころんくんとおさでいが、真っ青な顔をしたLapisをおぶるようにして二階へ上がってきた。急なことに、俺も流石に驚く。
どうやら一階で急に具合が悪くなって、そのまま気絶してしまったみたいだ。
ひとまず、俺たちはLapisくんを、寝かせることにした。
それからしばらく経つが、Lapisくんの顔色は真っ青なままで、額には酷い汗が浮かんでいる。時折、顔を歪めて苦しそうにしていた。
「……て……」
「Lapisくん、大丈夫?」
声をかけるが、まだ意識は戻っていない。悪夢でも見ているんだろうか。
「や……て……」
「やめてく……さい……」
はっきりと、縋るような掠れた声が聞こえてくる。
「一度、起こした方がいいか……」
そう思った一瞬だけ、フッとLapisくんの全身から力が抜けた。
でも、安心したのも束の間。今度はさっきよりもさらに激しく顔を歪め、あからさまに苦しそうな呼吸を始めた。
「Lapisくん……起きれる?」
俺の焦った声を聞きつけて、ドアの向こうからころんくんや、だいきりが部屋に入ってくる。
「Lapis!」
強めに名前を呼ぶと、Lapisのまぶたが震え、ゆっくりとその目が開いた。
泣きそうな、苦し気な顔で、視線を彷徨わせながら周りを見回している。
「おれ……」
「Lapisくん、もう苦しくない?」
「はい……」
そっと頭を撫でる。
少しだけ、顔に血の気が戻っていくのが見えてホッとした。
「Lapisくんが倒れたとき、ほんと焦ったんだからね……っ!」
横から覗き込んできたころんくんは、今にも泣き出しそうな目をしてる。
「すみません……」
「謝らないでよ……。目が覚めてよかった」
Side Lapis
落ち着いてから話を聞くと、俺が一階で気絶した時、おさでいさんというスタッフの方がここまで運んでくれたらしい。
暗めの灯りに包まれたこの部屋は、静かな空間で、驚くほど心が落ち着いた。
ころんさんは半分泣きながら「起きてよかった」と何度も言ってくれた。
にしきさんは、俺があまりにも苦しそうにうなされていたから、起こしてくれたのだという。
だいきりさんが、トレイに乗せて持ってきてくれた、温かいミルクを受け取る。
(……こんなこと、話したら迷惑がかかるかな)
優しく淹れてもらったミルクの温かさをてのひらで感じながら、俺はぐるぐるとそんなことばかり考えていた。
すると、隣に座っていたにしきさんが、急かすことなく静かに話し始めた。
「言いたくなかったら、無理に話さなくても大丈夫なんだけど……どんな夢を、見ていたの?」
忘れたいのに、驚くほど鮮明に脳裏に焼き付いている。
でも、この人たちなら、助けてくれるんじゃないか……不思議と、そんな気がした。
「……笑い声が、したんです」
「……うん」
にしきさんは、静かに相槌を打ってくれる。
「耳を塞いでもずっと聞こえてきて……『死ねばいい』とか、『見損なった』って言われて……。謝っても、謝ってもその声は消えなくて。ずっと、ずっと苦しくて……!」
堰を切ったように、言葉が溢れ出た。やっと、人に言えた。
「……そっか」
にしきさんは何も否定せず、ただじっと、俺の言葉を全部受け止めるように聞いてくれた。
「でも……誰かが俺をあそこから引っ張ってくれて、」
「そっか。もう、あの声は聞こえてこない?」
「はい……」
一度口を開くと、今まで心の奥底に沈めていたドロドロとした塊が、次から次へと溢れてくる。
「学校が……怖いんです」
「! ……」
俺の言葉に、ころんくんがハッと息を呑んだのが分かった。
「俺、他の人より少し勉強を進めるのが早くて……。でも、だからって周りの人を見下してるわけでもないんです。ただ、俺がやりたくて、勉強が好きでやってただけで……。だけど、みんなは『見下されてる』って感じたらしくて。ノートを捨てられたり、物を隠されたり……変な噂を立てられたりして。どこに行っても笑い声や悪口が聞こえてくるようになって、学校に、行けなくなっちゃって……」
ミルクを持つ手が、震える。
「家にずっといるのは良くないって、分かってます。俺がもっと上手く立ち回って、気にしなければ、どうにかなったかもしれないのに……。でも……」
「――それは、Lapisくんのせいじゃないよ」
遮るように、だけど包み込むような優しい声で、ころんくんが言った。
「Lapisくんがどれだけ我慢したって、周りは変わらないし、終わらない。……逃げていいんだよ、Lapisくん」
「え……」
「逃げないと、自分の『心』が壊れちゃう。一度壊れてしまった心を元に戻すのは、本当に簡単なことじゃないんだ。……もしかしたら、もう二度と元には戻らなくなっちゃうかもしれない」
ころんくんは少し目を伏せて、切なげに微笑んだ。
「まだLapisくんは捕まってない。『逃げるな』っていう言葉の鎖に捕まっちゃうと、本当に動けなくなっちゃうから。だから、全力で逃げていいんだよ」
そう言ったころんくんの表情は、どこか遠くを見ていて、まるで自分自身に言い聞かせているようにも見えた。
「疲れてるなら、もう少し休んでいきな?」
にしきさんが、柔らかい声で聞いてくれる。
「僕もまだここにいるし、休めるならしっかり休もっか」
ころんくんも優しく笑って、俺の頭をぽんぽんと叩いた。
「……わかりました」
俺は、布団へと潜り込んだ。
今度はもう、あの笑い声は聞こえない
コメント
5件
らぴらぴよかった 夢の中に出てきたやつはどうしよっかなゴゴゴゴゴゴゴゴゴコゴ
**リオン (古書研究・27歳・INTP):** うわあ……読んでいて胸が苦しくなりました。Lapisくんの悪夢、あの「耳を塞いでも直接頭に響いてくる声」という描写が、いじめのトラウマの生々しさを如実に伝えていて、とてもリアルだった。にしきさんたちが否定せずに「そっか」と受け止めてくれるシーン、そしてころんくんの「逃げていいんだよ」にはぐっときました。……ころんくん、あの言い方、自分の経験も重ねているように見えたな。ここからどう立て直していくのか、見守りたいです。