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高杉と銀ちゃんが離れられなくなる話(=共依存擬き)
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いつも私の書く物語を読んで頂いてありがとうございます。
この世には或る病気があった。出現した星は不明、ただその名を〝 遊夢 〟とだけ大江戸病院の奥深くに眠る資料に記されていた。
そして愛する者、最愛の者と居なければどんどんと朽ちてゆくその体はいつかは死に至る。だが反対に愛する者同士とでその身を交わうならば、長寿の体を手に入れられると言う。症状は、人間が、天人が持ちゆる感情が無くなっていく。また悪夢や生活への支障を来してしまう。
そして最後には… 体の何処かに薔薇の刺青が入る、とだけ。
「せんせー冗談止そうぜ」
坂田銀時は滝のように汗を流していた。
「こんな冗談言いたくありませんよ、私医者ですし」
目の前の医者が言った言葉が今でも頭の中に反響する。
「いやいやアンタよく同僚に面白くもネェ冗談言ってるじゃん、知ってるからね?」
瞳の赤が揺らぎ見せられた写真を見る。
「坂田さん、アナタ」
「遊夢です」
俺は人生で三回と無い大きな溜息を吐いた。
同時刻。一人の男は笑った。
「…お主この事実によくもそう笑っていられるでござるな」
「そ、そうッスよ晋助様一先ず落ち着かないと…」
一番戸惑う筈の男は煙管を燻らす。
「俺は誰よりも落ち着いてらァ…くくっ、俺が〝遊夢〟ねェ…」
翡翠の瞳の奥にチラついたのは綺麗な銀色だった。
「おい万事屋いつも以上に顔死んでンぞ」
「もともと俺の顔が死んでるみてェに言うんじゃねェよ」
真選組の屋根修理の依頼が終え賄いとして出された大福を銀時は食べていた。勿論神楽と新八も隣で嬉しそうに甘味を頬張っている。
先週受けた診察の末導かれた病名、遊夢。
最愛の者と居なければ必ず死に至ると言われたその病気に俺は頭を抱えていた。
俺の最愛、もう手の届かぬトコロに居る。
高杉晋助_俺の初恋の人物だ。
あの日、あの時、先生を斬ってしまった俺を憎んだであろう二人。きっと俺を殺してしまいたいほど嫌っているであろう二人。
幼少時から抱き続けた恋心に終止符が打たれた。
「…なァみんな」
俺が死んだら悲しい?」
ふとその疑問が頭を過る。遊夢については何度か聞いたことがあったもののきちんと説明を受けて思ったのだ。このまま、アイツ、高杉と、晋助と、過ごさずに死を遂げたらこの者達はどうなってしまうのだろう。
「勿論アルヨ!でも銀ちゃんはゴキブリ並の生命力だから心配要らないネ」
「まぁそうだね…」
「俺ァテメェ死のうがどうでもいいわ」
「土方さんはホント素直じゃねェ、正直に想いも告げられぬまま逝かれたら悲しいって言えばいいのにねィ、因みに俺は悲しいですぜ旦那は俺の兄貴みてェな人ですから」
「万事屋が居なくなっては悲しいなァ…でも急にそんな質問どうしたんだ?」
まぁこの者達なら当然の答えであろう。近藤の問いに息が詰まるが今言ってしまえば絶対に最愛の人は誰だ、なんて話になってしまう。
「いやァ俺いつかぽっくり死ぬかもじゃん?今日の屋根修理だって若しかしたら転落死も有り得たでしょ?」
「怖いこといわなでくだせェ」
「…ま、例えばの話だし気にすんなよ」
そう言ったはいいものの心のどこかであの蝶に会いたいと願ってしまった。トんだ下心だ。この病気を利用するなんて甘っちょろいお考えは捨て即座にその場から立ち去った。
▽▲▽
そして万事屋に戻ろうと明るく活気のある町を見渡す。このまま…逝けたら、どれほど幸せなのだろうか。そうして目を閉じて瞼の奥に居る彼を見詰めた。
「…まァ幸せになる権利も資格も疾うの昔に無くしちまったしなァ」
そのぼやきは団子屋の爺さんの声で遮られた。横に居る神楽や新八にもその声は聞こえず、静かに空気中へと溶けた。すると嗅いだことのある香りが鼻の奥を突いた。体が勝手に、いやどこか本望でもある様に動き出した。向けられたのは薄暗い路地裏。
望んで良いかな
信じて良いかな
進めば進むほどその思考は巡りだした。
「…しん、すけ、…」
不自然極まりない銀時の後を着いてきていた子供達二人は路地裏に居る人物に言葉を無くした。紅桜の件で刀を交えた男だ。警戒心が生まれるもののそれは直に驚きへと変わる。
「しん…、しん、すけ…」
彼が高杉に身を委ねた。引かれるように、操られるように、だがその行動はどこか銀時が自ら動いたようにも見えた。
「…随分と無理をさせてたみてェだなァ、銀テメェが望むなら俺はテメェと居てやっても構わねェぜ紅桜の件じゃァテメェに俺を斬らせるハメになっちまったしよォ 」
「それにテメェも俺と〝同じ〟だ、このままじゃ死んじまう」
その言葉に銀時は目を丸めた。
まさか、高杉も遊夢なのか…?
