テラーノベル
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午前中の聞き取りを終え、これからは修行をする。そして師匠は四聖獣のみんな!どんな修行をするのか、ちょっとワクワクする。
「我ら一同、琳寧様にお尽し致します!!」
と、四聖獣のみんなは息ぴったりで宣誓をした。すると、
「はい、堅苦しいのは終わり!」
と、朱暖が立ち上がって言う。それに続き、白蓮、玄翠、青嵐も立ち上がった。
「話したい事はいっぱいあるけど、まずは修行について説明するね!」
白蓮が仕切って話を進めてくれる。
みんなも私と会えて嬉しいと思ってくれているのか、ずっとテンションが上がっている。さっき白蓮と朱暖に注意して青嵐だってそうだ。
「まず、あたしたちの教える担当から!決め方はただあたし達の得意なもので決めたよ〜」
白蓮がいい終えると、横にいた玄翠が術で大きめの図を出してくれた。
その図によると、攻撃に関しては白蓮、防御は玄翠、回避は朱暖、神力?はイザナギさん、座学は青嵐が担当してくれるらしい。
神力が何なのかはわからないけど、イザナギさんも教えてくれるんだ!
「あと、イザナギ様から聞いたんだけど、琳寧様、昨日の戦いで魔獣を2体も倒したんだって?」
「あ、うん…何か考えながら動いた訳じゃないけどね」
あの時は私もあまり良く覚えていない。ただ体が自然と動いただけで、私でも驚いてるくらいだから。
「いいえ、それでも初めてで魔獣を倒せるなんて、十分すごい事ですよ」
青嵐が褒めてくれる。他の3人も頷く。
「だから、琳寧様にはすでに戦闘能力がある程度備わっているってこと!ということで琳寧様。今、琳寧様に1番足りてないのはなーんだ!」
急にクイズが始まった。今私に1番足りないもの、色んなものが足りてないから絞れないんだけど…
「うーん…筋力?」
と答えた。
「まぁ確かに筋力も足りないね。でも、それは1番じゃないかな」
筋力じゃない…ならなんだろう?
「正解は…
…戦いに関係ないことだった。
「あ!今戦いに関係ない事じゃんって思ったでしょ!!」
朱暖?!なんで考えてた事わかったの?!
「あれ、図星でしたか…?」
どうやら勘だったみたい。
ここからは私が。と、青嵐が説明を始める。
「実は琳寧様にもう一つご報告がございます。私達、琳寧様の師に任命されたのと同時に、お世話係としても任命されました」
お世話係…って事は?!
「これからは一緒にいるってこと?!」
みんなは笑顔で頷く。
「これから共に生活するため。また、修行でもコミュニケーションをとりやすいようにするために、信頼関係は築いておくべきだと考えました」
「ちなみにこれ、あたしの案ね!!」
白蓮の提案だったんだ。…白蓮はただ仲良くしたかっただけじゃ?
進行役が青嵐から朱暖へと変わった。
「ということで、まずは形から!!呼び方や話し方から、仲良しっぽくなるように変えていきましょうか!」
「琳寧様はジブン達から何て呼ばれたいですか?」
何て呼ばれたいか、か…。今まで私の周りの人は呼び捨てばかりだったし、それ以外は距離を感じるような呼び方だったし…。
しばらく考えたけど、何も思い浮かばない。
「ま、ここは『琳寧ちゃん』じゃない?」
白蓮が提案する。
「ちょっと白、それは流石に馴れ馴れしすぎるでしょ…」
玄翠たちは立場を考えろ。と批判する。でも…
「『琳寧ちゃん』…嬉しい…!」
私はかなり気に入った。
ちゃん付けで呼ばれると、イザナギさんの場合は可愛がる感じだけど、四聖獣のみんなに呼ばれると、仲がいい友達!という感じがする。
「ねぇ、みんな。もし良ければなんだけど、これから琳寧ちゃんって呼んでくれない…?」
イザナギ様から琳寧様の修行の師と世話係に任命された。白蓮をはじめ、みんなはむしろそうなる事を望んでいたようで、イザナギ様から聞いた時はみんな喜んでいた。もちろん私だって嬉しい。今だって、琳寧様を琳寧ちゃんと呼んだだけで喜んでおられるし、今後もそう呼ぶことを頼まれる姿も愛らしい。
だが、一つ気がかりがある。イザナギ様が「リンネくん」と呼ぶ、琳寧様によく似た存在で、何かがない限りは常に琳寧様のそばにいる。そして気付いたらそこにいるような奴だ。ただ影が薄いのか、はたまた“隠れようとしている”のか。初めて見た時から変な奴だとは思っていたが、昨日の管理局での様子で更に異様さを感じ取った。
