テラーノベル
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第一話
俺の家の左隣には、幼なじみが住んでいる。
名前は、佐野勇斗。
物心ついた頃からずっと一緒で、朝になれば「おはよう」と声を掛け合い、学校へ向かう。
昔から変わらない、俺の日常だった。
──ただ一つ。
変わったことがあるとすれば。
🩷「仁人ー!」
窓の外から聞こえた声に、俺はカーテンを開ける。
向かいの窓から顔を出した勇斗が、制服姿のまま笑っていた。
🩷「また寝ぐせ。」
💛「えっ!?どこ!?」
慌てて鏡を見る俺を見て、勇斗は吹き出す。
🩷「うそ。」
💛「おい!勇斗!」
昔から変わらない。
人をからかうのが好きで、誰にでも優しい。
それが俺の知っている勇斗だった。
◇
学校へ着くと、幼なじみの空気は一変する。
「佐野くん、おはよう!」
「昨日の歌番組見たよ!」
「ライブ最高だった!」
次々に声を掛けられる勇斗。
そう。
彼は人気アイドルだった。
テレビで歌い、踊り、多くの人を笑顔にする存在。
それでも学校では風紀委員長を務め、先生からも生徒からも信頼されている。
誰にでも分け隔てなく接する姿は、小さい頃から何も変わらない。
🩷「仁人、行こ。」
振り返って笑うその顔は、やっぱり俺の知っている勇斗だった。
俺は、この先もずっとそうなんだと思っていた。
あの夜までは。
◇
💛「……やっちまった」
家に帰って鞄を開けた俺は、小さくため息をついた。
明日提出の課題がない。
教室の机に忘れてきた。
時計を見る。
午後十一時四十分。
学校までは歩いて十分ほど。
💛「すぐ行って帰ってくれば大丈夫だよな。」
俺は一人、夜の学校へ向かった。
◇
静まり返った校舎。
誰もいない廊下。
足音だけが響く。
教室へ入り、机の中から課題を取り出す。
💛「よかった……。」
その瞬間。
教室の時計が目に入った。
23時59分。
あと一分。
なぜだろう。
胸がざわつく。
──ゴーン。
時計が午前0時を告げる。
その瞬間だった。
廊下の蛍光灯が、一斉に点滅する。
チカ……
チカ……
冷たい空気が校舎を包み込んだ。
窓がひとりでに軋み、風もないのにカーテンが揺れる。
昼間とはまるで違う。
学校そのものが、別の場所になったようだった。
💛「……なに?」
その時。
廊下の奥から、誰かの足音が聞こえた。
コツ……
コツ……
ゆっくり近づいてくる。
俺は恐る恐る教室を出る。
そして、その姿を見つけた。
💛「……勇斗?」
制服姿。
見慣れた背中。
間違えるはずがない。
でも。
何かが違う。
張りつめた空気。
静かな横顔。
俺の知っている勇斗じゃない。
彼はゆっくりと振り返った。
その瞳を見た瞬間、息が止まる。
優しい笑顔なんて、どこにもなかった。
🩷「……帰れ。」
低く響く声。
初めて聞く声だった。
俺は言葉を失う。
その時。
廊下の奥から、黒い影が現れた。
人のようで、人じゃない。
闇が形になったような存在。
勇斗は俺の前へ立つ。
俺をかばうように。
🩷「ここから先は——俺の仕事だ。」
その一言だけを残し、闇へ歩き出す。
💛「ま、待って……!」
名前を呼ぼうとした。
💛「は──」
でも。
声が出ない。
違う。
目の前にいるのは、俺の知っている勇斗じゃない。
同じ顔なのに。
同じ声なのに。
まるで別人だった。
俺は、その名前を最後まで呼ぶことができなかった。
⸻
🩷
仁人が名前を呼べなかったことに、
気づかないふりをした。
それでよかった。
そう思わなければ、
きっと、もう戻れなくなるから。
コメント
1件
めっちゃエモい…!最初の窓越しのやり取りとか、幼なじみの日常がほっこりするのに、夜の学校での勇斗のギャップが凄すぎて心臓ギュッてなった😭💕「帰れ」って低い声で言う勇斗、初めて見る顔で鳥肌立ったよ…。でも仁人をかばうように立つ姿に、やっぱり優しいんだなって思った。最後の勇斗の心中描写も切なすぎる…続きが気になりすぎる!!