俺に自覚症状が出たのはつい最近、断定されたのは先週。ならばこの男はいつから…
そんな事を考えていると高杉は俺の耳元に唇を近付ける。
「…発作がおさまるまで匿ってやる、どうにか餓鬼共説得してこい」
ビクリと俺の体は悲鳴を上げた。鼓動がドクドクとうるさく俺の耳に打ち付ける。振り向いて涙を流す俺を心配している子供達の肩に手を置いた。目線を合わせるように少し屈んで俺は一言。
「直ぐ戻ってくる」
「戻れる保証なんてドコにもねェッてのにあンなこたァ前以上に馬鹿になりやがったか?」
鬼兵隊の艦に向かっているのは一目瞭然。俺は高杉に手を引かれて歩いていた。
「…晋助は俺を誘拐したり監禁したり、そんなバカな事しないでしょ?」
「ふんっ言ってろ…テメェ遊夢についてはドコまで知ってる」
問い掛けられて思い出すのは医者の顔付き。いつもお世話になっていた先生で今回の件にはとても尽くしてくれている。
「…最愛の人と居ないと死ぬ、対症療法も無いし…根本的に俺は無理だって」
「…遊夢の基本的な症状は栄養失調に精神状態の高低差が極度に激しくなる、まァ…その最愛のヤツと居りゃァ分かり易い様に完璧な症状が出る」
流石は鬼兵隊の情報網。まだ医師達でさえ手に入れていない事まで熟知している。
「完璧な症状って…?」
すると高杉はピタリと足を止めた。振り向いてその鋭く光った翡翠を俺に突き刺した。
「こうやって…磁石みてェに密着するんだってよ、ソイツと居るだけで体の回復も、健康体に戻るとか…」
厭らしい手付きで高杉は俺の指をその手で絡め取る。両手は彼の細く長い指で塞がり、気付けば彼の顔は目の前にまで迫っていた。
「…晋助も遊夢なんでしょ…?危険なんだったら最愛の人と居れば良いのに…なんで俺の所に来たの」
「…ッはぁ………」
彼の目は真ん丸になり、驚きの色を見せる。だってその通りだ。彼には彼の最愛の人が居る、多分大江戸病院のカルテでも盗み見て俺の〝遊夢〟を知っていたのだろうが何故態々俺の所に来ているのだとそれはもう疑問でいっぱいだった。
「馬鹿、阿呆、間抜け」
「なッ…!!」
「…俺も遊夢、テメェも遊夢…そんでなんで俺がテメェに会いに来たのか分かんねぇんだよ…」
「…はぁ…?」
高杉は呆れたようにまた溜息混じりの言葉を吐いた。すると何も分かっていない俺の頬を両手で包む。
どんどんと近くなる彼の顔に俺の体は熱くなった。沸騰するようにカァァアと頬は林檎みたいに真っ赤になる。直視していられなくなってギュッと目を瞑ると唇に優しい感触が伝わった。ちゅ、という音は俺の耳を通り過ぎ状況も右も左すら分からなくなっている俺は勢いよく目を開ける。目を瞑っている彼のスラリと伸びる長い睫毛が視界に入った。
接吻をしている、という事に気が付いたのは彼の唇が離れてからだった。
「手間掛けさせやがってこの人誑し…俺の最愛はテメェだよ銀」
「…ッは……っ…?」
混乱で体が頭がおかしくなりそうだった。高杉の、最愛が、俺、?高杉の言葉に偽りはない。こういう面白くもない冗談をコイツは言わない。でも、今だけは冗談であってほしかった。
頬に何かがまた伝る。
