テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
涼は隣へ視線を向ける。
本心をさらけ出すことでどう思われるか、分からなくて怖い。正直、知ってしまうことも怖い。
「……」
だから無意識に距離を置く。きっとこれは俺が特別臆病なせいだろう。隣にいる彼にはない悩みなんじゃないだろうか。
このめんどくさい性格のせいで彼の好意すら素直に喜べない。そんな自分に嫌気がさし、ため息が出そうになる。……それでも。
「涼。あの、さ」
「はい?」
掌が重なる。
彼の手はわずかに震えていた。そして、声も。
「家に帰って……で、良かったら……また何か飯作ってくれ」
彼はこちらを見ずに俯いている。それを見るまで全然気付かなかった。
そして、今さら分かってしまった。
自分がどう思われてるのか分からないなんて当たり前で、……真剣に相手のことを考えてなきゃ抱かない不安なんだ。
そうか……。
手の震えを感じて、やっと気付いた。この人も例外じゃないし、特別じゃない。
俺と同じ。本当は怖かったんだ。
「好きな物、何でも言ってください。何でも作りますよ……!」
それが分かったら、悪いけどすごい嬉しかった。
────嬉しすぎて、また泣きそうだった。