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互いに睨み合う。数秒経ってから、可笑しくて二人同時に吹き出した。

くだらない言い争いをしてたら、緊張なんてどこかに行ってしまったようだ。

脱力してシートに深くもたれる。

「はぁー……もう喧嘩はやめよう。口喧嘩でも疲れる」

「すいません、准さん。お疲れなのに俺とデートまでしてくれて……って、そういえばこれデートでしたね。俺は何か酔って吐いて押し倒されてまた吐いて泣いた記憶しかないんですが」

「大体合ってるよ」

准は冷静に答えると、車のエンジンをかけた。

「その……俺も色々頭の中混乱してて。いわゆるアレです、パニック! パニック状態だったんです」

「はいはい、分かった分かった」

「いや、恥ずかしい……黒歴史だ……しかも准さん……」

「ん? 何?」

涼は言いかけて、顔を真っ赤にした。さっき彼と長いこと抱き合っていたことを思い出して。

「な、何でもないです……」

けど、やっぱり言えない。これは蒸し返さず、触れないでおこう。


けどどうしても、傍にいてくれという言葉が頭から離れない。

まぁあの時は極限状態だった。だから聞き間違いの可能性もある。

「疲れてたからな……」

それは独り言だったのだが、隣で聞いた准は頷き、呟いた。


「疲れたな。さっさと帰るか。……俺らの家に」


准はハンドルを握ったあと、シートベルトを着用するように涼に促す。


「え。って言うのは、准さんの……?」

「もちろん。それ以外ないだろ」


そ……そうなんだ。

涼は目で答える。それが伝わったらしく、准は苦笑しながらハンドブレーキを下ろした。


帰る。准さんの家に……。


家。居場所。居心地の良い、場所。

ずっと探して求めていたもの。それは確かに、子どもの頃から憧れていて……親がいなくなってからは余計に強く想った。


ただ一つ怖いのは、創さんのときと同じ。

頼ったことで返ってきた代償のこと。

俺は、まだ怖い。


「涼」


俯きかけていたけど、名前を呼ばれて振り返る。


「家に帰ったら、また聴かせてくれよ。不安とかはもちろん、お前がやりたいこと全部」





ファナティック・フレンド

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