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その夜、ひとりベッドに戻った私は、窓の外をぼんやり見つめていた。街の灯りは遠くて、なのに心の中はざわざわと近くで何かがうごめいている。
あの手を握った感触。
あれはただの“初めてのドキドキ”なんかじゃなかった。
もっとずっと、深いところに触れた気がする。
「……本当に、どこかで誠也くんに会ったこと、あるんかな。」
声に出してみると、胸の奥が小さく反応した。
その反応が、また苦しくて、愛しくて。
思い切ってスマホを手に取る。
メッセージアプリを開くと、誠也くんからの通知が届いていた。
『さっきまで隣におったのに、もう声聞きたなってる。こんなん初めてや。』
ふっと笑みがこぼれる。
それなのに、なぜか涙がにじんだ。
「私も。……会いたいって、もう思ってる」
そう打ち込んで送信する。
すぐに返ってきた返信には、いつもの誠也くんの関西弁があって安心した。
『次は明日な。あんたと会わんと1日終わらへん気がする。』
読みながら、また胸がきゅっとなる。
この感情が“恋”なのか、それ以上なのか……自分でもわからない。
けれど、確かにひとつだけ思うのは。
私はこの人を、知ってる。
過去のどこかで、ちゃんと。
この気持ちだけは、嘘じゃない。