テラーノベル
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全国大会が終わって、日常が戻ってきた。朝、目覚ましで起きて、
学校に行って、
変わらない席に座る。
クラスメイトは、
俺が全国1位になったことを知らない。
知っていたとしても、
たぶん大して興味はない。
それでいいと思った。
トロフィーは、部屋の隅に置いた。
視界に入ると、
あの日の歓声を思い出してしまうからだ。
確かに、俺は勝った。
全国1位になった。
でも、
壊れた人間関係は戻らなかった。
失った時間も、
過去の自分も、帰ってこなかった。
「勝ててよかったな」
そう言われるたび、
どう返せばいいのか分からなかった。
よかったのかどうか、
自分でもまだ答えが出ていなかったからだ。
ある夜、スマホを開くと
見覚えのある広告が流れてきた。
「神崎悠真、テトリス全国大会優勝!」
俺の名前。
俺の映像。
俺の笑顔。
きっと今この瞬間も、
どこかの誰かが立ち止まっている。
失敗ばかりで、
何者でもない誰かが、
この広告を見ている。
俺は、少しだけ考えてから、
アプリを閉じた。
勝っても、
人生は救われなかった。
でも。
何もなかった俺の人生に、
確かに「本気でやった時間」は残った。
負けても逃げなかったこと。
才能に届かなくても、
自分のやり方を見つけたこと。
それだけで、
全部が無意味だったとは思えなかった。
だから、もし誰かに聞かれたら、
俺はこう答える。
――勝っても、人生は救われない。
でも、
何も挑戦しなかった人生よりは、
ずっとマシだった。