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早朝、私は笠を被り木刀を腰に差した
竈門兄妹が起きねぇうちに、さっさとここから出てかねぇとな
身支度が終わり、私は玄関でブーツに履き替えていると
「色葉ちゃん。」
「?葵枝さんじゃねぇか。」
後ろから声が聞こえ、振り向くとそこには柔らかに微笑む葵枝さんがいた
「もう少しいても良かったのに、」
「、いんや、そんな事したら私が離れられなくなっちまうだろ」
「ふふっ。あの子達も色葉ちゃんにベッタリくっついてきそうね」
ブーツを履き終わり、私は葵枝さんと向き合った
「色々世話になったな。また近くに寄ったら来るよ」
「えぇ。あ、あとこれ、持って行ってくださいな」
そう言い、葵枝さんはとある包み袋を私に渡した
「?握り飯か?」
「えぇ。お腹が空いた時にでも食べて?今日のは自信作だから」
「おう。有り難く頂戴するぜ」
私は握り飯を懐にしまい、戸を開けた
「んじゃ、オヤジとアイツらによろしくな」
「えぇ。気をつけていってらっしゃい」
いってらっしゃいという言葉にくすぐったさを覚えつつ
私は振り向く事なくその場を後にした
________
色葉ちゃんが去り、私は色葉ちゃんが使っていた部屋へ向かった
布団などを片付けた後、炭治郎達の朝食の準備をしようと
部屋に繋がる障子を開いた
しかし、そこには丁寧に畳められた布団と、 小さな机には一枚の手紙とお守りが複数置かれていた
「これ、色葉ちゃんが、?」
動揺しつつも机に置かれた手紙に手を伸ばしそっと封筒を開けた
“この手紙を読んでんのは、葵枝さんか?
まぁオヤジでも良いけどよ、とりあえずこれからして欲しい事を書いていく”
要約すると、夜には出歩かないで欲しい。やむを得ない場合には必ず、机に置かれているお守りを持ち歩く事
そして、家の前には藤の花の香を焚いておく事
そして、何か危険な事があったら色葉ちゃんの名前を呼べと書かれてあった
「危険な事、?」
まだ一日しか会った事がない色葉ちゃんだが
色葉ちゃんは私達より遥か先を見据えている
例えば、私と炭治郎が助けられた時だ。
あの場であれば腰に差してある木刀で脅してしまえば済む話だったのではないだろうか?
しかし、色葉ちゃんは木刀を使わず護身術のみで相手を退けた
もしかしたら自分が、怪我をしていたかもしれないのに
一度、夕飯が終わり炭十郎さんが炭治郎達を寝かしつけている間、その疑問を聞いてみた
すると、色葉ちゃんが言葉を紡いだ
“あの場で木刀使って脅したら、アンタらの町の評判にも関わんだろ”
“もし木刀使ってるとこなんて他の奴らに見られたら、アンタら炭売りづらくなんだろうが”
なんでもないように言い放つ色葉ちゃんの言葉に、私は思わず目を見開いた
まさか、自分達の事をそこまで考えてくれているとは思わなかったのだ
そんな色葉ちゃんが、ここまで言う事なのだ
聞いて得はあれど、損をすることはない筈だ
「、、、」
私は手紙を胸元に抱え、窓越しから見える明け方の空を見上げた
いつかまた、元気な姿で彼女と再会できる日を願って、私はお腹辺りをそっと撫でた
________
「ったく、手こずらせやがって」
竈門家を出て行き、私は浅草を目標に歩みを進めていた
進んでいくと同時に、私は鬼に出会ったらできる限り退治するようにした
そして今宿を探している最中、鬼が丁度人を襲おうとしていた為
一般人との間に入り、相手が驚いているうちに首を斬った
ちなみに、斬った刀はさっき腰の抜けてる鬼殺隊士からパクった
「はぁー、あとでコイツ返しにいかねぇとなぁ、」
私がそう独り言を呟いていると、先程斬った鬼の生首が叫び始めた
「き、貴様ァ、そうか貴様か!!あのお方が探し求めている”鬼の死神”という人物は!」
「あのお方だァ?ってか何その厨二臭ぇ名前、もうちょっとなかった?」
「鬼殺隊の連中とは違く、日輪刀や呼吸を一切使わず鬼を滅する鬼の死神、」
「ねぇちょっと、聞いてる?いやまぁ格好良いっちゃ良いけど、あだ名付けるには厨二過ぎじゃない?」
私が呆れていると、鬼はすぐに消滅していった
「死神って、私どんな印象持たれてんだよ、」
私は先程の隊士の元まで歩みを進めた
「これ、返すわ。あんがとな」
私はポイッと刀を隊士の元へ投げ、足先を変えた
さっさと宿探さねえとなぁ、流石にもう野宿はごめんだからな
________
僕は田中。階級癸、所謂雑魚だ
そんな僕は今日、仲の良い先輩の合同任務にとある田舎町へ来た
しかし、いざ鬼を前にすると足の震えが止まらず、ついにはへたれこんでしまった
先輩はどこか別の場所を調べに行っている為、自分でなんとかするしかない
しかも一般人が襲われそうになっている。しかし、僕の足は俄然言う事を聞かない
ここで僕は終わりなのかと、もっと高級菓子を食べておきたかった
そんな後悔の情念が頭の中を周り、僕は静かに目を閉じた
その瞬間、ふわりと桜のような香りが鼻についた
前を向くとそこには、刀を持った少女が鬼と対峙していた
自分の手元の方を見てみると、そこにはあった筈の自分の刀がなかった
恐らく、少女が現在僕の刀で戦っているのだろう
「ったく、手こずらせやがって」
鬼の攻撃を物ともせず、少女は鬼の首を切り落とした
それから、鬼が何かを叫んでいるようだったが、僕はそれどころではなかった
少女は斬ったのだ。呼吸を使わずに、ただの剣術で
しかし、少女の剣術はしなやかであり、それでいてどこか力強かった
「これ、返すわ。あんがとな」
「おわっ、」
ぼーっと先程の事を考えていると、少女が僕に刀を投げそのまま去って行ってしまった
「おい田中!大丈夫か!?」
「せ、先輩、」
少女が去った後、後ろから先輩に声をかけられた
「?お前、鬼を斬ったのか?」
「いえ、さっき女の子が僕の刀で、」
「女の子?呼吸も使わずにか、」
先輩は何か考える素振りを見せ、僕に手を伸ばし立ち上がらせた
「ひとまず、ここから一旦引くぞ」
「は、はい」
僕と先輩は急足でその場を後にした