晴れやかな秋空の下、とある屋敷の庭に女三人に男が一人いた
「にしても、助けた礼にこんなに貰えるとは思わなかったぜ」
俺はこの間任務で助けた一般人から大量に貰った芋の入った箱を縁側に置いた
「わぁ、さつまいもがいっぱいです!」
「ほら須磨ァ!ボサッとしてないで火焚くの手伝いなァ!」
「は、はいぃ!」
須磨はまきをの元へ向かい、怒鳴られながらも須磨が懸命に火起こしを手伝っている
縁側に座りその様子を見ていると、薪を持った雛鶴が俺の隣に腰掛けた
「、懐かしいですね。確か、色葉ちゃんが食料庫から芋を盗んで焼き芋したんですよね」
「あぁ。あん時は、 色葉が火力を間違えて危うく里全体を燃やしちまうとこだったけな」
あの時の焦った顔は中々面白かったなと、色葉の顔を思い出し、思わず笑ってしまう
「ふふっ。確か、火を消す為に水を掛けたと思ったら油だったんでしたっけ」
「そーそ。ったく、そのおかげで長から長ぇ説教を受けたぜ。」
雛鶴は小さくクスリと笑うと、すぐに空を見上げた
「色葉ちゃん、今頃何をしているんでしょう、」
「さぁな。ただ目撃情報によりゃあ、鬼を狩りながら旅をしてるみてぇだ」
流れるような秋風が髪を揺らし、落ち葉が宙へ舞った
俺も空を見上げると
「雛鶴さーん!薪をお願いしまーす!」
「あ、はーい!それでは、天元様」
「おう。派手に美味い焼き芋を頼んだぜ」
俺は須磨達の元へ向かう雛鶴にそう声を掛け
再び空を見上げる
__お前折角良いツラしてんだから、んな俯くなって。__
__おいィィ!!何でこれ更に燃えてんの!?って、これ油じゃねぇか!__
__お前は孤独なんかじゃねぇよ。隣に私がいんだろ?__
色葉の言葉が、こだまのように俺の心に響き渡る
なぁ色葉。どうやったら、お前は俺の元に来てくれるんだ
________
「、何でどこも満室なんだよクソ、」
あの後私は手当たり次第宿を訪ねたが、どこも満室であった為泊まる事は叶わなかった
もう昼間だし、夜ぶっ通しで歩いたからめっちゃ疲れた、もうムリ、
重いため息を吐いていると、腹の虫が大きく響き渡った
「腹減った、。あ、そういや葵枝さんから握り飯貰ったんだっけな」
私は隅にある長椅子に座り、笠を隣に置いた
「ふー、さて、おにぎりの具はなにかなー?」
私はワクワクした気持ちで包み袋を開け、海苔が丁寧に巻かれた握り飯に齧り付く
「んむっ、しおむすびか。久しぶりに食ったな」
一口目を咀嚼し終わり飲み込むと、また一口と齧り付こうとすると
「、、、」
「、?」
ふと視線を感じ、前を向くと
そこには桜色と薄緑のグラデーションの髪色に三つ編みされている少女がいた
少女は私とは目が合わず、その膝下に置かれている握り飯を見ていた
、いや、完全に未来の恋柱じゃないっすか
えやば、女性キャラの中の推しが現れたんだけど、えどうすればいい?
しかもロリ、これもう誘拐して良いよっていうお告げ?お告げだよね完全に
口角が上がらないよう耐えているが、頭ん中ではピンク一色になっている
しばらく経つと頭が冷静になり、一呼吸を置く
いや落ち着け私、いくら何でも誘拐はやばい
恋柱の両親と蛇柱にぶっ殺される
私はチラリと握り飯の方を見て、ちょいちょいと少女に手招きした
なんか餌で釣るみたいで嫌だけど、流石に直接声掛けにいったら不審者扱いされる
すると、ジェスチャーに気付いたのか恋柱がこちらに歩み寄った
「あ、あの!ごめんなさい!その、たまたまおにぎりが目に入っちゃって、」
少女は慌てた様子で私に頭を下げ、そう謝罪の言葉を紡いだ
しかし、それは少女から鳴る腹の音で全て台無しになった
「あ、そ、その、」
顔が真っ赤に染まる恋柱に頭ん中が発狂するが、私は表情が耐えているうちにおにぎりを手に取る
「ん。これ食えよ」
私は食べかけのおにぎりを齧りながら、恋柱に新しいおにぎりを差し出す
「で、でも、」
「腹減ってんだろ?腹空かせてるガキを見捨てる程落ちぶれちゃいないんでね。私は」
良いから食っとけよ。と私が促すと、少女は嬉しそうにおにぎりを受け取り隣に腰掛けた
「いただきまーす!」
少女はそう言い、おにぎりへと齧り付いた
食いっぷりがよろしいですなぁ、ってかめっちゃ可愛い何この子
「美味いか?」
「うん!すっごく美味しい!」
最後の一口を咀嚼しながら、恋柱の頭を撫でた
「お前、名前は?」
私がそう問いかけると、ゴクンという飲み込む音が聞こえた
「私、甘露寺蜜璃!お姉ちゃんは?」
「夜斗色葉。蜜璃か、可愛い名前じゃねぇか」
私がそう褒めてやると、蜜璃は嬉しそうにしながら頬を赤く染めた
はい可愛い。何この子優勝やろこりゃ蛇柱も惚れるわけだわめっちゃ可愛い
これ以上は私の心臓が持ちそうになかった為その場で立ち上がり笠を被った
「んじゃ、私はもう行くわ」
「え、もう行っちゃうの、?」
私がそう告げると、蜜璃は寂しそうな顔を浮かべた
はい優勝。可愛い大賞受賞おめでとうございます
「、またいつか必ず会えるさ。お前が、そうだな、もう少しでっかくなってからな」
「!本当!?」
「あぁ。約束な」
私は蜜璃と小指を絡ませ、その場を後にした
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