「…嬉しすぎて泣いちまったか、情けねェ面…」
俺は彼から奪ってしまった筈なのに
俺は彼から逃げた筈なのに
なんで彼は
俺を愛すのだろう
俺の涙を拭った彼の手はとても熱かった。
「落ち着いたか?」
俺はそのまま餓鬼のように泣きしゃぐりながらおぶられて艦、そして高杉の自室へと運ばれた。
「落ち着けるわけねェだろッ…!ぅ、う…俺はっ…テメェに愛される資格も、愛される理由も…っ…ないのにっ…ぁあ゛…ぅうう゛…」
「テメェがそれを決めてんじゃねェよ馬鹿、俺が誰を愛そうが勝手だろ」
「でもぉッ…でもッ…」
「…いい加減愛されてる自覚を持てよ、俺ァ好いてねェヤツに接吻も抱擁も、況してや部屋に招き入れるなんて野暮なこたァしねェ」
「──ッ…」
「俺は銀を愛してる、これじゃ駄目なのか?」
改めて言葉にされるとまた目尻が熱くなる。
「だめ、ッ…じゃ、…ない…っ…でも、…おれは、おれは…晋助から逃げて…うばってっ…それでも、ッ晋助のこと…諦めきれなくてっ…どーしよーもない…くらい、…あいしてる、…っ…」
「くくっ、なら今流してる涙は嬉し涙かァ?」
「うっさいッ…!おまえ、おれのこと…嫌いだって、おもってたからァっ…りょー、おもいとか、っ…」
「なら俺は何回でも言ってやらァ…銀、愛してるこの世界で誰よりも…先生を奪ったのはテメェじゃねェ、それに俺が壊そうとするこの世界を一番嫌って…愛しているのはテメェだろう、いっつも一人で背負い込んで気付いたら大怪我してやがる、そんなテメェが愛おしいって想っちゃ迷惑か?テメェが好き過ぎてしょうがねぇ俺はおかしいか?」
潰れてしまった左目すらも瞼を通して分かる彼の深刻な表情は俺の鼓動をまた高鳴らせる。
「迷惑じゃねーしッ…俺も好き過ぎてきもちわりィわバカっ…!」
「素直なテメェも可愛い、存外俺ァテメェが好きで堪らないらしいなァ…」
気付けば密着している体はまた熱くなる。高杉の胸に顔を埋めている俺には聞こえた。俺と同じくらい、いやソレよりも、うるさくなっている彼の鼓動に。
態と聞かせているのだろうかと見上げると、そこには不適に笑う彼がいる。
「テメェも俺も、うるせェなァ」
「ドキドキしちゃ悪いかよバーカ…っ」
「…いいや、すげぇ嬉しい」
目を細めた彼の笑みは、幼少時、始めて見て見蕩れてしまった笑みにとてもよく似ていた。
「あァ…忘れてた、テメェに拒否権はねェが俺のモンになるんだ贈答品くらい用意してあるぜ 」
「別にもう離れられないんだったらいーでしょ…で、旦那さんになる高杉からの初めてのプレゼントはなんなの…?」
「くくっ…先生にも負けてられねぇからなァ…名前くらいはやるぜ?」
「…松陽が初めて俺にくれたプレゼントは名前と刀、晋助が初めてくれるプレゼントは…名前と、…何?」
「そうさなァ、これはどうだ刀みてェに永遠に持ってて貰わねぇと困る」
そうして高杉は俺の手を優しく上げる。嵌められたのは指輪。ということは…
「…先生には勝てたか?」
「…指輪と名前、刀と名前、どっちが勝つと思う?笑」
「まァ、今の俺じゃァ先生に勝てるはずもねェなァ…」
そう言って高杉は俺の瞼にキスを落とす。
「…引き分けだわ、バーカ」