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停車した112号車のエンジンの振動が朱音の足元を揺らす。ただそれが実際のエンジンの物なのか、ガクガクと震える脚なのか朱音には判別が付かなかった。料金メーターがパタパタと回り続ける。
「・・・戻って下さい」
「嫁が居るって知らなかったんですか」
「道に戻って」
「そりゃ酷いなぁ、騙されたんですねぇ」
雨が窓を叩き付ける。周囲に建物も無ければ明かりの灯る民家もない。有るのは誰も居ない芝生の河川敷と”手取川”何処までも広がる暗闇だけだ。
「・・・・だって!指輪してないじゃない!」
「知らないんですねぇ」
「何が!」
「タクシードライバーって基本しないんですよ。毎日車洗うと指輪、汚れるでしょ?」
「そんな、そんな事ない!」
「誠実な俺は、着けてますけどね」
太田が左手を朱音の目の前でひらひらさせるとプラチナの指輪が鈍く光った。
「嘘!だって、西村さん私の事好きだって、一緒に居ようって!」
「デリヘル嬢に本気で惚れると思いますか?」
「嘘よ!」
朱音の握り拳が運転席の背面を叩く。
「毎回、毎回、乗車料金パタパタさせて金、貢いでたんでしょう?」
「好きだって!」
「毎回、毎回、西村のチンポ咥えて、あいつ喜んでたんでしょう?」
「大好きだよって!」
「デリヘル嬢の身体が好きなだけですよ」
「そんな事・・・・ない!」
太田は助手席から茶色の革のポーチを取り出すとチャックを開け、一万円札を1枚、2枚、3枚、4枚、5枚、6枚とひけらかす様に出して朱音の鼻先をペシペシと叩いた。
「ねぇ、《《金魚》》さん、あんた幾らならその股・・・開いてくれます?」
後部座席に一万円札がハラハラと舞い落ちる。
「・・・・・・え」
「あんたの値段は幾らか聞いてるんですよ」
太田は舌舐めずりするような声色で朱音の顔を凝視しながら助手席の脇のハンドルを上げシートをバタンと倒した。その反動で朱音のワンピースの裾がふわりと捲れ、暗がりに白く滑らかなラインの脚が浮かび上がる。
太田はその大柄な身体を捻ると助手席側に移動したが、偶然その靴底が料金メーターの精算ボタンを蹴り上げ、その動きを止めた。
「綺麗な脚ですねぇ。なのに手首はズタズタじゃないですか」
「・・・・!」
「あんた、頭、おかしいんですね。可哀想に、ねぇ?」
「違う!」
「だから不倫なんて出来ちゃうんだ」
ズズズと朱音の太ももにゴツい指が伸びる。左手がそれに続き小さな胸を掴んだ。
「胸、小さいんですね、西村はロリコンなんですね」
「・・・・・やめて下さい」
「やめて下さい?今更、嫌もクソもあるかよ。デリヘルの癖に」
太田の悪意に満ちた汗ばむ指先に、朱音は心底震え上がった。けれど声を出してもこの暴風雨では誰にも届かない。周りを見渡しても明かりはない。暗い闇が彼女を押し潰す。もう絶望しかなかった。近付くムスクの香りに吐き気がした。
24:45
ピピピピピピ ピピピピピピ
その時、朱音のワンピースのポケットの中で携帯電話の着信音が鳴った。太田の指が服の上から朱音の腰のあたりを忙しなく探り、指先に触れた硬い物を取り出して見せた。
「あ・・・・っ!」
太田が朱音のポケットから赤い携帯電話を取り出すと《《西村さん》》と目障りで鬱陶しい男の名前が表示された。それを朱音に見せる。画面の明かりに碧眼の目が浮かび上がる。
「ほら、嘘付き野郎から電話だぜ」
太田が携帯電話の通話ボタンを押すと朱音はありったけの声量で西村に助けを求めた。
「西村さん、助けて西村さん!」
「朱音?一応迎えに来たんだけど、もう帰ったのか?」
「西村さん、助けて!」
「は?」
「かわ、”川北大橋”助けて!」
「”川北大橋”?」
無情にもそれは太田の指で切断され、サイドウィンドウを開けるとその携帯電話を車外に放り投げた。開け放たれた窓からは風が吹き込み、秋の冷たい雨が太田の背中を打ち付けた。グレーの制服のジャケットはあっという間に黒く濡れ、朱音の赤い携帯電話は水煙の上がる泥の中に転がった。
「嘘ついたのね!西村さん、風邪なんてひいて無いじゃない!」
「嘘つきは西村だろ?」
そう言うと朱音の左肩を力任せに運転席側のドアに押し付け、太ももに這わせていた指を淫部に当てがい《《場所》》を確認するといきなり押し込んだ。
「いた、痛いっ!」
「こんなの慣れっこだろ、デリヘルで稼いでたんだろ?ん?」
太田の指は容赦無く膣内を乱暴に掻き回して出し入れした。朱音はその痛みに抗おうと両腕を振り回し、それが太田の頬に当たった。
「何しやがんだよ!デリヘルならデリヘルらしくアンアン言えよ!」
そう強い口調で怒鳴り付けると朱音の右頬を平手打ちした。その衝撃は頭蓋骨を通り越し脳みそを左右に揺った。閉じた目の奥がチカチカと眩む。ジワリと口の中に鉄の味が広がった。
「そうだよ、最初から大人しくしてりゃ良いんだよ」
カチャカチャとベルトを外す音が耳に届く。
「嫌だ!いや!いや!」
朱音は思い切り左脚で太田の腹を蹴った。一瞬、動きが怯んで腹を抱え込む。それを見計らい無我夢中でガチャガチャと後部座席のドアを開け様とするが指先が震えて開けられない。
「この、くそ|女《あま》!」
太田は朱音の腰を掴むと思い切りパンティをずり下ろした。