私たち四聖獣と琳寧様、イザナギ様、リンネが合流した時、リンネは魔獣の死体の観察を行っていた。普通なら、初めて見る死体にはあまり近づかないものだろう。でも、奴はまじまじと見ていたし、なんなら触ってもいた。ただの好奇心旺盛な人間というだけかもしれないけど。でも問題はここからだ。観察をしているリンネの背後から、何か巨大な魔物が襲いかかっていた(琳寧様と話していたため、あれが何だったのかは分からなかったが)。しかし、リンネが振り返るのと同時にその魔物は見えない何かに押しつぶされたようにして倒されていたのだ。私たち四聖獣は、今は人の形を成しているが、元は獣だ。耳も、鼻も、ヒトよりずっと利く。だからこそ、神、人、悪魔などの見分けも付くし、使っている術が神が繰り出すものなのか、悪魔が繰り出すものなのかも分かる。そして神獣だからなのか、悪魔に関わる臭いはとても不快と感じる。
そんな中、リンネが振り向いた時から、その不快な臭いが常に漂っていた。白蓮や玄翠は巨大な魔物の臭いだと言っているが…私は確かにそうとも思うが、それだけじゃないと思っている。恐らく朱暖も私と同じ考えだろう。魔物が現れたその瞬間は多少の臭いはあるものの、あまり強烈ではなかった。臭いが強くなったのは、『リンネが振り向いた瞬間から』なのだ。
その後、私はずっと考えていた。なぜリンネから不快な臭いがするのか。リンネは何者なのか。だが考えていても仕方がない。本人に直接聞くことにした。そして琳寧様が聞き取りを受けていらっしゃる時に聞くことにした。場所はここ、修練場でもいいか。
「急に呼んでしまい、申し訳ありません」
「別にいいぜ?どうせ暇だったし。んで?聞きたいことがあるんだって?」
「…あぁ。聞きたいのは昨日の“アレ”か?」
リンネは半分笑いながら聞いてきた。
「自覚しているのなら話は早いですね。さて、ご説明願いましょうか」
そう聞くと、リンネは胡座をかいて座った。
「なら逆に聞くけど、お前は何だと思う?」
質問を質問で返すなんて、癪に障る奴だなと思いつつ、私は自分の仮説を話し始めた。
「あなた、あの魔物に何かしましたよね。それも人間の業でも、神の業でもなく…悪魔に近い業で」
リンネは鼻で笑う。
「このままだとあなた、人間ではない事は確定してしまいますよ?強いて人間だったとしても、確実に悪魔と関わりを持つ者。どちらにせよ、あなたが危険な人物というのには変わりありません。どう弁解するおつもりで?」
「あーこわいこわい」
ふざけたように返事をする。
「俺がもし、お前の言う存在だったとしたら…お前はどうするんだ?」
「当然、排除するほかないでしょう」
私は即答した。「どうするんだ」そう聞いてきたという事は、肯定したという事だろう。私は攻撃の構えをとった。
すると、リンネは自身の手で目を覆い、笑い出した。
「殺る気満々じゃねぇか。でもまぁ、安心しろよ。お前が思うような変な奴じゃねぇとだけは言っておく」
やけにこいつは私をはぐらかそうとする。私はそんな彼の態度に少々腹が立った。
「おい、私は本気ですよ。もっと真面目にー」
私が話している途中で、彼は目を覆っていた手を少し下げた。
手の隙間から鋭い目が見える。殺意は込められてはいない。込められていないはずなのに!!背筋が凍り、冷や汗が止まらない程の異質な気配を感じる。息が詰まる。体が萎縮して動かない。動け、動け、動け、動け!!
急に肩にぽんっと手を置かれた。
「まぁまぁ、そんなに緊張すんなって。これから琳寧の世話をしてくれるんだって?俺とも関わること多くなるんだし、仲良くしよーぜ!」
俺はまたイザナギに呼ばれたから行ってくる。そう言って、凛音は修練場から出ていった。私は全身の力が抜け、気付いたら床に座り込んでいた。
「…にぃ」
「青にぃ!!」
白蓮の声で、私はハッとした。
「も〜!琳寧ちゃんと仲良くなる場なんだから、ぼーっとしないで!!」
「…あ、すみません。少々考え事をしていまして…」
「大丈夫?疲れてない?」
琳寧様が気遣ってくださる。
「お気遣い感謝いたします。私は元気ですので、お気になさらず!」
琳寧様は本当にお優しい。すぐに他人の心配をできる少女だ。そしてどんな仕草でも愛らしい。見ているだけで癒される。…だが、そんな時間もいつかは終わるのがこの世界の理だ。
修練場の扉が開いた。
「お、やっぱりここに居たか。ただいま、琳寧!」
凛音さんの帰還だ。