タクシーを叩きつける雨、水煙の中にぼんやりと浮かぶ北陸交通の行燈。
朱音の腰を引き上げた太田は大きく反り返ったそれに右手を添えると朱音のひだに割り込ませ思い切り突き上げた。
「ん、ングっ!」
まるでヒキガエルが車に轢かれたような声とも音とも取れないものが朱音の口から飛び出す。濡れてもいない膣内で出し入れされる激痛、両手両脚の自由が奪われされるがままの朱音の嗚咽等お構いなしに太田は無我夢中で腰を前後に振り続けた。
ガタガタと揺れる車体は暴風雨のものなのか朱音の膣の中で出し入れされる太田のピストン運動のものか判別が付かない程に激しかった。
暴風雨の中で展開されるこの非日常的なシチュエーションは太田にとって過去最高に刺激的で、これまで1度も味わった事のない快感が全身で跳ね回っていた。
「堪んねぇな!ほら、テメェも腰動かせよ、動けや!」
雨音を掻き消すような怒号と興奮した男の息遣い。絶え間ない膣内の痛みに晒され続けた朱音は身体の芯から凍える感覚に襲われた。
(寒い)
ふと伸ばした指先、座席シートの下で《《何かが》》触れた。
「・・・・・・おっ、あ、あ」
腰の動きがより激しくなり、膣口は悲鳴を上げる。それが数分続いただろうか、突然ビクビクと身体全体を痙攣させ呻き声を上げた太田は容赦無く朱音の膣内に勢いよく性液を吐き出した。朱音の淫部から白濁した液がドロリと流れ出て赤い筋がそれに入り混じり後部座席のシートを汚す。
「気持ちよかったぜ、これで西村と《《おあいこ》》だな」
ニヤニヤと歪んだ表情で萎んだソレを朱音の中から抜こうとしたその時、太田の額に激痛が走った。
「グッ・・な、何しやがる!デリヘルがイキがってんじゃねぇぞ!」
太田がその場所に手を遣るとぬるりと生暖かいものが触れ、頬から顎を伝い溢れ落ちた。掌を広げ視線を落とすと暗闇の中に赤い、ドス黒い赤がベットリと着いた。
「な、何だ・・・これ」
不敵な笑みを浮かべた朱音は肘を突いて上半身を起こすと、両手に持ったスパナを太田の頭部目掛けて力の限り振り降ろした。
暴風を押し返すように後部座席のドアが開き、やがて動かなくなった《《それ》》を赤い靴が無造作に蹴り落とした。そして泥まみれになった《《それ》》をボールか何かの様にグイグイと蹴り”手取川”の堤防に向かって進む。
大きな塊は泥に塗れ砂利の上をゴロンゴロンと面白い様に転がった。その光景を見下ろす朱音の顔は無表情で、不必要な《《それ》》を軽くひと蹴りすると勢いよく堤防の斜面を転がって途中の木の枝に引っ掛かった。
朱音は自分の掌をぼんやりと眺めた。白いワンピースはどす黒い赤で染まり、裾には泥が跳ねて汚れている。
(・・・・・・汚い)
後ろのチャックを下ろしてワンピースを脱いだ。下着も赤く染まりパンティには白濁したシミが着いていた。太田が吐き出した性液だ。
(・・・・・・汚い)
全て脱ぎ終えた朱音はワンピースを片手に掴むと全裸のまま”川北大橋”のアスファルトの上をペタペタと歩き、やがて橋の中央付近で立ち止まった。まるで鳥が飛び立つかの如く両手を空に向かって広げ、吹き付ける風に任せ《《西村が》》プレゼントしてくれた血に塗れたワンピースを手放した。
それは花びらの様に川面に舞い落ち、ごうごうと渦を巻く泥水に揉まれて消えた。
(綺麗)
素肌に打ち付ける氷のように冷たい雨。吹き付ける風。舞い上がる朱音の桜色の髪。
(寒い)
タクシーに戻り血だらけになった後部座席を見ると、ショップバッグがシワクチャになって座席の足元に落ちていた。引き摺り出して中身を確認する。お気に入りの赤いワンピースは無事だった。
「・・・・・・携帯電話」
赤いワンピースに袖を通すと足元に転がる赤い携帯電話をゆっくりと拾い上げ、ポケットに入れる。そして碧眼の目がエアコンの下部に刺さっているSDカードを一瞥すると手際良く本体から引き抜き、もう片方のポケットに入れた。
朱音の赤い靴は、激しい雨の遥か遠くに見えるオレンジの光、国道8号線沿いのパチンコ屋の駐車場を目指して”手取川”の土手を一歩踏み出した。そしてその背中は暗闇に消えた。
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