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帰り道、夕焼けが街をオレンジ色に染めていた。誠也くんの隣を歩くたびに、手が何度も触れそうになって、そのたびにお互いそっと目をそらす。
さっきまで握っていたくせに、なんだか照れくさくなっていた。
『なあ』
「ん?」
『手……もう一回、繋いでええ?』
その声に、小さく頷く。
そっと差し出した手を、誠也は優しく包んだ。
触れた瞬間……
胸の奥が、ズキンと鳴った。
どこかで、前にもこの手を握ったことがある気がした。
温かさも、力加減も、指の形すらも。
『……どうしたん? 顔、ちょっと強ばってるで』
「ううん……なんか……懐かしいなって」
『懐かしい?』
「うん。誠也くんの手、昔どこかで触れた気がするの。夢の中……じゃない。もっと現実で。でも、それが“いつ”“どこで”なのかが、どうしても思い出せない。」
誠也くんは私の手をきゅっと握り直した。
『それ、俺もや。初めて会ったはずやのに……どこかで“待ってた”みたいやった。ようやく出会えた、って思ったんよ』
夕日が2人の影を長く伸ばしていく。
言葉じゃ説明できない感情が、胸の奥でゆっくり動きはじめる。
『運命ってさ、出会った瞬間に全部がわかるんやなくて。時間かけて、じわじわ気づいていくもんなんかもしれんな。』
「……うん」
この出会いには、何か意味がある。
その確信だけが、私たちの手の間から離れなかった。